東雲湖

Lake Shinonome

所在地 (Location) 上士幌町 (Kamishihoro Town)
成因 (Origin) 火山湖 (volcanic lake)
湖面標高 (Elevation) 819 m
湖面積 (Surface area) 0.05 km2
最大水深 (Max. depth) 2.0 m
容積 (Volume) 不明 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 0.85 km2

湖の西部から東方向を撮影。然別湖の東側に位置し、徒歩でしかアクセスすることができない。(2022年9月3日撮影)

東雲湖(シノノメコ)は、上士幌町の南西部、然別湖の東側に位置している。成因について、5万分の1地質図幅説明書 [1]には、然別溶岩円頂丘群のひとつである天望山円頂丘の東側にある爆裂火口との記載がある。

東雲湖は別名「東小沼」と呼ばれる。東雲湖の語源は不明である。

東雲湖は湖面標高819 m、湖面積0.05 km2の小さな淡水湖である。然別湖の南西側に位置する駒止湖と同程度の湖面積を有するが、駒止湖(最大水深5.0 m)に比べて浅く、2023年8月の調査では湖心でも1.0 mしかなかった。

東雲湖とその集水域は、然別湖の南東部に流入する12の沢川の集水域に含まれている。地形図 [2] によれば、流入河川はなく、湖の西側に流出河川(12の沢川)が1本あり、然別湖に通じている。湖の周囲は比較的なだらかな地形となっている。

集水域の土地利用は、森林が全体の約65%を占め、アカエゾマツ群集やダケカンバ-エゾマツ群落など亜高山帯の自然植生が広がっている [3]。森林に次ぎ、荒地が約29%あり、その大部分はササ群落である [3]。湖の西側集水域の一部に、風穴植生と呼ばれるこの地域に特徴的な植生が分布する [3]。風穴(ふうけつ)とは、夏でも冷たい風を吹き出す穴のことで、然別湖周辺の山々は日本最大級の広さを誇る風穴地帯となっている [4]。風穴地帯の周囲には、湿った冷たい環境が広がっているため、ミズゴケ類やアカエゾマツ、本来であればより標高の高い場所でのみ見ることのできるハイマツの生育を可能にしている [5]。東雲湖の湖岸部にはヨシなどの湿原植生が湖面の一部を覆うように広がっている [3]

東雲湖では、これまで概況調査しか行われておらず、水質データはなかった。2023年8月の調査では湖面上に水生植物が繁茂していたため、それらを避けて予定していた地点と異なる場所で採水した。採水地点は1.0 mと浅く、透明度は全透(底まで見える状態)であった。CODは8.4 mg/Lと、駒止湖(1.8 mg/L)の4倍以上高かった。湖水は淡褐色を呈していたことから、腐植物質の影響を受けていると考えられる。

TNとTP濃度はそれぞれ0.36 mg/Lと0.010 mg/Lであり、中栄養レベルにあった。Chl-a濃度は7.0 μg/Lであり、駒止湖(0.40 μg/L)に比べて高かった。東雲湖は、同じ然別湖周辺の山地湖沼である駒止湖に比べて栄養レベルが高く、藻類生産がより盛んに行われている湖沼であると言える。集水域に人為的な汚染源が無いことから、自然的なプロセスとしての富栄養化と浅水化(湿生遷移)とが徐々に進行しているものと思われる。

東雲湖の湖面とその集水域は大雪山国立公園に指定されている。東雲湖には、然別湖の流出口付近から然別湖の湖岸を経由してアクセスする登山道が整備されている [6]

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
2023-08-21 湖心 1.0 >1.0 8.0 0.99 0.016 7.2 8.4 0.36 0.010 7.0
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル

[1] 山岸宏光・安藤重幸,1982.5万分の1地質図幅説明書(然別湖).北海道立地下資源調査所,札幌.

[2] 国土地理院,2013.地理院タイル(標準地図).URL: https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html(2024年10月11日時点)

[3] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)

[4] とかち鹿追ジオパーク推進協議会,2020.風穴.URL: https://www.shikaoi-story.jp/highlight/windcave/(2024年11月22日時点)

[5] 鹿追町・鹿追町教育委員会.ジオサイト:東ヌプカウシヌプリ(風穴)(現地案内板;2022年9月1日確認)

[6] 林野庁十勝西部森林管理署東大雪支署・然別自然休養林保護管理協議会.白雲山登山口(然別自然休養林)(現地案内板;2022年9月1日確認)