シシャモ
第22話 北海道にしかいない魚「シシャモ」
道総研 さけます・内水面水産試験場 工藤 智
シシャモ(柳葉魚:サケ目キュウリウオ科シシャモ属)は北海道の太平洋岸に生息する魚で、東は厚岸町(別寒辺牛川)から、西は八雲町(遊楽部川)にかけての僅か十数河川に遡上する、北海道固有の魚です。
むかし、アイヌの神様が食べ物に困っていた人間達に食糧を与えようとして、柳の葉を川(鵡川)に流したところ、ススハム「スス=柳」、「ハム=魚」になったという伝説から命名されたと伝えられています。
シシャモの主な加工方法は何と言っても「すだれ干し」です。漁獲されたシシャモに1%前後の塩分を加えて、冷い浜風で2~3日間干しあげると完成です。この「すだれ干し」は、秋の風物史として知られ、この時期になると東京から多くの取材が訪れ、全国に放映されます。「すだれ干し」は冷凍保存が出来るため翌年の正月頃まで販売されます。
シシャモ漁業は小型機船底びき網「ししゃもこぎ網漁業」により行われていますが、漁期は10月~11月の僅か2ヶ月しかありません。水揚げ量は年間平均1,263トン、水揚げ高は13億2千万円にものぼります。単価はkg当たり850~1,360円ですが、全道的な不漁年になるとkg当たり2,000円を超えてしまいます
この北海道特産のシシャモは「本シシャモ」と呼ばれていますが、東京都内のスーパーマーケットにはシシャモは殆ど並びません。あっても、良く見るとシシャモに似た「カラフトシシャモ」が多いようです。
1970年代後半に本シシャモの漁獲量が不安定であったことから同じキュウリウオ科で属が違う「カラフトシシャモ」(英名の仮名標記ではカペリン)がノルウエーやカナダから年間約30,000トンも輸入されるようになりました。この「カラフトシシャモ」は値段も安価で魚体の油分も多いため、家計を預かる主婦層や子供達に好まれています。
ところで最近、本シシャモの刺身が注目されていることをご存じでしょうか?
10月のシシャモ漁業解禁頃に、ある寿司店で独自にシシャモの雄を3枚におろして寿司ネタにしたのが始まりですが、鵡川の水産加工会社では「北海道本シシャモ刺身」の冷凍パックを製品化、札幌や東京方面に出荷して好評を博しています。
最近では、このシシャモ刺身を使った寿司ネタの評判が高くなったため、成熟前の夏のシシャモが重宝されています。この時期は海の水温が高いのに加え、魚体脂肪分が多いため鮮度保持しづらく北海道内でも流通先が限られていますが、近い将来、シシャモの「すだれ干し」に対抗するような製品に成長するかもしれません。
道総研さけます・内水面水産試験場では、シシャモの資源安定化、さらなる増大を目指して調査を行っています。毎年秋にシシャモが産卵のため川を遡上する特性を利用して、10月下旬~11月下旬の1か月間、シシャモの親魚の遡上数推定を地元胆振管内シシャモ漁業振興協議会の協力を得て調査しています。調査の結果から、鵡川では60万尾以上を産卵のため遡上させるように漁業者の皆さんに説明しています。
このほか栽培水産試験場や釧路水産試験場では、海の資源調査に取り組んでシシャモの漁獲資源量や親魚がいつ頃に遡上するのか漁獲資源の予測調査を行っています。
▼道総研さけます・内水面水産試験場ホームページはこちらから
http://www.hro.or.jp/list/fisheries/research/hatch/
次回は12月の予定です。