シラルトロ湖
Lake Shirarutoro
所在地 (Location) | 標茶町 (Shibecha Town) |
成因 (Origin) | 海跡湖 (lagoon lake) |
湖面標高 (Elevation) | 8 m |
湖面積 (Surface area) | 1.72 km2 |
最大水深 (Max. depth) | 3.5 m |
容積 (Volume) | 2670 ×103 m3 |
集水域面積 (Watershed area) | 70.28 km2 |

湖の北部から南方向を撮影。写真右下の河川はシラルトロ湖最大の流入河川であるシラルトロエトロ川。流出部は写真中央奥にあり、釧路川につながる。写真右奥には釧路湿原が広がっている。(2022年10月12日撮影)
シラルトロ湖は標茶町南部にあり、釧路湿原北東部、塘路湖の北方に位置する淡水湖である。「北海道蝦夷語地名解」では「シラルトロ、岩磯の間(を流れる小川)」の意とする[1]。
海から20 km以上内陸にあるものの、湖面標高は約8 mと低く、成因は海跡湖である。湖面積は1.72 km2であり、釧路湿原内の湖沼では塘路湖に次ぎ2番目に大きい。国土地理院の湖沼調査(2000年測量)によれば最深部は湖北側にあり、最大水深は3.5 mである [2]。アルファベットの「L」の字を左右反転させたような形状をしており、湖の西側は湿原に、東側と南側は標高100 m前後の山地に面している。北方からシラルトロエトロ川が流入し、湖水は西方の釧路川に流出する。シラルトロ湖の水位が下がっている時にまとまった雨が降ると、釧路川から逆流が生じる [3]。
シラルトロ湖の集水域の土地利用は、森林が全体の約75%を占める。また、荒地が約18%と比較的大きく、シラルトロエトロ川をはじめとする流入河川沿いに湿原植生が広がっている [4]。シラルトロエトロ川中流域を中心に農用地が分布しているが、集水域全体の4%程度であり、塘路湖(約26%)に比べるとわずかである。
湖水のCODは10 mg/L前後の高い値で推移しており、湿地帯や泥炭地特有の腐植物質の影響を受けているものと考えられる。2022年10月の調査時は、湖水は淡褐色を呈していた。また、湖岸付近の水面はヒシで覆われていた。この時のSt-2表層ではChl-aが19 μg/Lと、1996年9月に記録した22 μg/Lに次ぐ高い値を示した。St-2は水深が2 m程度で、水質は鉛直方向に概ね混合していたが、底泥付近ではDOの低下が見られた。
過去からの栄養度の推移をみると、TPは1982年に0.009 mg/Lと貧栄養レベルにあったが、1990年代以降は0.06~0.1 mg/L程度と富栄養レベルにある。TNについては明確な変化傾向はなく、0.3~0.6 mg/Lの中栄養から富栄養レベルにある。
塩化物イオン濃度は1985年以降40 mg/L前後と、隣の塘路湖に比べ1オーダー高く推移している。
シラルトロ湖の湖面及び集水域の一部は釧路湿原国立公園に指定されているほか、湖面はラムサール条約指定区域となっている。シラルトロ湖では近年、浮葉植物であるヒシの分布域拡大が報告されている [5]。
調査日 | 地点 | 全水深 [m] |
透明度 [m] |
pH | Cl- [mg/L] |
アルカリ度 [meq/L] |
DO [mg/L] |
COD [mg/L] |
TOC [mg/L] |
TN [mg/L] |
TP [mg/L] |
Chl-a [μg/L] |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1979-06-28 | St-2 | 1.2 | 7.9 | 8.6 | 1.19 | 8.7 | ||||||
1982-07-27 | St-2 | 1.5 | 1.0 | 7.4 | 15.6 | 7.8 | 11 | 0.53 | 0.009 | 5.2 | ||
1985-09-19 | St-2 | 1.5 | 7.2 | 45.5 | 6.9 | 9.6 | ||||||
1991-09-18 | St-2 | 1.5 | >1.5 | 7.2 | 44.5 | 0.614 | 8.6 | 9.5 | 4.4 | 0.62 | 0.070 | 9.7 |
1996-09-03 | St-2 | 1.9 | 1.1 | 7.7 | 44.2 | 0.627 | 9.6 | 9.4 | 4.4 | 0.63 | 0.084 | 22 |
2000-06-05 | St-2 | 2.1 | 1.5 | 7.6 | 37 | 0.524 | 9.3 | 9 | 6.3 | 0.47 | 0.062 | 7.0 |
2000-08-08 | St-2 | 1.7 | 1.0 | 7.3 | 42 | 0.650 | 8.3 | 10 | 8.1 | 0.51 | 0.087 | 9.2 |
2000-10-24 | St-2 | 1.4 | >1.4 | 8.2 | 38 | 0.606 | 12 | 8.9 | 7.1 | 0.40 | 0.069 | 8.0 |
2001-05-09 | St-2 | 1.8 | >1.8 | 8.0 | 56 | 0.533 | 11 | 7.1 | 0.35 | 0.069 | 8.8 | |
2001-08-08 | St-2 | 1.1 | >1.1 | 8.5 | 41 | 0.666 | 8.7 | 9.6 | 7.8 | 0.50 | 0.100 | 12 |
2001-10-22 | St-2 | 1.5 | >1.5 | 7.0 | 40 | 0.540 | 11 | 10 | 5.8 | 0.42 | 0.073 | 8.7 |
2022-10-12 | St-2 | 2.2 | 1.1 | 7.9 | 42.3 | 0.556 | 9.7 | 8.9 | 0.35 | 0.080 | 19 |
[1] 「角川日本地名大辞典」編纂委員会(編),1987.角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻.角川書店,東京.
[2] 国土地理院,2017.湖沼データ(シラルトロ沼).URL: https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/koshouchousa-list.html(2024年9月17日時点)
[3] 五十嵐聖貴・三上英敏・上野洋一・丹羽忍・中川惠・高村典子,2009.釧路湿原シラルトロ湖におけるヒシとプランクトンの分布状況.日本陸水学会第74回大会大分大会講演要旨集
[4] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2024年9月18日時点)
[5] 尾山洋一・松下文経・福島武彦,2017.衛星画像から観測した国内6湖沼におけるヒシ属Trapa L. の長期分布変化.保全生態学研究,22:171–185.