法人本部

第30回 きのこ

森林からのおくりもの~きのこ~

2012年10月22日

森林研究本部 林産試験場 宜寿次 盛生(ぎすし せいき)

こんなお話をしました

    森の中に入るとさまざまなキノコに出会うことが出来ます。木材を分解したり樹木と共生したり、枯れ木や木の下の土から出てきたりと、まさにキノコは「木の子」です。

ところでキノコとは何なのでしょうか?現在、生物界の分類法で五界説(※)のひとつ「菌界」に属する生物の総称を菌類と呼びます。これらの菌類のうち、胞子を散布するための器官である子実体(しじつたい)を形成する生物をキノコと呼んだり、あるいは子実体そのものをキノコと呼んだりします。子実体の下の木材や土壌にはキノコの本体とも言える大量の菌糸が隠れています。

古来、私たち人類は「キノコ狩り」を行ってきましたが、キノコの種類数は1万種以上と言われており、キノコの識別(同定)は容易ではありません。また、野生キノコは発生時期や豊凶が天候に左右されるため、「栽培しよう!」と考えたのも自然の流れだったのでしょう。

キノコの栽培は、日本ではシイタケなどの自然栽培が、ヨーロッパではマッシュルームの栽培が、ともに17世紀頃始まったようです。皮付きの丸太に種駒を打ち込んで栽培する原木栽培、おが粉に栄養を混ぜビンや袋で栽培する菌床(きんしょう)栽培、わらを発酵させた堆肥栽培があります。シイタケは原木栽培から始まったのですが、現在流通しているキノコはほとんどが菌床栽培でつくられています。栽培技術や優秀な品種が開発されて、ブナシメジやマイタケ、エリンギなどは1970年代以降ようやく栽培できるようになりました。道総研林産試験場では、森林資源を有効に活用するため、北海道に豊富にあるカラマツおが粉に適したブナシメジやマイタケの品種開発を行いました。このような新しいキノコの開発は、森林からのおくりものであるキノコという遺伝資源を収集することで支えられています。

根を通じて樹木と共生している菌根菌(きんこんきん)は、その生態から栽培が難しいキノコです。菌根菌であるホンシメジは施設栽培が出来るようになりましたが、同じく菌根菌であるマツタケの施設栽培はまだ出来ません。あらためて森を訪ね、森林を活用した栽培方法の研究を進めているところです。

※生物の分類体系のひとつで、生物全体を菌界、植物界、動物界、モネラ界、原生生物界の五つの界に分けるもの

質問にお答えします

質問

回答

会場からの質問

これから食用として開発を考えているキノコは何ですか。

未だ市場に出ていなくて、美味しいキノコ、また体に良い機能性を持ったキノコをターゲットにして、その栽培技術と品種の開発を目指しています。

食用にするための試験開始から市場に出回る(安定するのは)まで、通常どのくらい時間がかかりますか。

(1)栽培技術が確立しているキノコで、かつ、育種材料(既存の品種)を保有している場合、順調に進めば4~6年くらいです。(2)栽培技術が確立されていても育種材料を保有していない場合は、6~10年くらいは必要です。(3)栽培技術が確立されていないキノコの場合は、予想は難しいです。

他のキノコの上に生えるキノコがあるそうですが、そのキノコは食べられると聞きました。本当ですか。

「ヤグラタケ」というキノコのことでしょう。きのこ図鑑を数冊探しましたが「食毒」に関する記載はありませんでした。

樹木にキノコが生えるとその樹木の成長に何らかの影響を与えるのでしょうか。

(1)生きている樹木の根(細根)と「菌根(きんこん)」と呼ばれる共生体を形成するキノコを「菌根菌(きんこんきん)」と呼びます。菌根菌を人為的に苗木の根に接種してその生長が良くなったという報告があります。菌根菌のキノコは通常地面から発生します。(2)タモギタケやエノキタケ、サルノコシカケと呼ばれる硬いキノコの仲間など「木材腐朽菌」は、生きている樹木に発生することがあります。キノコが発生している部分は既に枯死しており樹皮の下には菌糸が蔓延しています。また、ナラタケは生きている樹木に感染し枯らすことがあり、林業では「害菌」とされています。

こどもがキノコを知るために有効な書物を教えてください。

「きのこ博士入門(根田仁/著、伊沢正名/写真)」全国農村教育協会・・・少し難しいかもしれませんが、写真が豊富で眺めているだけでも楽しい本です。また、道総研・林産試験場HPの「キッズ☆りんさんし」にも「きのこ」のページがあります。ぜひ御覧ください。

 
 

さらに詳しく知りたい方は・・・

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