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第37話 森の小さな赤い宝石「モリイチゴ」

林業試験場 道北支場 錦織 正智

ヨーロッパにはフランス語で「フレーズ・デ・ボア(fraises des bois=森のイチゴ)」と呼ばれる野生のイチゴ(学名Fragaria vesca)が自生しています。古くはシャルル5世やルイ14世など、歴代のフランス国王が宮殿の庭園で栽培させた記録がある王侯貴族に深く愛された野生のイチゴです。果実は非常に小さいものの、現代の一般的な栽培品種(Fragaria × ananassa)にはない芳醇で強い香りと、野性味あふれる酸味が特徴です。一般的なイチゴが大きさや日持ちを重視して品種改良されてきたのに対し、野生種フレーズ・デ・ボアは非常にデリケートで長距離輸送や大量生産に向きません。しかし、この希少性と一度食べたら忘れられない濃縮された風味があることから、現在でもフランスの高級レストランやパティスリーでは、一般的なイチゴとは一線を画す高級食材として重宝されています。

一方、日本の林野にも野生のイチゴ「モリイチゴ(学名Fragaria nipponica Makino)」が自生しています(写真1,2)。かつて、モリイチゴは欧州のフレーズ・デ・ボアと同一種と考えられていました。しかし、牧野富太郎博士によって別種であることが明らかにされ、種名ニッポニカと命名されました。また、フレーズ・デ・ボアとは異なり、日本では数ある野草の一つとして認識されるに過ぎず、外遊びをする子どもたちのおやつとして親しまれる程度にとどまっていました。優れた香りを持ちながらも、食材としての価値が見いだされる機会は少なく、栽培されることも無い未利用の森林資源でした。しかし、欧州の食文化から捉え直すと、この果実が極めて高いポテンシャルを秘めていることが浮かび上がります。そこで林業試験場では、モリイチゴを北海道発のベリーとして世に送り出すことを目指して、栽培方法の開発に着手しました。

モリイチゴの自生地
写真1 モリイチゴの自生地
自生地でのモリイチゴ
写真2 自生地でのモリイチゴ

 

本来、木漏れ日の下で育つモリイチゴですが、ポットや露地で栽培すると旺盛に成長し、たくさんの果実を着けることが分かりました(写真3,4)。道北支場では、町内の認定こども園の行事「いちご狩り」などに活用すると共に、販路の開拓も進めてきました。その結果、パティシエからの評価は高く、市販化の要望が届くようになりました。そこで、中川町内の農業法人へ技術移転を進め、本格的な営利生産体制へと移行しました(写真5,6)。かつて自然がくれる子どもたちのおやつだったモリイチゴは中川町発の新たな特産品としての道を歩み始めました。

モリイチゴのポット栽培
写真3 モリイチゴのポット栽培
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写真4 露地栽培(7月)
農業法人において営利生産
写真5 農業法人において営利生産
収穫
写真6 収穫

 

[2026年7月21日 公開]

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