洞爺湖

Lake Toya

所在地 (Location) 洞爺湖町・壮瞥町 (Toyako Town / Sobetsu Town)
成因 (Origin) カルデラ湖 (caldera lake)
湖面標高 (Elevation) 84 m
湖面積 (Surface area) 70.72 km2
最大水深 (Max. depth) 179.7 m
容積 (Volume) 8190000 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 173.21 km2

湖の西側から東方向を撮影。写真右手には有珠山と昭和新山、湖畔には洞爺湖温泉街が見える。中央には火山活動によってできた4つの島がある。(2023年10月4日撮影)

洞爺湖(トウヤコ)は、洞爺湖(トウヤコ)町と壮瞥(ソウベツ)町にまたがり、噴火湾のすぐ近くに位置するほぼ円形に近いカルデラ湖である。湖の中央には、カルデラの溶岩円頂丘である大島、観音島、弁天島、饅頭島の4つの島(総称:中島)が浮かぶ。

「洞爺」の語源は、アイヌ語の「トヤ(湖・の岸)」である。「トヤ(to-ya)」は普通名詞みたいなもので、湖岸ならどこでもそうであっただろう。洞爺湖も他の大きな湖沼と同じように、ただ「to」と呼ばれていたようである。湖岸の名を採って和人が洞爺湖と呼ぶようになったのだろう [1]、と言われている。

洞爺湖は、湖面標高84 m、湖面積70.72 km2、最大水深179.7 m、容積8.19 km3の大きく深い淡水湖である。道内天然湖沼のうち、湖面積は4番目、最大水深は3番目、容積は2番目に大きい。国土地理院の湖沼調査(1968-1969年測量)によれば、中島の南側は湖の南側は水深100 mより浅く、中島を取り囲むように、南東側から北、そして西側にかけて水深170 m以上の水深帯が扇状に広がっている [2]。最深部(湖心)は大島より北に1 km程のところにある。

洞爺湖の集水域面積は約173 km2であり、湖面積の2.4倍程度である。湖の南側から西側にかけては、昭和新山や有珠山となどの火山地に面している [3]。湖の北西側は、岩内・ニセコ台地と呼ばれるローム台地の縁にあたる。湖の北東側は標高400~900 m程度の山地(余市山地)となっている。一方、湖の南東側の集水域は狭く、標高200~300 m程度の丘陵地が集水域界を成している。流入河川として、周囲から小河川が多数入っているが、最も大きいのは北方のソウベツ川である。また、発電用に長流(オサル)川の水が湖に導水されている。流出水は南方から壮瞥川を経由して長流川に合流し、噴火湾へと注がれる。

洞爺湖の水は農業用水、水道用水、発電用水として利用されており、発電用水の利用水量が最も大きい [4]。発電所は2か所あり、湖の南西部で取水され、噴火湾に放流される虻田発電所と、湖の南東部で取水され、壮瞥川に放流される壮瞥発電所である。

集水域の土地利用は、森林が全体の5割以上を占める。田とその他の農用地を合わせた農地が3.6%となっており、湖沿岸の所々に畑地、牧草地、水田が見られる [5]。また、洞爺町の市街地(湖北部)と洞爺湖温泉街(湖南部)を中心に建物用地が見られる。

洞爺湖は、類型指定湖沼であり、環境基準は、湖沼のAAおよびⅠ類型(リンのみ)が指定されている。かつて、洞爺湖では、1939年に、新たな発電の為の貯水池としての役割を果たすため、酸性水である幌別鉱山の水を含んだ長流(オサル)川の水の導水を開始した。その20年後の1960年からpHが7を下回り始め、それから急激に酸性化した経緯をもつ。1972年には幌別鉱山の廃水の中和処理が施され(1973年に幌別鉱山は閉山)、洞爺湖の水のpHは回復に向かっている [6]。公共用水域の調査開始の1973年当初は、pHは6を下回っていた。その後、徐々に上がり始め、1990年後半になって、ようやくpHが7を越えることが多くなった。

過去に行われた水質調査のうちSt-1(水深約176.5 m [2])の結果と、2023年6月に実施した最深部の調査結果を表に示した。2023年の透明度は13 mで、1980・90年代から大きな変化は見られていない。2023年のCODは1.1 mg/Lであった。北海道庁が実施している公共用水域のモニタリングデータ(時系列グラフ)によれば、洞爺湖のCOD(75%値)はpHが中性となった1990年代後半には環境基準(1 mg/L以下)を超えていたが、その後徐々に低下し、近年はほぼ達成されている状況にある。なお、洞爺湖町では公共下水道が2か所整備され、それぞれ1987年と1994年に供用が開始されている [7]。湖畔温泉街からの温泉排水は、現在では湖に流入していない [6]

