チミケップ湖

Lake Chimikeppu

所在地 (Location) 津別町 (Tsubetsu Town)
成因 (Origin) 堰止湖 (dammed lake)
湖面標高 (Elevation) 285 m
湖面積 (Surface area) 1.20 km2
最大水深 (Max. depth) 22 m
容積 (Volume) 14600 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 21.27 km2

湖北西部から南東方向を撮影。堰止湖特有の入り組んだ湖岸形状をしている。流出部は写真の奥方向にあり、鹿鳴(ろくめい)の滝を経てチミケップ川となる。(2022年10月19日撮影)

チミケップ湖は、津別町西部の津別山地にあり、網走川水系チミケップ川上流部に位置する堰止湖である。チミケップはアイヌ語の「チミケㇷ゚」に由来し「山水が崖を破って流下する所」の意である [1]

チミケップ湖は湖面標高285 m、湖面積1.20 km2、最大水深22 mの淡水湖である。流出河川側のSt-3が最深部である。

チミケップ湖は周囲を標高400~600 mの小起伏山地に囲まれており [2]、集水域の北西端は網走川流域と常呂川流域の分水嶺にあたる。主な流入河川として、北方からオビオメの川とヤマメの沢川が南方からオンネトシュ別川が入る。流出水は、湖の南東から鹿鳴の滝を経て、チミケップ川に注いでいる。

集水域の土地利用は、森林が全体の約95%を占め、エゾマツ、トドマツ、ミズナラなどを中心とした自然植生が広がる [3]。また、河川沿いにはハルニレやヤチダモなどの渓畔林が、湖岸の一部にはヨシなどの湿原植生が分布する [3]

最深部であるSt-3の表層の水質データを表に示す。2022年10月の透明度は2.0 mと、過去の測定値に比べて低かった。

2022年のTNとTP濃度はそれぞれ0.35と0.017 mg/Lで、中栄養レベルにあった。調査回数が少ないため経年変化の傾向は不明である。TP濃度は小数点第3位(0.004 mg/L)から小数点第1位(0.118 mg/L)までの広い範囲をとり、調査ごとに大きく異なっていた。

Chl-a濃度はこれまで1~2 μg/L前後で推移していたが、2022年には23 μg/Lと急増した。チミケップ湖は、人為汚染のほとんど無い山地湖沼であるにも関わらず、藍藻(らんそう)と呼ばれる藻類の一種であるAphanizomenon flos-aquae によるアオコが発生することが知られている [4]。種類まではわからないが、2022年10月の調査時に湖岸にアオコの滞留がみられた。過去に比べて透明度が低かったのは藻類増殖による影響と思われる。

2022年10月の水質鉛直プロファイルでは、水深10 m前後で水温が急激に低下し、明瞭な成層が見られた。溶存酸素は表層では飽和度90%程度あったが、水温の低下とともに急激に減少し、水深15 m以深では1%未満であった。一方、電気伝導度は上層より下層で高く、水深9 m以深で緩やかに上昇する特徴的な分布を示した。

チミケップ湖の湖畔にはホテルとキャンプ場がある [5]。また、湖を取り囲む北側半分一帯の原始林は野鳥公園となっており、散策路が整備されている [5]

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1982-07-06 St-3 22.0 5.0 7.8 2.8 8.7 3.0 0.15 0.004 0.68
1986-07-03 St-3 21.5 5.0 7.6 2.9 9.0 5.0 0.25 0.011 7.8
1988-05-31 St-3 21.0 3.2 8.4 3.2 11.7 5.2 0.27 0.012 6.3
1988-07-06 St-3 19.5 5.9 7.6 5.3 9.1 5.5 0.31 0.006 2.0
1988-09-07 St-3 20.0 5.7 7.2 3.7 8.7 0.11 0.015 1.7
1988-10-13 St-3 20.0 5.2 6.6 3.2 9.8 4.8 0.37 0.057 3.0
1991-07-03 St-3 18.0 6.5 7.9 4.2 0.660 7.8 4.8 3.0 0.42 0.118 1.5
1993-06-15 St-3 23.0 3.2 7.0 3.4 10.2 0.16 0.004 2.7
1998-10-13 St-3 23.0 3.1 7.4 2.0 0.611 9.4 6.9 5.5 0.20 0.013 2.4
2022-10-19 St-3 21.6 2.0 7.5 2.23 0.640 8.9 6.1 0.35 0.017 23
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル

[1] 北海道環境生活部アイヌ政策推進局アイヌ政策課,2021.アイヌ語地名リスト.URL: https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/ass/new_timeilist.html(2024年11月21日時点)

[2] 国土交通省.国土数値情報(20万分の1土地分類基本調査「地形分類図」).URL: https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/landclassification/land/l_national_map_20-1.html(2024年10月8日取得)

[3] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)

[4] 日野修次,1992.アオコ及び淡水赤潮研究の現状と課題.産業公害,28:585–591.

[5] 津別町役場.チミケップ湖.URL: https://www.town.tsubetsu.hokkaido.jp/soshiki/sangyoshinko/5/807.html(2025年5月19日時点)