水産研究本部

試験研究は今 No.491「ボイルホタテ製品のチルド流通について」(2003年1月22日)

ボイルホタテ製品について

  ボイルホタテ製品(写真)は冷凍貝柱(玉冷)、乾ほたて貝柱等と並んで、北海道のホタテガイ加工品の主力製品です(図1)。加熱したホタテガイから中腸腺(ウロ)を除いた加工品で、バーベキューや鍋物等の材料として広く親しまれています。ボイルホタテは、冷凍流通が主ですが未凍結のチルド品が出回っており、その割合は20パーセント程度です(道漁連)。チルド品は未凍結のため、購入後すぐに食材として使える、解凍ドリップが出ない等、利便性や高品質を求める現在の消費者ニーズに合致した加工品と考えられます。
    • 写真1
      ボイルホタテ製品
    • 図1

チルド流通の品質保持期限

  ボイルホタテ製品の品質保持期限は冷凍流通で18か月(道漁連)とされていますが、チルド流通の場合は基準がありません。そこで、チルド流通の品質保持期限を策定するために、ボイルホタテ製品を製造し、0、5、10度で保管し、経時的に一般生菌数の測定と臭気判定を行いました。ボイルホタテの製造は次のように行いました。紋別産ホタテガイを6倍量の沸騰水で7分間ボイルし(貝柱中心温度70度以上)、むき身を流水中で10分間冷却しました。水切りしたむき身から中腸腺を除去し、洗浄を行いました。洗浄は流水で1分間、次に10倍量の4ppm次亜塩素水で1分間行いました。水切り後、発泡トレーを用い7~8個体毎に含気包装しました。なお、用いたザル、バット類は50ppm次亜塩素水で、発泡トレーはエタノールで予め殺菌したものを用いました。

  10度で保管した場合、2日目で一般生菌数は105台、3日目で106台に達しました。また、3日目に初期腐敗臭を感じました。5度では5日目まで3×103以下、6日目で103台、10日目で106台に達しました。初期腐敗臭は10日目に感じました。0度では10日目でも3×103以下で初期腐敗臭は感じられませんでした(表1)

  これらのことから、5度以下で流通すれば製造日より5~6日間の品質保持期限を策定することが可能と考えられます。一方、10度流通では製造日から1日しか策定できないため、実際上、流通は不可能と考えられます。現在、チルド流通品は製造後、その日のうちに氷掛けされ発泡箱でスーパーや量販店に輸送されます。店頭には5度前後で2~3日間並べられており(道漁連)、この実状と実験の結果は概ね一致していると考えられます。
    • 表1

ホタテガイの耐熱性菌

表2
  品質保持期限の延長を図るためには、できるだけ衛生的な製造に努める必要があります。ボイルホタテの製造は冷凍貝柱や生鮮品と異なり加熱工程があります。このため、ボイルホタテにおける細菌汚染の原因は器具や容器等からの二次汚染によるものと考えがちです。しかし、ホタテガイには通常のボイルホタテの加熱条件(95度以上、5~8分間)では死滅しない耐熱性菌がおり、その多くは中腸腺に存在しています(表2)。このため、むき身は中腸腺に存在する耐熱性菌の汚染に常にさらされています。例えば、中腸腺除去(ウロ取り)の段階で、中腸腺の熱凝固が十分でない場合等、中腸腺の内容物がむき身や作業員の手指等に付着し易く、細菌汚染の危険性が高くなると考えられます。このため、加熱不足を避けることはもとより、冷凍貝柱や生鮮貝柱と同様に、ボイルホタテの場合もむき身の十分な洗浄や器具、容器の殺菌を徹底するなど注意が必要です。

(網走水産試験場 紋別支場 成田 正直)