瓢箪沼(釧路)

Lake Hyotan

所在地 (Location) 釧路市(阿寒地区) (Kushiro City)
成因 (Origin) 堰止湖 (dammed lake)
湖面標高 (Elevation) 444 m
湖面積 (Surface area) 0.05 km2
最大水深 (Max. depth) 4.5 m
容積 (Volume) 75 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 18.46 km2

沼の西側から東方向を撮影。沼の北側(写真左側)の沿岸には草原が広がっている。沼の西側(写真下側)は浅く、湖底が見え、湖底の一部は付着藻類のためか緑がかっている(2022年8月22日撮影)

瓢箪沼(ヒョウタンヌマ)は、雄阿寒岳の南東の麓に位置する堰止湖である。瓢箪沼の南西には小さな沼が、また道路を挟んだ北東には瓢箪沼と同規模の湿地がある。およそ13,000年前までの雄阿寒岳の火山活動に伴う溶岩によって「旧阿寒湖」の湖水が堰きとめられ、その後徐々に埋めたてられるも、瓢箪沼を中心とした一連の湿地帯が現在まで残ったと推測されている [1]

湖の形状が瓢箪の形に似ていることから、その名がつけられたと考えられる。

瓢箪沼は湖面標高444 m、湖面積0.05 km2、最大水深4.5 m、集水域面積18.46 km2の浅くて小さい淡水湖である。湖面積に対して集水域面積が大きく、集水域の影響を受けやすい沼といえる。

集水域の北西端には雄阿寒岳があり、また、東側は釧路川流域との分水嶺となっている。主な流入河川として、北東の湿地を貫流して瓢箪沼の北側に注ぐハンラコロシュ川がある。流出河川は沼南方の清流川であり、いくつかの支流を加えながら流下し、国道240号線付近で阿寒川に合流する。

集水域の土地利用は、森林が全体の約94%を占め、ダケカンバ-エゾマツ群落を中心とした自然植生が広がる [2]。沼北東の湿地はハルニレ群落から成る渓畔林となっている [2]

2022年8月の調査は、概ね最深部と思われるSt-2で採水した。1980年代と90年代に行った調査では透明度は全透(>4.5 m、>3.7 m)だったが、2022年8月は2.8 mと過去に比べ低かった。

CODは3 mg/L前後と阿寒湖沼群の中で比較的高く、また、湖水はわずかに褐色を呈することから、腐植物質の影響を受けていると思われる。

2022年のTNとTP濃度はそれぞれ0.09と0.019 mg/Lで、TNが貧栄養レベルであるのに対し、TPは中栄養レベルであった。TNに比べてTPの栄養レベルが高い特徴は、同じ雄阿寒岳山麓にある次郎湖に共通しており興味深い。一方、Chl-a濃度は7.3 μg/Lと、過去の測定値に比べ高く、また、2022・2023年に調査した阿寒湖沼群の中で最も高い値を記録した。この時、pHと溶存酸素(DO)が比較的高かったのは、藻類の増殖の影響によるものと思われる。集水域に人為的な汚染源はないが、湖面積に対する集水域面積が大きいことや、浅い湖であることなどから、今後、自然的なプロセスとしての富栄養化が徐々に進行していく可能性がある。

2022年8月の水質鉛直プロファイルでは、水深0.4~0.5 m付近で水温の大きな低下が見られ、上層で高く下層で低い温度成層が観察された。溶存酸素は表層から水深1 m付近まで130%弱と過飽和となっていた。水深1 m以深では、深くなるにつれて溶存酸素は低下したが、最深部でも100%以上あった。水温躍層の下部でも藻類が活発に増殖しているものと推察される。

瓢箪沼の水面とその集水域は阿寒摩周国立公園に含まれている。

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1983-09-05 St-2 4.5 >4.5 7.5 9.6 3.3 0.05 0.012 0.80
1990-08-21 St-2 3.7 >3.7 6.9 2.3 9.2 3.2 0.19 0.013 3.8
2022-08-22 St-2 4.3 2.8 8.2 1.72 0.380 12.5 2.6 0.09 0.019 7.3
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル

[1] 和田恵治,2017.後カルデラ火山、雄阿寒岳と阿寒湖沼群の成り立ち.釧路叢書 第37巻 The Great Nature of Akan 阿寒の大自然誌,佐藤謙・日野修次・和田恵治・若菜勇[監修]:17–28.釧路市教育委員会,釧路.

[2] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)