オンネトー

Lake Onneto

所在地 (Location) 足寄町 (Ashoro Town)
成因 (Origin) 堰止湖 (dammed lake)
湖面標高 (Elevation) 639 m
湖面積 (Surface area) 0.23 km2
最大水深 (Max. depth) 9.8 m
容積 (Volume) 700 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 4.50 km2

湖の南部から北方向を撮影。湖の周囲は原生林に囲まれている。近くには雌阿寒岳と阿寒富士がある。写真中央の遠くには阿寒湖の雄阿寒岳が見える。湖の右に見える白い場所はオンネトー国設野営場。(2023年8月23日撮影)

オンネトーは、足寄町東部、雌阿寒(メアカン)岳の西麓に位置する。その成因は、活火山雌阿寒岳の噴出物によって堰き止められて生じたと言われている [1]

オンネトーの語源は諸説ある。アイヌ語で「トー」は湖沼を意味し、「オンネ」は「親」あるいは「大」の意で、本湖の西南方2 kmの位置にあるポントー(「子」または「小」沼の意)と呼ばれる極小さな沼に対する呼称とする説 [1] や、「年老いたる湖」の意とする説 [2] がある。

オンネトーは湖面標高639 m、湖面積0.23 km2、最大水深9.8 mの淡水湖である。羽田・千葉 [1] の等深図によれば、湖の概ね中心に最深部がある。主な流入河川は2河川で、うち1河川は北部にある錦沼と繋がっている [3]。流出水は、螺湾(ラワン)川に注いでいる。

集水域の土地利用は、森林が全体の7割を占め、アカエゾマツ群集を中心とした自然植生が広がる [4]。集水域の東側の荒地の多くは、標高1000 m以上の高山帯自然植生域である [4]

2023年8月の調査は最深部と思われる地点で採水した。1970年代から90年代に行った調査では透明度はいずれも全透(>6.5 m~>9.5 m)だったが、2023年には5.1 mと過去に比べ低かった。

オンネトーは、酸性水の流入によって湖水のpHが低く、弱酸性を呈し、アルカリ度も0.05 meq/L以下と低いのが特徴的とされていた [5]。しかし、2023年には、湖水のpHは6.9と概ね中性を示し、アルカリ度は1990年代に比べて1桁高くなっていた。人為的な介入なしに湖水のpHが長期的に変動する現象はオンネトーの特徴の一つであり、数年という短い時間でpH5.2程度の酸性からpH 8.2の弱アルカリ性まで大きく変化したことが報告されている [3]。pHの変動要因として、流入河川からの酸性物質・アルカリ性物質の供給量の変化が指摘されている [6]

Chl-a濃度は、過去の調査では0.1 μg/L前後で推移していたが、2023年には1.6 μg/Lと一桁高い値を示した。湖水のpHが中性へと変わり、藻類が増殖しやすくなった可能性が考えられる。藻類の増殖は透明度の低下やCODの上昇にも影響していると思われる。

2023年のTNとTP濃度はそれぞれ0.27と0.007 mg/Lで、TNが中栄養レベル、TPは貧栄養レベルにあった。調査回数が少ないため経年変化の傾向は不明であるが、1990年代に比べて栄養塩濃度に大きな変化は見られていない。TPに比べてTNの栄養レベルが高い特徴は、雄阿寒岳山麓にある次郎湖や瓢箪沼とは異なる。

この湖は、通常はコバルトブルーの鮮やかな青色であり、風向きなどによっては、湖面の彩りが変化することから五色沼とも呼ばれている。この独特な湖色は、透明度の高い湖水の色(青色)と、湖底に堆積した黄色い泥の色が混ざり合うことでつくりだされており、水深や太陽光の強さで湖色が変わったように見えると推察されている [3]。また、オンネトー湖底の黄色い泥は、鉄イオンやアルミニウムイオンなどを豊富に含む錦沼の湖水がオンネトーに流れ込み、これらのイオンが酸化・沈殿したものと言われている [3]

オンネトーの湖面とその集水域は阿寒摩周国立公園に含まれている。湖畔西側には展望デッキがあり、雌阿寒岳と阿寒富士を背景としたオンネトーを一望できる [7]。湖畔周辺には散策路が整備され、オンネトー湯の滝、雌阿寒温泉や登山の基点にもなる国営野営場がある [7]

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1979-07-23 St-2 8.0 >8.0 3.9 7.8 0.95 0.10
1983-08-22 St-2 7.5 >7.5 5.5 25.1 9.3 <0.5 0.26 0.003 0.04
1985-10-23 St-2 9.5 >9.5 5.4 30.4 10.7 0.06
1991-06-25 St-2 6.5 >6.5 6.2 38.9 0.050 8.8 1.0 0.29 0.004 0.13
1993-06-22 St-2 7.1 >7.1 5.5 23.0 0.024 10.0 0.8 0.31 <0.003 0.05
2023-08-23 湖心 10.7 5.1 6.9 17.4 0.475 7.5 2.6 0.27 0.007 1.6
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル

[1] 羽田良禾・千葉卓夫,1937.阿寒温根沼の湖沼調査.陸水学雑誌,7:113–120_1.

[2] 「角川日本地名大辞典」編纂委員会(編),1987.角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻.角川書店,東京.

[3] 尾山洋一,2017.阿寒湖沼群の水環境.釧路叢書 第37巻 The Great Nature of Akan 阿寒の大自然誌,佐藤謙・日野修次・和田恵治・若菜勇[監修]:29–42.釧路市教育委員会,釧路.

[4] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)

[5] 北海道環境科学研究センター, 2005.北海道の湖沼 改訂版. 北海道環境科学研究センター, 札幌. 314p.

[6] 尾山洋一・山田浩之・若菜勇・高橋正明,2014.酸性湖沼オンネトーの中性化について.陸水学雑誌,76:45–50.https://doi.org/10.3739/rikusui.76.45

[7] NPO法人あしょろ観光協会.オンネトー.URL: https://www.town.ashoro.hokkaido.jp/kanko/spot/onneto_area/spot-13.html(2024年11月15日時点)