丹治沼

Lake Tanji

所在地 (Location) 苫小牧市 (Tomakomai City)
成因 (Origin) 海跡湖 (lagoon lake)
湖面標高 (Elevation) 5 m
湖面積 (Surface area) 0.28 km2
最大水深 (Max. depth) 2.0 m
容積 (Volume) 280 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 6.77 km2

沼の南東側から北西方向を撮影。沼は苫小牧市民レガッタなどのボート競技に利用されている。写真手前には桟橋が見える。湖畔にはかつて白鳥湖観光ホテルや白鳥湖遊園地があった。(2022年10月25日撮影)

丹治沼(タンジヌマ)は、苫小牧市東部、ウトナイ湖の北2 kmほどのところに位置している。この沼は、ウトナイ湖の流入河川である美々川の支流にあり、成因は海跡湖である。

丹治沼は、かつて、「チライウシト」あるいは「チライウシュナイト」(“イトウが群生するところの川”の意)と言われていた。1917年に丹治索氏がこの地一帯の国有未開地の払い下げを受けて入植してから、この沼は丹治沼と呼ばれるようになったと言われている。

丹治沼は白鳥湖とも呼ばれ、その名の通り、冬になると多くの白鳥で賑わいを見せる。

丹治沼は、湖面標高5 m、湖面積0.28 km2、最大水深2.0 mの浅く小さな淡水湖である。1984年の湖内3地点での調査では、流入河川に近い沼の北西部(St-3)で水深0.7 m、流出口に近い沼の南東部(St-1)で水深1.4 mとなっており、南東部の方が深い [1]

丹治沼は、勇払平野に広がる三角州性低地の北端に位置し、北側と南側を標高10~20 mのローム台地に面している [2]。流入河川として、苫小牧市と千歳市の境界付近に源を発する丹治沼川が沼の西方から入る。流出水は沼の南東端から丹治沼川を経て、美々川に注ぐ。

丹治沼の集水域は沼の北西方向に細長く伸びている。その土地利用は、森林が全体のおよそ8割を占めており、ミズナラなどの落葉広葉樹二次林や、カラマツなどの植林地が見られる [3]。沼の北部にはゴルフ場が隣接しており、集水域面積の1割強を占めている。また、道央自動車道が集水域の中央付近を縦断している。

これまでに行われた水質調査のうち、St-1の結果を表に示す。透明度は、1970年代から90年代のいずれも全透(底まで見える状態)であったが、2023年6月の調査時には0.9 mであった。また、塩化物イオンはこれまで10 mg/L前後であったのが、2023年には109 mg/Lと、一桁高い値となっていた。CODは高い時で10 mg/L前後であり、湖水は淡黄色を呈していることから、腐植物質の影響を強く受けていると思われる。

2023年6月のTNとTP濃度はそれぞれ0.44 mg/Lと0.042 mg/Lであり、富栄養レベルにあった。調査回数が少ないため経年変化の傾向は不明であるが、1980年代に比べてTP濃度が高くなっており、富栄養化が懸念される。2023年6月のChl-a濃度は12 μg/Lと、過去の測定値の範囲内であった。

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1979-07-21 St-1 1.5 >1.5 7.8 8.6 1.7
1984-08-17 St-1 1.4 >1.4 8.6 9.0 8.4 8.0 0.37 0.010
1985-09-17 St-1 1.5 >1.5 7.4 10.0 4.1 0.51 0.023 4.1
1991-09-09 St-1 1.3 >1.3 8.4 14.0 0.330 10.4 10.8 0.84 0.038 32
2023-06-08 St-1 1.4 0.9 7.9 109 0.462 9.7 7.1 0.44 0.042 12
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル

[1] 北海道,1988.湖沼環境保全調査報告書.

[2] 国土交通省.国土数値情報(20万分の1土地分類基本調査「地形分類図」).URL: https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/landclassification/land/l_national_map_20-1.html(2024年10月8日取得)

[3] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)

Gallery