声間大沼
Lake Koetoi-Onuma
所在地 (Location) | 稚内市 (Wakkanai City) |
成因 (Origin) | 海跡湖 (lagoon lake) |
湖面標高 (Elevation) | 0.2 m |
湖面積 (Surface area) | 4.75 km2 |
最大水深 (Max. depth) | 2.0 m |
容積 (Volume) | 7125 ×103 m3 |
集水域面積 (Watershed area) | 53.87 km2 |

沼の南西から北東方向を撮影。流出水は写真右奥から流出し、声問川に合流する。沼の北(写真中央奥)には北海道立宗谷ふれあい公園や大沼野鳥観察館がある。(2023年6月20日撮影)
声問大沼(コエトイオオヌマ)は稚内市北部、声問川下流の左岸側低地に位置する海跡湖である。声問(コエトイ)は声問川下流域の地名であり、アイヌ語のコイトゥイエに由来し、波のため河口の砂場が切られた所を意味する [1]。一方、声問大沼は別名「シュプン・トー」と言い、「ウグイ・沼」の意である[2]。
声問大沼は湖面標高0.2 m、湖面積4.75 km2、最大水深2.0 mの浅く、河口から海水が逆流する汽水湖である。
流入河川は、主として南方のサラキトマナイ川で、流出水は北方の声問川を経て宗谷湾に注ぐ。なお、治水のため昭和30年代には声問大沼に流入していた声問川を大沼と切り離し、直接河口に至る捷水路工事が実施されている [3]。
集水域の土地利用は森林が全体の約38%と最も大きく、次いで農用地が約30%、荒地が約20%である。農地は主にサラキトマナイ川の両岸の低地に分布し、ほとんどが牧草地である [4]。また、荒地の多くは湖岸部に広がるヨシなどの湿原植生とその外側に広がるササ群落である [4]。
2023年6月の調査時は平均風速が5 m/s程度と強く [5]、波が立っている状況であった。湖水は褐色を呈しており、COD濃度は14.3 mg/L(過去の調査では10~30 mg/L程度)と比較的高いことから、腐植物質の影響を受けていると考えられる。2023年の調査時のTNとTP濃度はそれぞれ1.36と0.105 mg/Lの過栄養のレベルにあった。栄養度について1980年代や1990年代から明確な変化は見られていない。また、Chl-a濃度について、2023年の調査時は20 μg/Lであり、過去の測定値の範囲内にあった。なお、1990年代には、Chl-a濃度が100 μg/L程度の高い値が記録されている。
2023年6月の水質鉛直プロファイルでは水温、溶存酸素、塩分とも鉛直方向に一様であった。
声問大沼及び周辺の湿地等は北海道の自然景観保護地区に指定されている [6]。声問大沼北側の台地上に道立宗谷ふれあい公園があり、キャンプ場、パークゴルフ場、多目的広場などの複合レジャー施設として利用されている [7]。また、声問大沼北西岸の丘陵上には擦文文化期の集落遺跡であるシュプントー遺跡がある [8]。
調査日 | 地点 | 全水深 [m] |
透明度 [m] |
pH | Cl- [mg/L] |
アルカリ度 [meq/L] |
DO [mg/L] |
COD [mg/L] |
TOC [mg/L] |
TN [mg/L] |
TP [mg/L] |
Chl-a [μg/L] |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1982-06-08 | St-1 | 2.2 | 0.9 | 6.8 | 36.2 | 9.8 | 11 | 0.63 | 0.076 | 11 | ||
1985-08-28 | St-1 | 0.2 | 7.9 | 4660 | 8.4 | 54 | ||||||
1988-05-17 | St-1 | 0.15 | 7.1 | 270 | 9.6 | 18 | 1.1 | 0.182 | 29 | |||
1988-06-21 | St-1 | 0.3 | 8.3 | 320 | 11.8 | 19 | 1.3 | 0.069 | 56 | |||
1988-07-19 | St-1 | 0.5 | 652 | 8.9 | 26 | 1.1 | 0.174 | 28 | ||||
1988-08-23 | St-1 | 0.3 | 9.6 | 6750 | 10.5 | 23 | 1.9 | 0.159 | 100 | |||
1988-09-27 | St-1 | 0.6 | 4550 | 12.3 | 32 | 1.5 | 0.185 | 67 | ||||
1988-10-18 | St-1 | 0.25 | 7.8 | 2550 | 10.5 | 24 | 1.1 | 0.146 | 50 | |||
1988-11-08 | St-1 | 0.2 | 6.9 | 820 | 11.5 | 24 | 1.9 | 0.185 | 38 | |||
1989-02-08 | St-1 | 5.9 | 324 | 10.4 | 16 | 1.6 | 0.086 | 17 | ||||
2023-06-20 | St-1 | 1.3 | 0.7 | 8.4 | 4740 | 0.680 | 10.4 | 14.3 | 1.36 | 0.105 | 20 |
[1] 「角川日本地名大辞典」編纂委員会(編),1987.角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻.角川書店,東京.1654p.
[2] 山田秀三, 1984.北海道の地名.北海道新聞社,札幌.586p.
[3] 国土交通省,2009.声問川水系河川整備基本方針.
[4] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2024年10月9日時点)
[5] 気象庁.過去の気象データ(声問アメダス).URL: https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php(2024年10月9日時点)
[6] 北海道環境生活部自然環境局,2021.環境緑地保護地区等指定一覧表(令和3年4月2日現在).URL: https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/kouen/hozen.html(2024年10月9日時点)
[7] 宗谷総合振興局稚内建設管理部用地管理室維持管理課,2024.道立宗谷ふれあい公園.URL: https://www.souya.pref.hokkaido.lg.jp/kk/wkk/78589.html(2024年10月9日時点)
[8] 稚内市教育委員会教育部社会教育課.シュプントー遺跡.URL: https://www.city.wakkanai.hokkaido.jp/kyoiku/supotsushogaigakushu/bunkarekishi/bunkakenzo8.html(2024年10月9日時点)