ペンケ沼(豊富・幌延)

Lake Penketo

所在地 (Location) 豊富町・幌延町 (Toyotomi Town / Horonobe Town)
成因 (Origin) 海跡湖 (lagoon lake)
湖面標高 (Elevation) 1 m
湖面積 (Surface area) 1.27 km2
最大水深 (Max. depth) 2.7 m
容積 (Volume) 1200 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 208.96 km2

沼の東から西方向を撮影。周囲はサロベツ湿原に囲まれている。流出水は写真の左側から下エベコロベツ川として流出し、2キロメートルほどでサロベツ川に合流する。沼の平均水深は非常に浅く、多くの抽水植物が水面上に確認できる。写真左端にはパンケ沼が見える。(2023年6月19日撮影)

ペンケ沼(ペンケトウ)は豊富町と幌延町にまたがっており、サロベツ原野のパンケ沼の北側にある淡水湖である。「パンケ」及び「ペンケ」は、それぞれ、アイヌ語で「下」及び「上」の意味である。パンケ沼とペンケ沼はサロベツ原野に南北に並んでおり、それぞれサロベツ川につながっているが、ペンケ沼はパンケ沼より上流側につながっている。

ペンケ沼は湖面標高1 m、湖面積1.27 km2の海跡湖である。国土地理院の湖沼調査(2005年測量)によれば最大水深は2.7 mあるが、水深が1 m以上あるのは沼南側の流出口付近のみであり、沼の大部分は0.5 m未満と浅い [1]

流入河川は、北東の豊富方面から流下してくる下エベコロベツ川であり、流出水は、沼の南方を流れる下エベコロベツ川を経て、サロベツ川に注ぐ。

集水域の土地利用は森林が全体の約62%を占め、牧草地を主とする農用地が約21%と次ぐ。また、荒地が約13%と比較的大きく、湖岸や下エベコロベツ川下流域に湿原植生が広がっている [2]

ペンケ沼は湖面積に対する集水域面積の比が約165と大きく(パンケ沼は約5.5)、流入する河川の水質の影響を強く受ける。2001年7月の調査時は大雨の時のものであったが、その時は、パンケ沼はそうでもなかったが、ペンケ沼の湖水は流域河川から運ばれてきた土砂などで黄土色に濁っていた。ペンケ沼はパンケ沼よりも周囲の影響を受けやすく、環境が変化しやすい。

2023年6月の調査時は水深が浅く湖心に到達できなかったため、湖心より東側の水深0.2 m地点で採水した。塩化物イオン濃度は、1982年8月に410 mg/Lが観測されたが、以後は20~50 mg/L付近と低濃度であった。湖水は褐色を呈しており、パンケ沼と同様に腐植物質の影響を受けていると考えられる。

湖水のCODは2001年7月を除き10 mg/L前後で推移している。栄養度について、2023年6月の調査時はTNが0.93 mg/L、TPが0.159 mg/Lとそれぞれ富栄養、過栄養レベルであった。とくにTPは、1980・90年代に比べ高濃度を示したが、水深が浅く底泥からの溶出や巻き上げの影響を受けていた可能性がある。

ペンケ沼の湖面及び集水域の一部は利尻礼文サロベツ国立公園に指定されているほか、ラムサール条約指定区域となっている。ペンケ沼は、パンケ沼と同様に、水鳥の繁殖地、渡り鳥の中継地として重要で [3]、渡り途中のガン・カモ類やオオハクチョウなどの群れが訪れる。

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1982-08-17 St-1 0.4 8.2 410 9.8 12.0 0.87 0.030 28
1985-08-27 St-1 0.9 8.0 28.8 7.0 5.6
1990-06-06 St-1 0.6 >0.6 7.3 31 8.8 7.0 3.9 0.70 0.066 1.7
1995-09-18 St-1 0.4 >0.4 7.1 29.7 0.571 10.8 9.6 5.2 0.72 0.065 1.7
2001-07-25 St-1 2.1 0.1 9.2 18 0.204 7.0 21.0 17.0 1.70 0.250 2.2
2023-06-19 湖心東 0.2 >0.2 8.1 46.8 0.870 10.0 10.5 0.93 0.159 8.5
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル

[1] 国土地理院,2019.湖沼データ(ペンケ沼).URL: https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/koshouchousa-list.html(2024年10月7日時点)

[2] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2024年10月7日時点)

[3] 環境省,2022.日本のラムサール条約湿地―豊かな自然・多様な湿地の保全と賢明な利用―.URL: https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/pamph02/index.html(2024年10月7日時点)