法人本部

第22回 温水暖房&木質ペレット

「寒さを吹き飛ばせ! 暖かい暮らしの科学」
温水を利用した暖房システム&木から生まれたエネルギー ~未来を担う木質ペレット〜

2011年11月30日(水)
産業技術研究本部 工業試験場 白土 博康(しらと ひろやす)
森林研究本部 林産試験場 小林 裕昇(こばやし ひろのぶ)

こんなお話をしました

 (白土より)
「温水を利用した暖房システム」

まず、近年の住宅の暖房エネルギー事情についてお話しします。各GDPあたり最終エネルギー需要(部門別)は業務用、運輸用エネルギーはほぼ横ばい、産業用エネルギーは減少傾向にあるのに対し、家庭用エネルギーの需要は2.5倍に増加して推移しています。特に札幌においては、戸建て住宅、集合住宅のエネルギー消費量の用途別割合の中で暖房にかかるエネルギーがそれぞれ65.1、40.4%と本州などの他の地域と比較して高くなっています。

温水暖房システムとは灯油ボイラーやヒートポンプなどの熱源器により暖めた水をパネル状の放熱体(以下、パネル)に循環し、空気の自然対流と放射(パネル又はパネルで加温された壁と人体を電磁波によって熱が伝わる現象)により暖房を行うシステムです。利点としては、パネルを窓下に置き、窓面で上昇気流を発生させることにより、窓下のコールドドラフト(窓等で冷却された室内空気が起こす下降気流、床面を這い足下に不快感を与える)を防止できることです(写真と熱画像)。次に、このシステムでは一般に風を強制的に吹かせないため、エアコンと比較して気流感や温度の変動を感じさせないメリットがあります。また、室内の空気温度が低くても放射により暖かい体感が得られます。空気温度が低ければ、熱源器の灯油量や電気量が少なくなるため、低コストでエネルギー消費量の削減にも繋がります。

次に、道総研での研究によるパネルの商品化事例について紹介いたします。

1つめは、ゴムチップ床暖房パネルです。空隙層を持つゴムチップを利用したパネルでクッション性、遮音効果に優れ、温水の熱による製品の伸び、そりが少なく、材料のゴムと木チップは廃材を利用したリサイクル製品です。

2つめは、床下暖房パネルです。窓下にガラリ付きの床下放熱器を施工し、床下からの自然対流と放射によりドラフトを防止します。2つめは、床下暖房パネルです。窓下にガラリ付きの床下放熱器を施工し、床下からの自然対流と放射によりドラフトを防止します。 

3つめは、天井放射パネルで、放射と吹きだし空気により冷暖房を行います。

4つめは、プラスチックの柵状パネル(ラジエータ)です(写真)。オールプラスチック製で、コストが安く、腐食しないメリットがあります。プラスチックは熱伝導率が低いですが、材料の厚みが薄いため、その伝熱抵抗は鋼製の1.1倍程度であり、鋼板パネルに匹敵する冷暖房能力があります。

現在道総研では、地中熱ヒートポンプと上記プラスチック製ラジエータを利用し、冷房にも利用可能な高断熱住宅用放射冷暖房システムについて、省エネルギー性を考慮した最適な運転方法の検証を行っています。今後も、これまでの研究を継続し、省エネルギー性や快適性に優れた冷暖房システムの開発を行う所存です。


 (小林より)
「木から生まれたエネルギー ~未来を担う木質ペレット〜」

日本は森林資源が豊富であり昔から薪や木炭を主要なエネルギー源として利用してきたことから、木質ペレット((以下ペレットとする)を使う環境が元々あったと言えます。林産試験場では、ペレットの利用推進を図るため、ペレットの製造方法の改善や品質向上、ペレットストーブの開発および、それに伴う技術開発を進めてきました。

国産のペレットストーブが誕生したのは、国内でペレット製造が始まるのと同時期になります。その第一号は、徳島県のコロナ工業(株)が1982年8月より販売を開始した、木質系ストーブ「ひまわり」です。その後、中東からの原油供給が安定するに伴いペレット利用も下火になりましたが、2003年に「岩手型ペレットストーブ」が、2005年には「信州型ペレットストーブ」が相次いで発売され、原油価格の高騰および地球環境悪化の懸念から、循環型エネルギーであるペレットに再び注目が集まりました。

