兜沼（カブトヌマ）は、豊富町北部のサロベツ原野北端にある沼で、その成因は海跡湖である。

兜沼は1924年（大正13年）に宗谷線が通り、沼の形が兜の鍬形に似ていることから命名された ^[1]。なお、明治の地図にはペライサルトーと書かれており、peray-sar-to（釣りをする・葭原の・沼）の意とされている ^[1]。

兜沼は、湖面標高6 m、湖面積1.45 km²、最大水深3.0 mの浅い淡水湖である。

流入河川として兜沼川とその支流が北方から入っている。沼の西側は標高90 m前後の丘陵地から沼に向って斜面が広がっており、沼のすぐ西側には北から南へ排水路が設置されている。流出水は南方の兜沼川を経由してサロベツ川に注ぐ。

集水域の土地利用は農用地が全体の約51％と最も大きく、主に沼の北側と西側に牧草地が広がっている ^[2]。農用地に次いで森林が約32％であり、西側の丘陵地に針広混交林がまとまって分布しているほか、沼の東側にハンノキなどの沼沢林が広がっている ^[2]。また、沼の北東側にJR宗谷線兜沼駅があり、その周辺に建物用地が広がっている。

2023年6月の調査時のTNとTP濃度はそれぞれ3.65と0.375 mg/Lといずれも過栄養レベルであり、1980年代に比べて著しく富栄養化が進行している状況がうかがえた。これらの濃度は、2021～2023年に調査した道内70湖沼のうち、道央・道南（低地）地域の宮島沼に次ぐ2番目に高いものであった。2023年のChl-a濃度は300 μg/Lを示し、湖水は緑色を呈し、湖岸付近にアオコが見られた。兜沼は腐植型湖沼とされ、CODは1980年代時点で17.0 mg/Lと比較的高かったが、2023年には33.8 mg/Lと80年代の2倍近い値を記録しており、富栄養化に伴う有機汚濁が進んでいると思われる。

沼の北東側の湖岸部はキャンプ場として利用されている。