水産研究本部

試験研究は今 No.489「スケトウダラニュース発行中」(2002年12月27日)

スケトウダラニュース発行中 -道南太平洋海域のスケトウダラ計量魚探調査-

  平成13年度より、函館水産試験場室蘭支場ではスケトウダラの漁況予測資料として「道南太平洋海域スケトウダラニュース」をFAXで9月から翌年2月まで年5回発行しています。平成14年度からはマリンネット北海道のホームページ上でPDFファイルとしても公開しています。このスケトウダラニュースの目玉は金星丸による計量魚群探知機(計量魚探)を使った調査の速報です。今回は、この計量魚探調査をご紹介します。

  調査は9月、10月、11月に恵山岬から襟裳岬までの道南太平洋海域で、函館水産試験場の調査船金星丸を使って実施しています。金星丸には最新式の計量魚探(ノルウェーシムラッド社製のEK-60/BI500システム)が搭載されており、5マイル間隔で設けた調査ラインの上を航行して、魚の分布を観察しながら量をはかっていきます。調査のポイントは、1)どのくらいの深さのところにスケトウダラがいるのか(図1)、2)調査した海域のどこにスケトウダラが多く分布しているのか(図2)、3)海域全体にいるスケトウダラの量はどのくらいか(図3)です。また、調査中に水温の観測も行って、スケトウダラの分布が海の環境とどのような関係になっているか調べています(図1)。
    • 図1
      図1.スケトウダラの分布(計量魚探で見た海の中:平成14年11月)
  計量魚探で見た、海の中の様子に水温の測定結果を重ね合わせた図です。矢印が示している雲状のものがスケトウダラの群です。この時期のスケトウダラは水温2~5℃くらいのところを好むと考えられています。
    • 図2
      図2.スケトウダラの分布(平成14年11月)
  計量魚探で調べたスケトウダラの分布です。赤枠の中が調査範囲を表します。緑色のところが魚のたくさんいるところ、水色、青、紫と順に魚が少なくなります。この図を月や年で比較して分布状況がどうなっているか調べます。
    • 図3
      図3.計量魚探ではかったスケトウダラの量と漁獲量の関係
  調査した海域のスケトウダラの反応の強さ(棒グラフ:9月の調査結果)とその後2カ月間(10~11月)のスケトウダラ漁獲量(折れ線グラフ)を表しています。計量魚探ではかった魚の量は、反応の強さとしてSAという単位で表します。反応が強ければ(魚が多ければ)漁獲量が多く、弱ければ漁獲量も少ないことがわかります。

  調査終了後、図1~3のようにデータをまとめてスケトウダラニュースをつくります。この時期の魚は動きが速く、調査結果を早くまとめないと予報の意味がなくなってしまいますので、現在は調査終了後1週間以内にスケトウダラニュースを発行するようにしています。

  計量魚探を使ったスケトウダラの調査は比較的新しい方法で、調査のやりかたや、データの分析方法などに改良していかなければならない課題も残されています。今後、これらを検討しながら漁況予報を充実させていく予定です。また、「スケトウダラはどのような場所が好きか?(どこに集まるの?)」、「どのような海の道を通ってやってくるのか?」などなど、計量魚探調査から得られるデータをもとに、スケトウダラの謎を解明していきたいと考えています。

  これまで発行されたスケトウダラニュースは下記のマリンネット北海道ホームページからPDFファイルとして見ることができます。ぜひご利用下さい。
(函館水試室蘭支場 志田 修)