法人本部

第21回 快適な暖房環境

「寒さを吹き飛ばせ! 暖かい暮らしの科学」
快適な暖房環境をつくるために

2011年11月29日(火)
建築研究本部 北方建築総合研究所 月館 司(つきだて つかさ)

こんなお話をしました

 

暑さ、寒さなどの温熱感覚は、人体と周囲との間の熱のやり取りや皮膚温度などによって生みだされます。人体から周囲へたくさん放熱すると皮膚温度が下がって寒く感じ、逆に放熱量が少ない、あるいは、熱をもらうと皮膚温度が上がって暑く感じます。

人体からの放熱のしくみには、対流、放射、蒸発、伝導があります。これらは、気温、周囲の物体の表面温度、湿度、風速、床や椅子などの熱の伝わりやすさなどの影響をうけます。気温が低いと対流により人体からまわりの空気にたくさん放熱します。同じ気温でも、温度の低い大きな窓などがあると、放射によってより人体から多くの熱が奪われます。また、扇風機などで風を起こすと、対流や汗の蒸発による放熱が促進されます。

一方、床暖房をしている床に座ると、床から人体に伝導や放射により熱が伝わり、ストーブのそばに居ると、放射で熱が伝わってきます。暖房器は空気を暖めるだけではなく、直接人体を暖めることもあります。

さらに、人体側でも発汗、血流量の調整、震えによる産熱など体温調節機構が働き、人体内部の熱の発生量や放熱量の調整が行われています。

このように、暑さ寒さは単に気温だけで決まるのではなく、人体の発熱と周囲への放熱のバランスによって決まってくるものです。

また、平均的にみるとちょうどよい暖かさの環境であっても、部分的に暑いところや寒いところがあると快適と感じることができません。その主原因となるのが、上下温度差、温度の低い気流や極端に温度の異なる壁の存在、温度の低い床です。これらは、建物の断熱・気密性能、暖房の方法などに依存します。

さて、快適な暖房環境を作るためには、「温度むら」をなくすことが重要です。ここで言う「温度むら」とは、廊下やトイレが寒い、天井付近は暑いが足元が寒い、空気温度は高いのになんとなく寒いなど、意図しない、あるいは、制御できない建物内の温度差のことを指しています。「温度むら」は、建物の断熱・気密性能が悪く、暖房計画が不適切であるために生じ、快適性を著しく損なうことになります。

隣室や廊下の寒さも暖房環境に影響します。扉を開けると足もとに冷気が侵入するほか、外壁や窓だけではなく温度の低い間仕切り壁でも冷気流が発生するので、室内に大きな上下温度差が生じることになります。また、壁面温度が低いと平均放射温度が低くなるので、そのぶん空気温度を高くしないと暖かく感じません。さらに、寒い部屋があると、その部屋で結露が発生してしまいます。

家全体を暖房すると、必要な暖房エネルギーは増加しますが、断熱性能が高くなればなるほど、エネルギーの増加は少なくて済みます。高断熱・高気密化したうえで家全体を適度に暖めることが、快適な暖房環境をつくるポイントです。高断熱・高気密住宅で、はじめて快適性と省エネルギーの両立した暖房が可能になります。

質問にお答えします

質問

回答

会場からの質問

暖房で最もコストパフォーマンスの高いものは何ですか?
エアコンは良いみたいだけど、熱伝導的にはどうなのでしょうか?(あまり暖かくないイメージ)

燃料費で比較すると、現在の燃料価格では、ヒートポンプ(エアコン)が安く、蓄熱暖房・ほっとタイムを利用した電気暖房・セントラルヒーティング契約した都市ガス暖房が同程度、灯油がそれよりも高めと思います。

CO2排出量や省エネルギーを考えると、蓄熱暖房機と電気パネルヒータ、電気ボイラは不適当です。快適性の面からは、エアコンは住宅の断熱性能が相当高い(Q値1W/㎡K程度)ときに使用したほうがよいでしょう。

さらに詳しく知りたい方は・・・

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