勇払平野と胆振沿岸の湖沼

胆振総合振興局と石狩振興局の一部にまたがるこのエリアは太平洋に面しており、日本で最初にバードサンクチュアリに指定され、野鳥の飛来地として有名なウトナイ沼をはじめ、沿岸の低地(勇払低地)を中心に海跡湖や堰止湖が多数点在している。安平川流域を中心に、植物などが未分解なまま堆積した泥炭と呼ばれる土壌が分布しており[1]、大沼(厚真)や弁天沼などいくつかの湖沼では、Chl-a濃度に対してCOD濃度が高めの特徴が見られる。平野部にありながらも流域の土地利用は森林が主体の湖沼が多く、湖水の栄養度は、一部を除き中栄養~富栄養レベルである。

エリアの湖沼の水質

エリアの地形・気象など

勇払低地は千歳沼付近を頂点とする三角形をしており、千歳沼からウトナイ沼に流れ下る美々川のほか、支笏湖方面の山地・台地や安平・厚真方面の丘陵地等からいくつもの河川が南流している[2]。全域にわたって、樽前火山および有珠山から噴出したテフラ(火山灰などの火山砕屑物)が分布し[2]、降った雨は地中に浸透し、山麓部などから湧水となって湧き出ている[3]。勇払低地には、かつてサロベツ湿原や釧路湿原に匹敵する規模の湿原が広がっていたとされる[4]。ウトナイ沼や弁天沼など泥炭地にある湖沼は、縄文海進以降の陸化過程で取り残された海跡湖である[2]。また、低地の西側には、錦大沼や樽前大沼などの堰止湖がある。本Webサイトに掲載する湖沼のほか、厚真川や苫小牧市西部の小河川などの流域には、低地の縁の台地に面積1 haに満たない小規模な止水域が数多く点在している[4]

胆振地方は北海道の中でも冬は温暖、夏は冷涼な気候である[5]。苫小牧における平均気温(平年値)は、最も暑い8月で20.4℃、最も寒い1月で-3.6℃である[6]。エリア西側のオロフレ地域では、海上からの暖かく湿った空気が山にぶつかって雨雲ができやすく、北海道有数の降水量が多い地域となっている[7]。とくに夏から秋にかけて降水量が多くなり、白老における年降水量(平年値)は1450.0 mmである[6]。雪は少なく、最大積雪深は千歳で30 cm程度、苫小牧で20 cm未満である[6]

エリアマップ
エリアの気象

湖沼の紹介

水質データ更新・UAV撮影画像
UAV撮影画像

[1] 農研機構農業環境変動研究センター,2019.縮尺20万分の1土壌図(2019年6月版).URL: https://soil-inventory.rad.naro.go.jp/download20.html(2021年10月18日取得)

[2] 小疇尚・野上道男・小野有五・平川一臣[編集], 2003, 日本の地形2 北海道, 東京大学出版会, 東京, 384p.

[3] 北海道室蘭土木現業所,2007.美々川自然再生計画書~水環境と地域の共生に向けて~.URL: https://www.iburi.pref.hokkaido.lg.jp/fs/1/9/7/1/4/6/6/_/bibikeikakusyoH1903.pdf(2024年12月24日時点)

[4] 矢部和夫,1997.勇払平野の湿原地域の変遷.財団法人自然保護助成基金1994・1995年度研究助成報告書 北海道の湿原の変遷と現状の解析―湿原の保護をすすめるために―,北海道湿原研究グループ[編集]:79–81.財団法人自然保護助成基金,東京.URL: https://www.pronaturajapan.com/archive/urgent/hokkaidowetland.html(2024年12月15日時点)

[5] 北海道胆振総合振興局, 2023. 胆振の概況2023. URL: https://www.iburi.pref.hokkaido.lg.jp/ts/tss/sesaku/177571.html(2025年3月21日時点)

[6] 気象庁, 過去の気象データ. URL: https://www.data.jma.go.jp/stats/etrn/index.php(2025年3月21日時点)

[7] 室蘭地方気象台, 胆振・日高地方の気象の特徴. URL: https://www.data.jma.go.jp/muroran/shosai/tokuchou.html(2025年3月21日時点)