フローサイトメトリーによるヒラメ・マツカワの倍数性の判定
自然界には通常2本ある染色体のセット(数)を倍数化し、より良い品種を作り出す、いわゆる倍数性育種は果物や野菜などの植物で広く行なわれています。海産魚では全雌三倍体の作出技術がヒラメで確立され、現在、中央水産試験場では三倍体マツカワ作出技術の開発に取り組んでいます。
さて、このような育種技術の開発にあたって、作出された生物の染色体が計画どおりの数になっているか(倍数性や異数性)を判定することは非常に重要です。その方法として魚では、赤血球径、核小体数および染色体標本による核型分析などが行われていますが、特に染色体標本の場合は時間と労力がかかります。そこで最近、迅速かつ正確に判定できるフローサイトメトリーによる方法が用いられるようになってきました。
さて、このような育種技術の開発にあたって、作出された生物の染色体が計画どおりの数になっているか(倍数性や異数性)を判定することは非常に重要です。その方法として魚では、赤血球径、核小体数および染色体標本による核型分析などが行われていますが、特に染色体標本の場合は時間と労力がかかります。そこで最近、迅速かつ正確に判定できるフローサイトメトリーによる方法が用いられるようになってきました。
フローサイトメトリーによる判定方法
フローサイトメトリーによる方法とは、試料の細胞や核などを蛍光性の色素(DAPI)で染色し、その蛍光の強度をフローサイトメーターで読みとり、相対的なDNA量を測定する方法です。例えば、通常の二倍体の染色体数を2n=12とすると、蛍光強度のピーク値は、半数体(n=6)では二倍体のおよそ1/2、三倍体(3n=18)では、二倍体のおよそ1.5倍、四倍体(4n=24)では二倍体のおよそ2倍と、倍数性に比例して大きくなること、さらに、2n=13と2n=12の違いも精度良く判定可能であることが植物では知られています。
ヒラメやマツカワではどうでしょうか。二倍体マツカワの赤血球と精子、三倍体マツカワの赤血球、二倍体ヒラメの赤血球を実際に調べてみました。最初に、二倍体マツカワの赤血球と精子の蛍光強度の平均値を比べてみると、精子は赤血球のおよそ1/2になっていました(表1)。次に、二倍体マツカワ、三倍体マツカワおよび二倍体ヒラメの測定結果を表2と図1~2に示しました。
蛍光強度の平均値は二倍体マツカワが116.2、三倍体マツカワが168.8で三倍体は二倍体のおよそ1.5倍を示しました。
また、二倍体ヒラメの平均値は99.5で、二倍体マツカワは二倍体ヒラメの1.17倍となり、マツカワの相対的DNA量はヒラメより若干多いことが分かりました。今後、両種の間で、交雑種を作出したとすると、その判定にも本手法は威力を発揮するはずです。
ヒラメやマツカワではどうでしょうか。二倍体マツカワの赤血球と精子、三倍体マツカワの赤血球、二倍体ヒラメの赤血球を実際に調べてみました。最初に、二倍体マツカワの赤血球と精子の蛍光強度の平均値を比べてみると、精子は赤血球のおよそ1/2になっていました(表1)。次に、二倍体マツカワ、三倍体マツカワおよび二倍体ヒラメの測定結果を表2と図1~2に示しました。
表1 二倍体マツカワの赤血球と精子の相対的DNA量 | 表2 二倍体マツカワ、三倍体マツカワおよび二倍体ヒラメの赤血球の相対的DNA量 | ||||||
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赤血球 | 精子 | 二倍体マツカワ | 三倍体マツカワ | 二倍体ヒラメ | |||
1 | 101.73 | 48.21 | 1 | 117.98 | 169.44 | 93.34 | |
2 | 101.22 | 47.35 | 2 | 112.90 | 167.02 | 95.73 | |
3 | - | 48.28 | 3 | 115.92 | 170.06 | 99.58 | |
4 | - | 47.21 | 4 | 120.21 | 169.47 | 104.78 | |
平均値 | 101.47 | 47.76 | 5 | 114.01 | 170.66 | 104.29 | |
6 | - | 166.05 | - | ||||
平均値 | 116.20 | 168.78 | 99.54 |
蛍光強度の平均値は二倍体マツカワが116.2、三倍体マツカワが168.8で三倍体は二倍体のおよそ1.5倍を示しました。
また、二倍体ヒラメの平均値は99.5で、二倍体マツカワは二倍体ヒラメの1.17倍となり、マツカワの相対的DNA量はヒラメより若干多いことが分かりました。今後、両種の間で、交雑種を作出したとすると、その判定にも本手法は威力を発揮するはずです。
フローサイトメトリーによる方法は、測定機器(フローサイトメーター)が非常に高価なことが難点ですが、高感度で再現性に優れているため、今後もヒラメやマツカワなどの養殖・育種技術の開発に貢献できると考えられます。
(中央水産試験場資源増殖部 森 立成)