オタドマリ沼

Lake Otadomari

所在地 (Location) 利尻富士町 (Rishirifuji Town)
成因 (Origin) 海跡湖 (lagoon lake)
湖面標高 (Elevation) 2.3 m
湖面積 (Surface area) 0.09 km2
最大水深 (Max. depth) 3.5 m
容積 (Volume) 91.18 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 1.41 km2

沼の南東から北西方向を撮影。沼の周囲には遊歩道が整備されている。中央の山は利尻山。(2023年5月23日撮影)

オタドマリ沼は、利尻島南部、沼浦の海岸線近くに位置している。この沼は、利尻山噴火の際、爆裂火口に水が溜まった溜水湖という解釈と[1] 、土地の変動でできた海跡湖という解釈がある。(ここでは、海跡湖とする。)

「オタドマリ」とは、アイヌ語で「砂のある入江」の意味で、このあたり一帯をそう呼んでいる。

オタドマリ沼は、湖面標高2.3 m、最大水深3.5 m、湖面積0.09 km2、集水域面積1.41 km2の浅い小さな淡水湖である。

流入河川や流出河川は見られないが、利尻山の地下水が湖水を維持しているものと考えられる。

集水域の土地利用は、ほとんどが山林や湿地帯などの自然地である。沼の周辺の湿原には、アカエゾマツの群落がみられるほか、モウセンゴケやツルコケモモなど多数見られ、原生花園となっている。

オタドマリ沼の水質的特徴は、pHが5以下と低く酸性であることである。そのため、アルカリ度はほとんどない。また、湖水は濃い赤から褐色を呈しており、周囲の環境やCOD濃度が高いことから、腐植物質の影響を強く受けている湖沼であると言える。

pHが低いことから、植物プランクトンが増殖しにくいと考えられるが、1983年7月27日には、Chl-a濃度として、150 µg/Lの高い値を示し、植物プランクトンの大増殖が確認された。この時の優占種は、Asterionella formosa(ホシガタケイソウ)であった。また、この時はTNやTPの濃度も非常に高かった。一方で、長期的に見ると1983年の状況は例外的で、オタドマリ沼ではChl-a濃度は10 µg/L未満のことが多く、2023年5月の調査では1.9 µg/Lだった。

TNおよびTP濃度は富栄養湖レベルの沼であると言える。

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1979-08-14 St-2 0.3 5.0 6.8 4.2
1983-07-27 St-2 0.7 0.3 4.8 37.0 9.3 32.0 2.18 0.360 150
1985-08-29 St-2 0.3 4.9 31.5 7.9 11
1991-05-29 St-2 1.0 4.2 0.000 10.0 17.0 8.8 0.48 0.024 8.1
1996-06-18 St-2 0.9 >0.9 4.8 20.0 0.000 7.7 15.3 8.0 0.48 0.053 1.7
2023-05-23 St-2 1.3 0.8 4.6 17.8 0.000 8.2 24.8 0.68 0.062 1.9
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)

[1] 矢島睿, 1987. さいはての島の小沼 姫沼・オタドマリ沼・久種湖. 日本の湖沼と渓谷1 北海道Ⅰ 摩周・サロマ湖と日高の渓谷, 今西錦司・井上靖[監修]:156–161. ぎょうせい, 東京.