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第34話 道産マイワシ高鮮度流通モデル~漁獲から流通まで~

釧路水産試験場 加工利用部 佐藤暁之

漁獲量の多い道東海域産のマイワシは、地域における重要な水産資源です。しかし、そのほとんどが養殖魚などのエサの原料となっており、食用として生鮮出荷されているものは全体の約1割しかありません。また、マイワシは、輸送に時間がかかると、急激に鮮度が低下します。このため、生鮮出荷された道産マイワシは、市場評価が高くないことが問題となっています。ここでは、道産マイワシの市場価値をより高めるために開発した鮮度保持技術について、3つのポイントを紹介します。

1つめのポイントは、あらかじめ漁船の船倉(漁獲魚を格納する区画)を十分に冷やしておくことです。このことに加えて、海水温と同じ温度のマイワシが船倉に投入された際に、速やかに所定の温度まで冷却するには、船倉内に温度ムラが生じないための十分な量の氷を投入することが必要です。

この冷却に必要な氷の量は、魚を冷やすために必要なエネルギー計算式を使って求めることができます。この計算式により船倉の大きさに応じて、用意するべき氷の量を事前に把握することができるようになりました(写真1)。

マイワシ水揚げの様子
写真1 マイワシ水揚げの様子

 2つめのポイントは、輸送中のマイワシの温度を、塩水(2.2%)を用いて氷を作ってマイワシが凍る直前の-1.3℃に保つことです。この時、ブロック状の氷ではなく、粒子が細かいシャーベット状の氷を用いると、より速やかに冷却できるとともに、魚体に傷がつきにくくなります。実験の結果、-1.3℃のシャーベット状の氷の中で、マイワシを保存したところ、高鮮度を3日間に渡り維持していることを確認しました(写真2)。この3日間という時間は、道東から東京市場までの輸送時間に相当します。

氷詰めマイワシ
写真2 シャーベット状の氷中のマイワシ

 3つ目のポイントは、輸送中の温度の確認です。一般に魚の鮮度を確認するためには、魚体を切断し、高価な分析機器と試薬を用いて、時間をかけて分析を行います。この分析を輸送中に行うことは現実的ではありません。そこで、自動温度計(写真3)を用いて、輸送時のシャーベット状の氷の温度を計測し、積算温度※を見積もりました。その結果、積算温度と鮮度には高い相関があることを確かめることができました。これにより、自動温度計を用いることでシャーベット状の氷の温度変化から、輸送中のマイワシの鮮度を簡単に推定することができるようになりました。

モニタリング用温度計
写真3 自動温度計

 以上を踏まえ、道産マイワシの漁獲から流通にかけて、高い鮮度を維持するための3つのポイント(図1)をまとめます。

 ①漁獲時に、あらかじめ冷却に必要な氷量を船倉に投入し、適切な温度管理を行う
 ②輸送中は、マイワシが凍る直前の-1.3℃を維持する
 ③輸送中の温度を継続的に記録し、温度履歴から鮮度を把握する

 の3つのポイントを活用することで、高い鮮度の道東産マイワシを、札幌や東京などの大消費地に供給することが可能となり、より高い市場評価を得られることとなります。

 用語説明

 積算温度※: 一定時間ごとに記録された温度を合算したものです。本研究では-5℃以上の値を使用しました。

道産マイワシ流通の推奨モデル
図1 道産マイワシ流通の推奨モデル
 

[2026年5月19日 公開]

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