法人本部

第16回 GISで「備える」

シリーズ 新しい地図が魅せる! 空からみた北海道の姿
「備える」

2011年6月30日(木)
環境・地質本部 地質研究所  大津 直(おおつ すなお)
建築研究本部 北方建築総合研究所  戸松 誠(とまつ まこと)

こんなお話をしました

(大津より)
    2011年3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震は、未曾有の津波災害を引き起こし、私たちにマグニチュードMw9.0の威力をまざまざと見せつけました。この地震は、海溝で発生する巨大地震でしたが、もう一つ忘れてはいけない地震があります。都市直下で発生する内陸地震です。今回は、この内陸地震に絞って話をしました。

今年の2月に、ニュージーランドのクライストチャーチをおそった地震を覚えているでしょうか? 日本からの留学生もこの震災に巻き込まれたこと、多くの死者・行方不明者がでたことが注目されました。しかし、この地震の規模はMw6.1であり、死者180名を出すほどとは普通は想像もしない大きさでした。事実、前年の10月にも近くで地震が発生しておりますが、2月よりも遙かに大きい注1地震(Mw7)でありながら死者数はゼロでした。このように内陸地震による災害を考える際、地震の規模だけではなく、1)震源からの距離、2)軟弱地盤による揺れの増幅や液状化・地震性地すべりなどの地盤の問題、そして3)構造物の強度の問題、が複合した結果、現れるものであることに留意する必要があります。

地震の発生は、断層運動によるものと考えられており、繰り返し活動してきた痕跡が地形に残されている場合があります。それが、活断層です。地質研究所では、1995年以来、道内に分布する活断層の調査を行ってきました。活断層の長さや変位量から、地震の規模が推定できますし、活動時期や繰り返し間隔から、地震の発生確率が計算されます。すなわち、将来どの程度切迫しているのかがわかるようになってきているのです。

北海道は、活断層の研究成果や進展めざましい海溝型地震の研究成果を背景に、従来6震源のみであった地震の想定の見直しに着手しました。この検討を進めるために、同じ道総研の北方建築総合研究所と共同で研究を進めており、今後も継続して取り組んでいきます。

現在、地質研究所では、防災・環境分野への利活用を促進するため、地質図や活断層図などの各種図面を電子化しています。これらのデータの基盤整備に必要なのがGIS技術です。当所では、GISによるデータ整備や情報発信の様々な取り組みを行っております。最近では、地下の情報を高度化するため、地盤ボーリングデータベースの整備に着手しております。ボーリングの情報を多数集めることで、地下の地質がどのように分布しているのかを推定することができます。これは、防災や環境対策を考える上での基盤的な情報となることが期待されています。地質研究所では、このように地質の情報の計画的な整備を行い、積極的な公開に努めてまいります。

注1)地震が発するエネルギーで比較すると、マグニチュードが0.2増えると2倍、1増えると約32倍、2増えると1000倍になる。


(戸松より)
■津波災害に備える
今までは、津波が発生した際に自分の住んでいる地域が安全なのか、安全な地域まで避難するにはどのくらいかかるのかがわかりませんでした。GISを使うと、最短の避難時間・避難経路が検索できるようになります。この結果、津波が発生した際にどの程度の時間で避難できるかがわかるようになりました。この研究成果により佐呂間町の津波避難に関わる危険度マップを作成しました。

■火山災害に備える
火山噴火の現象と建物被害の関係を明らかにすることにも、GISは使えます。点のデータを面的な広がりを持つ地図に作り替えることができるので、この結果から自分の家が地盤変動でどのくらい動くのかわかるようになりました。この研究成果により、噴石・地盤変動が建物へ与える影響を明らかにすることができました。

■都市火災に備える
GISを使って、都市がどの程度火災に強いのかを明らかにしました。建物から火災の影響がある範囲を簡単に計算できるので、自分の家や地域の火災の危険性がわかるようになりました。この研究成果により、旭川市の防火地域・準防火地域の指定基準を作成することができました。

■犯罪事故に備える
今までは、危ない思いをした場所を記入するだけで、どのくらい危険なのかわかりませんでした。GISを使うと、地域の危険性をわかりやすく地図に表すことができ、どこがどのくらい危険なのかがわかるようになります。この結果から、犯罪で危ない場所に対して重点的に対策を行うことができるようになりました。この研究成果を使って、旭川市近文小学校の地域の安全安心活動に地域と協働で取り組みました。

質問にお答えします

 

質問

回答

会場からの質問

住宅を取得していますが、その土地について液状化の可能性の有無を調べる方法を教示ください(地盤の確認方法)

液状化の可能性を判定する方法には、1)地形・地質や液状化履歴に基づく方法、2)土質調査や土質試験に基づく方法、地震応答解析と液状化強度比から判定する方法などがありますが、一般の方にとっては自治体が作成する液状化危険度図(ハザードマップ)を閲覧するのが最も簡便な方法でしょう。札幌市であればWebサイトに公表されています。ただし、あくまで地域の目安として利用するのには十分な情報ですが、個宅の液状化判定に利用するには適切ではない場合もあります。

 札幌・道央圏での地震対策を具体的に教えてください。想定される地震なども

 札幌市周辺の想定地震と想定される震度については、札幌市のwebサイトをご覧ください。

ハザードマップなど、例えば研究データでわかったこと、具体的にすぐできるものをどうやって地域住民等に周知していくのでしょうか?
市町村と協力するにしても、住民にダイレクトに伝え、理解してもらうとなると、例えば、何らかのNPOなり、団体なりと協力する必要があるのではないでしょうか? すごくもったいないイメージがあります。実際にすぐ使える、活用できるものはどんどん地域に落として活用してみてはどうでしょうか?

現在、研究所では道や市町村に対する研究成果の普及と並行して地域住民と協働で防災体験学習や講演会等の取り組みを行っており、そのような機会を通して、地域に対する成果の普及などを行ってきているところです。 今後もさらに様々な機会を通じて成果の普及を図っていきたいと思っております。

さらに詳しく知りたい方は・・・

  動画道総研公式チャンネル

  案内チラシ

 

ご協力いただきました

ドトールコーヒーショップ北海道庁店

AIR DO(北海道国際航空株式会社)