錦大沼
Lake Nishiki-Onuma
所在地 (Location) | 苫小牧市 (Tomakomai City) |
成因 (Origin) | 堰止湖 (dammed lake) |
湖面標高 (Elevation) | 16.6 m |
湖面積 (Surface area) | 0.11 km2 |
最大水深 (Max. depth) | 9.3 m |
容積 (Volume) | 634 ×103 m3 |
集水域面積 (Watershed area) | 1.37 km2 |

沼の南東側から北西方向を撮影。右が錦大沼。左は錦小沼。沼の周囲は自然林に囲まれており、一帯は錦大沼公園となっている。(2022年8月3日撮影)
錦大沼(ニシキオオヌマ)は、苫小牧市西部、樽前山の南東側山麓に位置する堰止湖である。錦大沼の南側には錦小沼がある。
かつて、この沼を中心とする一帯は苫小牧町大字樽前村字キラウシと呼ばれた所で、苫小牧町の共同放牧場であった。沼はこの字名には属さず、沼名も単に大沼、小沼と呼ばれていた。錦大沼・錦小沼と一般に使われるようになったのは戦後のことである。錦大沼・錦小沼の西方にある樽前大沼は、戦前からそう呼ばれていたため、これに対して、字樽前にありながら錦岡寄りにあったことで、錦だけをとって錦大沼・小沼としたと言われている。
錦大沼は、湖面標高16.6 m、湖面積0.11 km2、最大水深9.3 mの、浅く小さな淡水湖である。沼は堰止湖らしい入り組んだ形をしており、アルファベットのYの字のようである。1984年の湖内3地点での調査では、沼の北東部(St-2)が若干深くなっている [1]。2022年に当所が行った調査によれば、沼の最深部は、St-2から南東方向に100 mほどの所にある。
錦大沼は三角州性低地の縁にあり、集水域にあたる沼の北西側は、標高50~100 m程度の火山麓地(恵庭・樽前火山地)となっている [2]。集水域の上流部は比較的なだらかな地形をしている。
集水域の土地利用は、森林が全体の6割を占めており、ミズナラなどの落葉広葉樹二次林や、カラマツの植林地が見られる [3]。森林に次いで、農用地が3割強を占めており、集水域の上流部に牧草地が広がっている[3]。
これまでに行われた水質調査のうち、St-2の結果と、2022年8月の最深部での調査結果を表に示す。2022年の透明度は2.2 mと、1980・90年代に比べてやや低かった。
2022年のTNとTP濃度はそれぞれ0.16 mg/Lと0.011 mg/Lであり、TNは貧栄養、TPは中栄養レベルにあった。調査回数が少ないため経年変化の傾向は不明であるが、1980・90年代に比べてTN濃度が低くなっているようである。2022年のChl-a濃度は7.5 μg/Lと、過去に比べて若干高めであった。
2022年8月の水質鉛直プロファイルでは、水温は深度1 m付近から6 m付近にかけて低下が見られ、上層で高水温、下層で低水温の成層構造が見られた。溶存酸素は水深2.5 m付近で明瞭なピークが認められ、飽和度150%弱の過飽和となっていた。下層では深度とともに溶存酸素は低下し、7 mより深い層では1%未満のほぼ無酸素となっていた。溶存酸素がやや深い位置でピークを示したのは、植物プランクトンの増殖によるものと思われ、透明度の高い貧栄養湖でよく見られる現象である。
錦大沼周辺は鳥獣保護区に指定されているとともに、北海道自然環境保全指針に基づき「身近な自然地域」に指定されている [4]。錦大沼・錦小沼を含む周辺は「錦大沼公園」として1977年から供用されており、沼を周遊する散策路の他、キャンプ場やパークゴルフ場などが整備されている [5]。冬には氷上でワカサギ釣りが楽しめる。
調査日 | 地点 | 全水深 [m] |
透明度 [m] |
pH | Cl- [mg/L] |
アルカリ度 [meq/L] |
DO [mg/L] |
COD [mg/L] |
TOC [mg/L] |
TN [mg/L] |
TP [mg/L] |
Chl-a [μg/L] |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1984-07-13 | St-2 | 8.5 | 2.9 | 7.2 | 8.0 | 9.1 | 3.5 | 0.44 | 0.012 | |||
1994-09-26 | St-2 | 8.5 | 3.5 | 7.3 | 8.3 | 0.701 | 2.1 | 1.3 | 0.53 | 0.006 | 5.3 | |
1999-09-06 | St-2 | 8.8 | 3.6 | 7.5 | 7.0 | 0.764 | 9.2 | 3.1 | 2.0 | 0.37 | 0.014 | 1.8 |
2022-08-03 | 最深部 | 8.7 | 2.2 | 7.1 | 7.57 | 0.756 | 8.8 | 4.0 | 0.16 | 0.011 | 7.5 |
[1] 北海道,1988.湖沼環境保全調査報告書.
[2] 国土交通省.国土数値情報(20万分の1土地分類基本調査「地形分類図」).URL: https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/landclassification/land/l_national_map_20-1.html(2024年10月8日取得)
[3] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)
[4] 苫小牧市,2024.令和6年度版苫小牧市環境白書(令和5年度実績).URL: https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/shizen/kankyohozen/suishin/kankyohakusho.html(2024年12月27日時点)
[5] 苫小牧市.錦大沼公園[種別:総合公園].URL: https://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/shizen/koen/koenichiran/nishikionuma.html(2024年12月27日時点)