水中自動写真撮影装置を使ったウニ類資源量調査について
はじめに
函館市から恵山町にかけての地域では、水深20メートル以深に砂礫域が広がり、桁曳きによるキタムラサキウニの深浅移殖が行われています。資源を効率良く、安定的に利用するためには、資源全体の量や分布範囲、成長や年齢構成などを明らかにしておく必要があります。函館水試では、昨年秋に戸井町沖合の潜水調査が困難な深所の砂礫底海域において、水中自動写真撮影装置を用いたキタムラサキウニの資源調査を行いました。今回はその概要をお知らせします。
水中自動写真撮影装置
戸井町釜谷沖、東経140°55′から140°56′の水深25メートルから最大70メートルまでの範囲において、(株)海洋探査(小樽市)製の水中自動写真撮影装置(図1)を用い、海底面上のウニの写真撮影を行いました。この装置は、道東沿岸のホタテガイの資源量調査に用いられているもので、底部に1×1メートルの方形枠、その枠から約1メートル直上の位置に防水ケースに収めたスチールカメラが配置されています。これを船上から吊り降ろしますが、海底に着地すると同時にストロボが発光し、シャッターが開く仕組みとなっています。2002年秋、戸井町釜谷沖の水深25〜70メートルの範囲、約200地点で写真撮影を行いました。得られた写真には1×1メートルの方形枠が写っており、枠内のキタムラサキウニを計数することで各地点の密度を知ることができます(図2)。また、写真からウニの殻径を推定することも可能です。
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図1 水中自動写真撮影装置
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図2 写真撮影装置で得られた海底の画像
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キタムラサキウニの分布
写真撮影装置による海底画像から計数したキタムラサキウニの分布を図3に示しました。この図では、近傍5地点の平均密度を示してあります。コンブ養殖施設の周辺にはほとんどみられず、その沖合南東方向に比較的密度が高い場所があることがわかります。図4には水深別の平均密度を示しましたが、水深25メートルと30メートル地点ではキタムラサキウニはみられず、35メートルから徐々に密度は高まり、水深50メートルで1.4個体/平方メートルと最も高くなりました。その後密度は低下しますが、水深70メートルでも0.4個体/平方メートルみられており、当海域のキタムラサキウニの分布下限はさらに深所と考えられます。なお、戸井町漁協により、水深30〜35メートルの範囲から移殖用種苗として毎年採取されており、この水深帯の密度が低いことと関係があると考えられます。
キタムラサキウニの殻径組成
写真撮影による調査で得られたキタムラサキウニの水深別の殻径組成を図5に示しました。水深40~60メートルまでの地点では、殻径の小さい側にやや大きな峰がみられます。これは、平行して水深25メートル以浅で行っている潜水採取による調査データから2000年発生の満2齢の可能性が高いと考えられます。この峰は水深60メートルまでは水深が増すにつれて小型化しており、水深が増すにつれ餌料供給が小さくなることを反映しているものと考えられます。 今年度は、桁網などを用いこれら深所のウニを採取し、種類や年齢、身入り状況などを実際に調べる調査も計画しています。
キタムラサキウニの資源量
キタムラサキウニの分布が極めて少ない水深25~35メートルの水深帯を除き、水深40メートル以深の158地点の密度データから、密度面積法により資源量を算出した結果、資源量は約122万個体±37万個体となりました。このうち、桁網による採取が可能な水深50メートル以浅で、かつ移殖により短期間で利用できる殻径50ミリメートル以上の資源量は17万個体と算出されました。これは調査区内での個数ですので、同漁協全体のキタムラサキウニ資源量は、この3~4倍はあると推定できますが、毎年移殖用として30万個体以上採取されていることを考えると、深所のウニ資源はかなり高度に利用されていることになります。今年度も継続して調査を行い、資源状況や分布の変化などを明らかにする計画です。
(前函館水産試験場 資源増殖部、現中央水産試験場資源増殖部 高橋和寛)