法人本部

第11回 北海道の清酒・ワイン

進化する北海道の清酒・ワイン-道産酒の新時代を知ろう!

2011年3月23日(水)
産業技術研究本部 食品加工研究センター 富永 一哉(とみなが かずや)

こんなお話をしました

   経済の高度成長期からバブルの時期にかけて極大を迎えた国内の清酒消費量は、以後一貫して減少を示しています。

1872年に始まった北海道産の清酒づくりは、現在、蔵元13カ所で行われています。

道内清酒の消費量も年々減少していますが、近年の優良な酒造用道産米「吟風」「初雫」「彗星」などの誕生や、特定名称酒製造の割合を増やす取組などを通じて、多くのファンを魅了しています。

ここ数年、全国新酒鑑評会などの様々な鑑評会や品評会において評価される道産清酒が増え、北海道酒造組合等が提唱する「酒チェン」運動の効果などもあり、道内消費量におけるシェアは復調の兆しがみられます。品質向上の取組はもとより、商品情報の発信力の強化を通じ消費の拡大が期待されています。

1865年に道内初のワイン試験製造が行われて以来、多くのワイナリーが誕生しました。
道内の原料ぶどうの収穫量は、全国でトップクラスとなり、特にワイン醸造用専用品種の種類の多様性と優れた品質から、道外の生産者・消費者からも注目されています。道産ワイン自体も、国産ワインコンクールのような国内外の品評会等で高い評価を受けています。

北海道でのワイン生産の可能性に魅かれ、新たな生産者が道外から参入する例も増えているほか、従来からブドウ生産を行っていた農業者が、自らワイン生産を目指す動きも広がっています。さらに、近年、ワインの消費拡大につながる、ワインツーリズムなどの活動が盛んに行われ、観光・体験型の情報提供を通じた幅広い事業展開が進められています。

当センターでは、製造技術などに関する研究や技術支援を通じて、製造技術の向上や生産現場における省力化などに貢献する取組を行っています。特に、清酒用の乾燥酵母の事業化や、ワインの後熟発酵に用いる低温発酵性乳酸菌の開発などについては、業界の皆様から好評をいただいています。

これからも、市場動向に関する情報提供も含めた幅広い支援を続けていきたいと考えています。

質問にお答えします

 

質問

回答

会場からの質問

酒造米の品種も当然ですが、使用する水の質や特性でも製品の差に大きく影響するのですか?

水の特性は当然酒質に影響します。硬水である灘の宮水からは切れの良い辛口お酒が、軟水で有る伏見の水からは甘口の柔らかいお酒ができるとされます。ただ、北海道のお酒の産地の水は概して軟水が多く、また硬度が高い水質の蔵では活性炭などで水処理を行って硬度を下げています。したがって、北海道のお酒は甘口お酒になる可能性がありますが、仕込み時の極度な低温などの影響もあり、必ずしもそうならないこともあります。この様に、酒質に影響を与える要素は多岐になりますので、その蔵独特の酒質が生み出されることになる訳です。

日本酒、ワインの生産とともに、道内温暖化の影響を受けつつありますか?

温暖化が原料の米やブドウの生産にどの様な影響を示しているかという意味では、ここ数年の初夏の気候は本州のように梅雨があると考えた方が良くなってきています。この時期は、ブドウの生育には非常に重要な時期で、花芽が出て開花する時期と重なります。この時期の多雨或いは霧の発生は、花芽に対して決定的なダメージを与えることになります。そのため、一部のワイナリーでは収穫量が半分以下に落ちたこともありました。この気象の傾向が今後どの様に推移するかで、栽培の方法に関しての大きな転換が必要になるかも知れません。なお、幸運なことに、水稲の出穂期は辛うじて降雨期と重ならないため、米の収穫には大きな影響が出ていませんが、やはり今後の動向を注目していく必要があります。

道内で焼酎は生産していますか?

はい、たくさん造られています。大きなメーカーでは、旭川の合同酒精、札幌の札幌酒精工業が挙げられますが、この他にも専業のメーカーもありますし、清酒製造と共に焼酎を製造しているメーカーもあります。

さらに詳しく知りたい方は・・・

  動画道総研公式チャンネル

  当日の資料進化する北海道の清酒・ワイン.pdf

  案内チラシ

  

 

ご協力いただきました

ドトールコーヒーショップ北海道庁店
日本清酒(株)
(有)山﨑ワイナリー