法人本部

食ものがたり2(各ページバナー小)

第35話 北海道から初夏の贈り物  サクランボ新品種「陽まり」

中央農業試験場 作物開発部 作物グループ 吉田昌幸

サクランボの正式名称はおうとう(桜桃)ですが、サクラの実の総称であるサクランボが一般に使われています。北海道では5月に開花し、7月に収穫時期を迎えます。

そこで、サクランボの季節を前に、道総研中央農業試験場が育成した新品種「陽まり(ひまり)」を紹介します。

北海道および日本でサクランボ栽培が始まったのは、今から約150年前の明治初期であり、北海道開拓使が海外から品種を導入したことによります。

サクランボの花が開花するためには、冬に適度な低温に遭遇する必要があることから、主に北海道や東北で定着するようになりました。また、サクランボは“割れる宝石”ともいわれ、収穫時期に果実が雨に当たると裂果(れっか:果皮が内部の圧力に耐えられずに割れる現象)し、商品性が低下してしまいます。今でこそ、雨よけ施設を設置して裂果を防ぐのが一般的になりましたが、そのような理由で収穫時期に雨が少ない北海道や山形県で主に栽培が広まりました。現在、北海道の栽培面積は、山形県についで2位であり、店先、直売、観光果樹園等で接する機会も多いと思います。

開拓使が導入した品種には、「Napoleon Bigarreau」、「Governor Wood」、「Rockport Bigarreau」等があり、それぞれ「那翁(ナポレオン)」、「黄玉(きだま)」、「高砂(たかさご)」と和名が付けられました。大正時代になると、山形県の佐藤栄助氏が「ナポレオン」と「黄玉」を交配して中生品種(早生品種と晩生品種の間に収穫できる)の「佐藤錦」を育成しています。 「佐藤錦」は食味の良さから全国的に栽培面積が増加し、北海道でも46%を超え、最も栽培されている品種になっています。

昭和53年(1978年)には、山形県園芸試験場が「ナポレオン」の種子から晩生の「南陽(なんよう)」を育成しました。「南陽」は育成地の山形県よりも北海道で果実の着色が良かったことから、北海道で栽培が増加し、栽培面積割合は16%にもなります。しかし、近年の気候変動により、収穫時期の気温が上昇し、北海道産「南陽」の着色不足や果肉の軟化が問題となり、「南陽」に代わる優れた晩生品種の育成が求められていました。

また、サクランボには相性の良い別品種の花粉が結実(けつじつ:植物に実がなること)に必要です。しかし、「佐藤錦」と「南陽」は花粉を互いにやりとりしても結実しない特性があり、「佐藤錦」と「南陽」の栽培面積増加は、結実が安定しにくい要因となっていました。

 

新品種「陽まり」は、中央農業試験場において、「南陽」を母親、山形県が育成した極晩生の「紅てまり」を父親として交配し、得られた種子から選抜・育成した晩生品種であり、収穫始めは「南陽」と同時期です(写真1)。

「陽まり」の樹姿
写真1 「陽まり」の樹姿

「陽まり」は、「佐藤錦(7~8g)」や「南陽(9~10g)」に比べて大玉で10~11gになります。その上、「佐藤錦」や「南陽」より果肉が硬く、種が小さいため、食べ応えがあります。また、「南陽」と比べた「陽まり」の食味アンケートの結果、「南陽」より美味しい、やや美味しいと答えた割合は9割を超えました。加えて果皮は“濃赤”に全面に着色し(写真2)、「佐藤錦」や「南陽」より着色が優れています。近年の高温でも着色しやすいため、北海道産サクランボの商品性向上が期待できます。

栽培面では、「佐藤錦」をはじめほとんどの栽培品種と交配が可能であることから、園地の結実環境を改善し、他品種の結実安定にも貢献できます。

濃赤で大きい「陽まり」の果実
写真2 濃赤で大きい「陽まり」の果実

「陽まり」の苗木供給は、北海道限定となっており、令和6年から道内での栽培が本格化しています。一部の地域では実がなり始めた樹があり、今後、果実の生産量が増加し、店先、観光果樹園、直売所などで出回るようになりましたら、北海道にしかない旬の味を味わってみてはいかがでしょうか。

[2026年6月1日 公開]

  • この記事に関するお問合せ
  • 経営管理部 企画・広報室
  • TEL 011-747-2900 FAX 011-747-0211
  • Email hq-soudan■hro.or.jp
    (上記アドレスの■を半角@に変えてからご送信ください。