水産研究本部

試験研究は今 No.546「とうだいつぶの資源管理を目指して」(2005年5月19日)

とうだいつぶの資源管理を目指して

はじめに

  とうだいつぶはオオカラフトバイ(=ヒモマキバイ:写真1)やその近縁種の俗称です。とうだいつぶは北海道では日高、十勝、釧路支庁管内で多く漁獲されています。この3支庁におけるつぶ類の漁獲量を図1に示しました。このつぶ類の大半がとうだいつぶですので、とうだいつぶの漁獲量の傾向は図1と同様と考えられます。3支庁の漁獲量は平成3~6年以降、減少傾向にあります。

  とうだいつぶ漁獲量の減少原因は定かではありません。しかし、資源量を把握し、資源診断を行い、資源の利用方法などを検討していく必要があると考えます。資源量を把握するためには、資源特性値が必要となりますが、これまでこれらはほとんど明らかにされていません。

  釧路水産試験場では資源量を推定する方法を開発するため、平成16~18年の3ヵ年計画で『とうだいつぶの資源量推定技術開発試験』という事業を開始しました。今回はこの事業の概要と結果を紹介します。

事業の概要

  資源量を推定する方法はいくつかありますが、その1つとして年齢別の漁獲量から資源量を推定する方法があります。この年齢別の漁獲量という情報を得るためには、とうだいつぶの年齢を調べ、年齢と殻長の関係を把握しておく必要があります。

  個体の年齢を知ることを年齢査定といいます。この年齢査定の際に年齢形質として体の部位を利用します。魚類では鱗や耳石が年齢形質としてよく利用されています。しかし、襟裳以東海域において、とうだいつぶとして主に漁獲されているオオカラフトバイについてはこれまで利用できる年齢形質は知られていませんでした。
    • 図1
      図1 日高、十勝、釧路支庁管内のツブ類の漁獲量(北海道水産現勢より)
  最近になって、襟裳以西海域でとうだいつぶとして主に漁獲されており、オオカラフトバイとごく近縁種のシライトマキバイについてその蓋が年齢形質として利用できることが報告されました。このため、オオカラフトバイの蓋も年齢形質として利用できるのではないかと考えました。

  このようなことから『とうだいつぶの資源量推定技術開発試験』では、オオカラフトバイの蓋による年齢査定法を確立し、それを基に年齢別の漁獲量を算出し、資源量を推定しようと考えています。

調査結果

  オオカラフトバイの蓋の裏側(筋肉と付着している側)には木の年輪のような輪紋が確認されました(写真2)。この蓋にある輪紋が年齢形質として利用できるのか検証するにあたっては、まずこの輪紋が1年に何本、いつ、形成されるのかを調べる必要があります。そこで、平成16年4月から平成17年3月まで月1回、約50個体の蓋の輪紋を観察しました。

  この結果、蓋の輪紋は1年に1本形成される可能性の高いことが示唆されましたが、形成時期については明確な結果は得られませんでした。

  このようなことから、17年度はより詳細な検討を行い、蓋の年齢形質としての有効性について判定していきたいと考えています。(釧路水産試験場 資源増殖部 秦 安史)
    • 写真1 オオカラフトバイ
    • 写真2 オオカラフトバイの蓋(裏側)

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