火散布沼

Lake Hichirippu

所在地 (Location) 浜中町 (Hamanaka Town)
成因 (Origin) 海跡湖 (lagoon lake)
湖面標高 (Elevation) 0 m
湖面積 (Surface area) 3.78 km2
最大水深 (Max. depth) 5.7 m
容積 (Volume) 3530 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 20.64 km2

火散布沼(ヒチリップヌマ)は、浜中町南部にあり、太平洋に面した厚岸霧多布昆布森国定公園内にある。標高30~60 mの海岸段丘で囲まれ、南東端が砂浜提で塞がれている海跡湖である。

「散布」の語源は、「チウルプ(chiurupu アサリ貝)」から来た名だというが、はっきりしていない。

火散布沼は、湖面標高0 m、最大水深5.7 m、湖面積3.78 km2、集水域面積20.64 km2の汽水湖である。沼の大部分は水深が1 m未満と浅い。

周囲は湿地帯になっており、その中に小さな流入河川が存在している。流出水は湖の南東端から長さ1.5 kmの水路を経て、海に注いでいる。

集水域の土地利用は、山林や湿原などの自然地の割合が高く、一部市街地が存在している。

火散布沼中央付近のSt-2と南岸における表層水の水質データを表に示した。火散布沼は浅い湖沼であり、透明度は全透(底まで見えている状態)のときが多い。塩化物イオン濃度は、16600~19300 mg/L と非常に高く、1991年8月は海水の濃度レベルとほぼ同じであった。そのため、湖内では、アサリなどの海産物の漁獲がある。Chl-a濃度は0.3~4.6 μg/Lとそれ程大きくなかった。

2017年の南岸の表層水によれば、TN濃度は貧栄養レベル、TP濃度は中栄養~富栄養レベルであった。

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1979-07-18 St-2 0.5 >0.5 8.1 10.6 0.30
1982-09-07 St-2 1.0 >1.0 8.6 17700 8.9 3.5 0.17 0.025 0.90
1985-09-18 St-2 0.8 >0.8 8.2 16600 10.1 0.60
1991-08-28 St-2 1.3 >1.3 8.4 19300 2.05 9.0 2.6 0.65 0.269 1.5
2017-04-25 [1][2] 南岸 1.9 >1.9 8.1 13.2 0.11 0.017 4.6
2017-05-18 [1][2] 南岸 1.8 >1.8 8.1 10.9 0.11 0.023 0.40
2017-05-30 [1][2] 南岸 1.8 >1.8 8.1 10.1
2017-06-08 [1][2] 南岸 2.2 >2.2 8.0 10.3 0.14 0.030 1.1
2017-06-19 [1][2] 南岸 2.1 >2.1 8.0 10.1
2017-06-28 [1][2] 南岸 2.0 >2.0 8.1 10.0 0.12 0.025 0.60
2017-08-29 [1][2] 南岸 1.9 >1.9 8.2 8.0 0.13 0.030 2.7
2017-11-29 [1][2] 南岸 2.0 >2.0 8.0 9.4 0.18 0.032 1.1
調査地点図
栄養度の推移(表層)

[1] 鈴木啓明・木塚俊和・真野修一・卜部浩一, 2018, 北海道太平洋側の汽水域で一次生産が大きい条件は何か, 日本陸水学会第83回大会講演要旨集, P-10, 2018年10月7日, 岡山大学.

[2] 環境科学研究センター, さけます・内水面水産試験場, 地質研究所, 平成29年度~令和2年度, 道東サケの漁獲回復を実現する「天然潟湖」を活用した新たなサケ放流体系の確立(北海道立総合研究機構 重点研究)