水産研究本部

試験研究は今 No.499「標識放流調査からみた網走支庁管内のミズダコの成長」(2003年5月23日)

標識放流調査からみた網走支庁管内のミズダコの成長

  魚類の多くでは耳石の輪紋数などから年齢を判読し、年齢別の体長を知ることで成長を推定しています。しかし、ミズダコでは年齢を知る方法が現在のところありません。ただ飼育実験および津軽海峡や日本海での標識放流調査から、ふ化直後の体重0.05グラムが1年で40g、2~3年で2キログラム前後、3年で約14キログラム、4年で約30キログラムになると推定されています。

  オホーツク海の網走支庁管内でも1988年以降、標識放流調査が「網走支庁管内たこ漁業連絡協議会」の協力を得ながら断続的に行われてきており、2002年までに約1,700個体が標識放流されました。そのうち130個体の再捕が報告されています。今回、これらの結果から、オホーツク海域のミズダコの成長について整理してみました。

  まず、放流から30日以上経過して再捕されたミズダコの成長を図1に示しました。図1の横軸は放流と再捕の月日、縦軸はそれぞれの時点での体重です。また、放流した年に再捕されたものは青で、翌年に再捕されたものはピンクで、翌々年に再捕されたものは緑で色分けしました。
    • 図1
      図1 網走管内におけるミズダコの成長(30日以上経過個体)
  最初に図1の翌年再捕された個体(ピンク)をみると、7~8月に2キログラム前後で放流したものが翌年7月に10kg以上で再捕されています。これは先に述べた日本海と同程度の成長です。

  次に、放流した年内における再捕(青色)をみると、7月~11月において傾きの大きな線が目立ちます。そこで年内再捕に限って、再捕月日と成長率* の関係を図2に示しました。図2からは秋に再捕された個体の成長が良いことが読みとれます。放流から再捕までの日数は30~147日ですから、実際には夏~秋における成長が良かったものと思われます。
    • 図2
      図2 年内再捕個体の再捕月日と成長率の関係(30日以上経過個体)
  最後に、放流から再捕までの経過日数と成長率の関係を図3に示しました。全体的にみると、経過日数が長いほど成長率が低い結果となっています。しかし、色分けしたように年内、翌年、翌々年と越年回数別にみると、年内再捕、翌年再捕の中では経過日数の増加にともなって成長率が下がる傾向はみられません。従って、単純に経過日数の増加に伴って成長率が低下するのではなく、越冬時に成長が悪くなるために翌年再捕、翌々年再捕個体の成長率が低下したものと考えられます。
    • 図3
      図3 放流から再捕までの経過日数と成長率の関係(30日以上経過個体)
 以上のように標識放流調査結果から、オホーツク海におけるミズダコの成長は、日本海などとほぼ同程度であること、そして季節的には夏~秋に良く、冬に悪いことが推察されました。

* 成長率は、一日当たり体重が何%増加したかで表しました。
式

X:放流時の体重、Y: 再捕時の体重、A:成長率、d:経過日数