北海道では、冬季暖房用エネルギーを化石燃料に依存しているため、家庭から排出されるCO2量が全国平均を上回っています。そこで家庭からのCO2排出量削減が重要であると考え、暖房用エネルギーをカーボンニュートラルなエネルギーであるペレットへ転換することを目的として、2005年10月より「北海道型ペレットストーブ」をサンポット(株)と共同で開発しました。「北海道型」は、既存の製品にみられる課題の改善、新しい機能の提案を念頭に設計を進め、2007年12月に販売が開始されました。

また、2008年からは、(株)イワクラと共同で、外部に設置する木造ペレットサイロから室内のストーブへ自動でペレットを供給するシステムの開発を行いました。

外部に設置するペレットサイロは、飼料用サイロなどの流用や鋼製やFRP製の小型サイロの試作がペレット製造企業で行われてきました。これらの材質のものは、製造に金型が必要な場合や塗装を行う機械により最大の外形寸法が決まってしまうなど、形状のバリエーションに制約を受けることもありました。木造サイロは敷地や住宅の形状に合わせて製作することが可能であり、住宅と同じ外装仕上げとすることもできます。これらは鋼製やFRP製のサイロと比べ、木造ゆえの大きなアドバンテージであると考えられます。

道内のペレット製造工場は17ヵ所と増え、2009年度の生産量は約3,900tに達しています。また、「北海道型ペレットストーブ」は、2007年12月から2009年までの3年間で、1,250台の販売実績となりました。今後もペレットストーブに関連する新しい技術開発を進め、利用者の皆様にもっと便利に使っていただくために改良し、ペレットの需要が増えていくように取り組んでいきたいと思います。

質問にお答えします 

質問

回答

会場からの質問

いわて型等、各形式のペレットストーブの違いは何ですか?

燃料である木質ペレット(以下ペレットと言う)は固形物であることから、火力の強弱や安定には時間が掛かります。そこで室温を一定に保つため、ペレット供給量や送風量を制御する燃焼プログラムおよび、ペレットを燃焼させる受け皿(ロストル)の形状など、暖房機器として重要なところは各メーカー独自の仕様となっています。
またペレットストーブは、燃料であるペレットを貯蔵するタンクを内蔵しているところが、特徴の一つです。ペレットを燃焼部へ送る機構として、スクリ ューフィーダを用いるのが一般的ですが、電気を使わずゼンマイの力でスクリューフィーダを回す製品や、全く電気を使わず重力の自然落下によるペレット供給を採用した製品もあります。
このようにペレットストーブは外観のデザインだけではなく、要求される暖房性能や使い勝手が良くなるよう、各メーカーが様々な工夫を凝らしています。

温水を使用する暖房とペレットを使用する暖房とは、将来的にどちらがのびますか?

ペレットストーブは、まだ本体の販売価格が高いこと、石油価格の高騰が一段落したこともあり、一時期のような伸びは見られません。
1982年のオイルショックでは、価格の安いペレットが注目され「第一次ペレットブーム」が起きました。しかし、このブームもオイルショックが治まるに伴い石油価格が下落し、ペレットに価格的なメリットが無くなった時点で終わってしまいました。現在のペレットストーブを取り巻く状況は、「第一次ペレットブームの時と非常に酷似しています。
ただ、今回ペレットストーブが注目された理由は単純に燃料であるペレットが灯油より安いということではなく、将来に向けた代替エネルギーの有力な候補の一つとして木質バイオマスに期待が寄せられたものと考えます。新たな技術開発や社会的インフラの整備、家庭向けペレットボイラーの商品化など、一般家庭における使い勝手の向上を図ることで、木質バイオマスやペレットストーブの更なる普及を進めていきたいと考えます。

ペレットストーブは壁からの離れが少ないと言ってましたが、一方の温水暖房はどのくらいの離れが必要ですか?

また、冷房の場合、裏面の結露はどうですか?

 一般に50~100mm程度です。冷房時には裏面が周囲空気の露点よりも冷えると結露いたします。どの程度の距離が必要なのかは条件によっても異なりますし、今後の課題です。いずれにしても裏面の空気によどみができないように工夫を施すことが必要となります。

さらに詳しく知りたい方は・・・

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