水産研究本部

試験研究は今 No.484「計量魚探に現れた原因不明のノイズ」(2002年10月11日)

計量魚探に現れた原因不明のノイズ

  魚群探知機(以下「魚探」)は、釣りの必需品として広く普及していますので、ご存じの方も多いと思います。魚探オプションが用意されているポケットゲーム機があるほどです。

  計量魚群探知機(以下「計量魚探」)はスケトウダラ、ニシンなどの資源量を推定したり、分布や生態などを観察するツールとして一般的になりました。原理は普通の魚探と同じですが、音響データの処理にちょっとした工夫がされています。

  それらの計量魚探の中でも、世界的にスタンダードなシムラッドEK500とデータ解析装置BI500(図1)という1995年当時最新式の計量魚探と解析装置を、北海道立稚内水産試験場では日本で2番目に導入しました。
    •  図1
      図1 魚探データ解析用のワークステーション
  そんなに良いものならとこの計量魚探を使ったスケトウダラ資源調査を1996年から、毎年10月に行なうことになりました。しかし、1997年10月の調査で原因不明のノイズが霧状に現れ(図2)、スケトウダラ資源調査に支障がでました。1996年の調査では全く見られなかったノイズでした。この為、通常は10ノット(時速約18キロメートル)で魚探調査を行いますが、このときは4~6ノットしか出すことが出来ませんでした。
    • 図2
      図2 計量魚探の反応記録に現れた霧状ノイズ(桧山沖1997年10月)
  このノイズの原因をいろいろ調べました。調査船のスクリューの傷、計量魚探の前方に設置されている流向流速計のフタ、送受波器に付着していたフジツボ類、電源関係などです。

  魚探反応記録を詳細に調べていくと、1997年8月の調査時に僅かながら、ノイズが現れていたのが見つかりました。量的に少なかったので、調査の時には気づかなかったのです。また、ノイズの量が、船速と関係があることも分かりました。船速を速くすると、ノイズの量が増えました。ノイズの形状からどうや電源関係ではないことが分かりました。また、スクリューの傷は計量魚探の送受波器からずうっと後方にあるので、例え泡が発生していたとしても、影響は少ないだろうと考えられました。北洋丸の船員の話では、スクリューの傷が付いたのは10月頃と言うことなので、結局これも却下です。

  どうやら、送受波器の表面に付いたフジツボ類がノイズの原因だと分かってきました(図3)。そこで、翌年からは、送受波器の表面に特殊な塗料を塗りフジツボの付着を防いでいます。また、毎年8月にはダイバーを頼んで送受波器の掃除をして貰っています。
    • 図3
      図3 魚探の送受波器に付着したフジツボ類
  ROV という水中ロボットで調べたこともあります。1999年の5月のことです。このときには付着物は全く見られませんでした(図4)。8月のダイバーによる清掃でも、フジツボは全く見られませんでした。ところがその年の12月のドッグ時には塗料の剥がれた黒い部分が見られました。これはフジツボ類が付着して剥がれた痕と考えられています。この年には8月以降にフジツボが付いたことになります。
  この様に、この特殊な塗料の効果が確認されたわけですが、計量魚探メーカーでは、魚探の精度が悪くなるので、塗料の使用を勧めてはいません。
  やはり、定期的な清掃が一番のようです。
  それ以来、このノイズに悩まされることはなく調査出来るようになりました。めでたし、めでたし。

(稚内水試資源管理部 三宅 博哉)
    • 図4
      図4 1999年5月にROVで観察した北洋丸の船底
    •  図5
      図5 1999年12月の送受波器の状態