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ゆめぴりか

第1話  北海道の美味しいお米「ゆめぴりか」の誕生 ~  道総研農業試験場のお米の品種改良

道総研 上川農業試験場長 紙谷 元一

圃場(ゆめぴりか)  北海道の新しい優良品種「ゆめぴりか」は食味が非常に優れ、各方面から注目を集めています。

今から30年前、北海道のお米は食味が劣り、「やっかいどう米」などと消費者に不評でした。

そこで北海道は「ササニシキ」や「コシヒカリ」並の極良食味品種の開発を目標に1980年から「優良米の早期開発」プロジェクトをスタートし、機器分析による成分育種が大きな効果を発揮しました。


北海道で生産するお米は本州に比べ低い温度条件下で登熟(とうじゅく)するため、澱粉の一成分であるアミロース含量が高く、またタンパク含量も高めでした。

そのため、お米の粘り気が少なく、固くなる傾向があります。農業試験場では、アミロースやタンパク含量を測定する分析装置を導入し、毎年何万点という試料を分析して品種改良を進めました。

こうした5期30年にわたるプロジェクト研究の中で、「きらら397」(88年 上川農試)、「ほしのゆめ」(96年 上川農試)、「ななつぼし」(2001年 中央農試)など美味しいお米が開発されています。


 

「ゆめぴりか」は、97年に「札系96118」を母本、「上育427号」を父本として交配を行いました。母本は(独)農研機構北海道農業研究センターで育成された低アミロースの良食味系統です。「きらら397」の変異系統で、低アミロースのうるち遺伝子を有しているため「コシヒカリ」よりも低いアミロース含量を示し、食味の向上に大きく寄与しています。

交配種子はおしべから稲をつくる葯培養(やくばいよう)を経て選抜が進められ、さらに生産力検定試験や各種特性検定試験、奨励品種決定現地調査などを行い、2009年に北海道の優良品種に認定されました。

「ゆめぴりか」は炊飯米につやがあり、ねばりが大変強く、もちもち感もあって消費者による食味試験でも大変美味しいと評価されています。参考品種ながら、日本穀物検定協会の食味ランキングで、基準米よりも特に良好なものに相当する「特A」となりました。

食味に関していえば、優良米開発プロジェクト発足30年にして、いよいよ当初の目的が達成されたといえます。ただし、耐冷性や耐病性についてはまだ十分とはいえず、改良すべき点も残されています。

品種改良は長い年月と多くの労力を必要とするプロジェクトです。効率化の進む水稲でも、交配から品種認定まで約10年、現地調査だけでも数年にわたり延べ50カ所以上で、栽培農家や農業改良普及センターのお世話になり実施しています。

今後も、温暖化による気象変動や持続可能な農業に対応するため、農業試験場内の連携はもちろん、関係機関のご協力をいただきながら試験研究を進めていきます。

 

  

 

 

 

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次回は5月の予定です。