パンケ沼(幌延)
Lake Panketo
所在地 (Location) | 幌延町 (Horonobe Town) |
成因 (Origin) | 海跡湖 (lagoon lake) |
湖面標高 (Elevation) | 0 m |
湖面積 (Surface area) | 3.55 km2 |
最大水深 (Max. depth) | 2.4 m |
容積 (Volume) | 3500 ×103 m3 |
集水域面積 (Watershed area) | 19.37 km2 |

沼の東から西方向を撮影。周囲はサロベツ湿原に囲まれている。流出河川は写真奥側にあり、500メートル程度でサロベツ側に合流する。写真下部の直線状はパンケ沼園地の遊歩道。写真右奥にはペンケ沼が見える。(2023年6月19日撮影)
パンケ沼(パンケトウ)は幌延町にあり、サロベツ原野のペンケ沼の南側にある汽水湖である。「パンケ」及び「ペンケ」は、それぞれ、アイヌ語で「下」及び「上」の意味である。 パンケ沼とペンケ沼はサロベツ原野に南北に並んでおり、それぞれサロベツ川につながっているが、パンケ沼はペンケ沼より下流側につながっている。
パンケ沼は湖面標高0 m、湖面積3.55 km2の海跡湖である。国土地理院の湖沼調査(2005年測量)によれば、最大水深は沼西側の流出口付近の2.4 mである [1]。流出口付近を除けば、岸から沼中央部に向ってすり鉢状に深くなっており、湖心部は水深1.7 mである [1]。
流入河川は、主に北方のパンケオンネベツ川であり、流出水はサロベツ川に注ぐ。パンケ沼はサロベツ川から天塩川を通じて海に近く、勾配も小さいため、海水が湖内に進入する。湖面積に対する集水域面積の比が約5.5と小さく(ペンケ沼は約165)、流入河川の影響を受けにくいこともまた、汽水環境が維持される要因の一つと考えられる。
集水域の土地利用は農用地が約36%、荒地が約26%、森林が約18%である。荒地のほとんどは湖岸の湿原植生である [2]。
塩化物イオン濃度は141~3200 mg/Lと比較的大きな範囲を示し、2023年6月の調査時は845 mg/Lであった。湖水は褐色を呈し、また、CODは8~22 mg/L前後と比較的高いことから、泥炭地湿原に特徴的な腐植物質の影響を受けていると思われる。
パンケ沼では、富栄養化に伴う底泥のヘドロ化とアオコの発生が懸念されている。過去からの栄養度の変遷によれば、2023年6月の調査時のTNとTP濃度はそれぞれ1.61と0.184 mg/Lでありこれまでで最も高い値となり、TN、TPともに過栄養レベルにあった。とくにTPは1990年代までは0.1 mg/L以下であったが、2000年以降は概ね0.1 mg/Lより大きい値で高止まりしている状況がうかがえる。また、アオコは確認されなかったが、Chl-a濃度も2023年6月に76 μg/Lとこれまでで最高値を示した。栄養塩濃度の高い湖沼は、一般に塩分濃度が低くなるとアオコが発生しやすくなることから、注視が必要である。
パンケ沼の湖面及び集水域の一部は利尻礼文サロベツ国立公園に指定されているほか、ラムサール条約指定区域となっている。パンケ沼は、ペンケ沼と同様に、水鳥の繁殖地、渡り鳥の中継地として重要で[3]、渡り途中のガン・カモ類やオオハクチョウなどの群れが訪れる。パンケ沼の東側湖岸にはパンケ沼園地という沼と湖岸の湿原を巡る散策路が整備されており、木道脇では湿原植生や鳥類が観察できるようになっている。また、パンケ沼はシジミの漁場として有名である。
調査日 | 地点 | 全水深 [m] |
透明度 [m] |
pH | Cl- [mg/L] |
アルカリ度 [meq/L] |
DO [mg/L] |
COD [mg/L] |
TOC [mg/L] |
TN [mg/L] |
TP [mg/L] |
Chl-a [μg/L] |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1979-08-16 | St-1 | 1.0 | 7.9 | 10.6 | 10 | |||||||
1982-08-17 | St-1 | 1.5 | >1.5 | 8.0 | 3200 | 8.4 | 8.4 | 0.56 | 0.020 | 2.3 | ||
1985-08-27 | St-1 | 0.8 | 7.5 | 345 | 7.2 | 15 | ||||||
1991-07-18 | St-1 | 2.0 | >2.0 | 7.3 | 806 | 0.653 | 7.6 | 10.6 | 5.8 | 0.05 | 0.053 | 6.8 |
2000-07-24 | St-1 | 2.0 | 0.5 | 7.2 | 1160 | 0.574 | 9.5 | 14.0 | 12.0 | 1.20 | 0.120 | 33 |
2000-08-29 | St-1 | 1.7 | 0.5 | 7.3 | 0.643 | 7.7 | 19.0 | 14.0 | 1.10 | 0.100 | 16 | |
2000-10-16 | St-1 | 2.0 | 0.4 | 7.3 | 141 | 0.495 | 11.0 | 22.0 | 14.0 | 1.20 | 0.160 | 27 |
2001-06-25 | St-1 | 1.8 | 0.8 | 8.7 | 414 | 0.614 | 10.0 | 17.0 | 11.0 | 0.35 | 0.120 | 26 |
2001-07-25 | St-1 | 2.2 | 1.0 | 8.8 | 570 | 0.526 | 6.4 | 14.0 | 13.0 | 0.34 | 0.090 | 14 |
2001-09-10 | St-1 | 1.7 | 0.5 | 7.8 | 1110 | 0.534 | 8.4 | 19.0 | 12.0 | 0.35 | 0.110 | 19 |
2023-06-19 | St-1 | 1.8 | 0.5 | 8.8 | 845 | 0.792 | 11.8 | 15.7 | 1.61 | 0.184 | 76 |
[1] 国土地理院,2017.湖沼データ(パンケ沼).URL: https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/koshouchousa-list.html(2024年10月7日時点)
[2] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2024年10月7日時点)
[3] 環境省,2022.日本のラムサール条約湿地―豊かな自然・多様な湿地の保全と賢明な利用―.URL: https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/pamph02/index.html(2024年10月7日時点)