2023年のTNとTP濃度はそれぞれ0.21及び0.003 mg/Lと、TNは中栄養、TPは貧栄養レベルにあった。時系列グラフによれば、TN、TPとも明確な経年変化は見られていない。TPは時折高い濃度が検出されるものの、環境基準(0.005 mg/L以下)は概ね達成されている。TN濃度は0.2~0.3 mg/L程度であり、0.1 mg/L前後を示す道内の他の貧栄養湖(支笏湖、摩周湖、屈斜路湖、倶多楽湖など)に比べて高いのが特徴的である。これについて、今田は、流入河川や地下水による影響の可能性を指摘している [6]。一方、Chl-a濃度は2023年に1 μg/L未満であり、1970~90年代と大きな変化は見られていない。時系列グラフでは、過去には1 μg/L以上の値が見られていたが、2010年以降は概ね1 μg/L未満で推移している。

2023年10月の水質鉛直プロファイルでは、水温は水深8~25 m付近で急激な低下(水温躍層)が見られ、上層で高水温、下層で低水温の成層構造が見られた。溶存酸素は水深15 m付近で飽和度120%超のピークをとり、その後深度とともに徐々に低下していた。溶存酸素は50 m以深は比較的安定していたが、160 mを越えた辺りで急激に低下し、底部では約10%となっていた。表層より少し深い中層域で溶存酸素がピークをとるのは貧栄養湖に見られる特徴であり、中層域での植物プランクトンの増殖によるものと思われる。一方、電気伝導度(EC)は水温とは逆に、下層で高い値を示していた。

洞爺湖の湖面と集水域の一部は支笏洞爺国立公園に指定されている。湖の南岸には洞爺湖温泉や壮瞥温泉などがあり、道内有数の観光地となっている。遊覧船やカヌー、釣りなどを楽しむことができる。また、洞爺湖温泉街には、火山活動を含む洞爺湖周辺の自然について学ぶことができる洞爺湖ビジターセンター・火山科学館があり、2009年に日本で始めて「世界ジオパーク」に認定された [8]。洞爺湖えは漁業が行われており、ワカサギやヒメマスやなどの漁獲がある [9]

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1979-09-28 St-1 7.0 6.5 8.8 0.92
1985-06-24 St-1 13.0 7.4 16.0 9.9 <0.003 0.38
1991-07-24 St-1 10.0 6.7 12.0 0.198 8.5 0.7 1.5 0.22 <0.003 0.44
2023-06-19 最深部 178.0 13.0 7.5 10.7 0.322 12.1 1.1 0.21 0.003 0.80
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル
水質の経年変化

[1] 北海道環境生活部アイヌ政策推進局アイヌ政策課, 2021, アイヌ語地名リスト, URL: https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/ass/new_timeilist.html(2024年12月27日時点)

[2] 国土地理院, 調査実施湖沼一覧, URL: https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/koshouchousa-list.html(2024年10月27日時点)

[3] 国土交通省, 国土数値情報(20万分の1土地分類基本調査「地形分類図」), URL: https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/landclassification/land/l_national_map_20-1.html(2024年10月8日取得)

[4] 北海道, 2005, 長流川水系河川整備計画, URL: https://www.iburi.pref.hokkaido.lg.jp/kk/mkk/kasenseibikeikaku.html(2024年12月27日時点)

[5] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)

[6] 今田和史, 2000, 支笏湖の水質環境と漁業の変遷, 国立環境研究所研究報告 NO.153, 湖沼環境の変遷と保全に向けた展望, p.83-97, URL: https://www.nies.go.jp/kanko/kenkyu/setsumei/r-153-2000.html(2024年12月27日時点)

[7] 北海道洞爺湖町, 2011, 洞爺湖町下水道中期ビジョン, URL: http://www.town.toyako.hokkaido.jp/file/contents/150/653/gesui_vision.pdf(2024年12月27日時点)

[8] 洞爺湖町, 2024, 洞爺湖町の概要 令和6年度版, URL: http://www.town.toyako.hokkaido.jp/file/contents/60/3585/touyakotyounogaiyou06.pdf(2024年12月27日時点)

[9] 北海道立総合研究機構さけます・内水面水産試験場, 北海道の内水面漁業/養殖業統計(令和5年), URL: https://www.hro.or.jp/fisheries/research/hatch/inland-water-surface-information/v9i4ge00000007ap.html(2024年12月27日時点)