太郎湖
Lake Taro
所在地 (Location) | 釧路市(阿寒地区) (Kushiro City) |
成因 (Origin) | 堰止湖 (dammed lake) |
湖面標高 (Elevation) | 412 m |
湖面積 (Surface area) | 0.03 km2 |
最大水深 (Max. depth) | 8.7 m |
容積 (Volume) | 17 ×103 m3 |
集水域面積 (Watershed area) | 1.38 km2 |

中央が太郎湖(左は次郎湖、右は阿寒湖の東端)。湖の北西から南東方向を撮影。阿寒湖からの流出水は、この太郎湖を経て阿寒川となる。(2023年10月26日撮影)
太郎湖(タロウコ)は、阿寒湖の流出水量を調整している湖口のすぐ下流側にある小さな堰止湖である。およそ13,000年前までの雄阿寒岳の火山活動によって、雄阿寒岳の南側の火口壁が崩壊して岩屑なだれが発生した。太郎湖や次郎湖などの湖沼は、この時形成された多数の流れ山の凹地に形成されたと考えられている [1]。
太郎湖は湖面標高412 m、湖面積0.03 km2、最大水深8.7 mの淡水湖である。湖の西側(阿寒湖側)は比較的浅く、上空から湖底が見える(上写真)。かつては阿寒湖と独立した水域であったが、現在は排水溝で連絡され阿寒湖の水が流入してくる [2]。流出河川は南方に1か所あり、200 m程度流下後、国道240号線の滝見橋付近で阿寒川に合流する。
集水域の土地利用は、森林が全体の約9割を占め、その多くはダケカンバ-エゾマツ群落やアカエゾマツ群集などの自然植生である [3]。
太郎湖の湖水水質は、阿寒湖の流出水の影響を受ける。1991年6月の透明度は、6.0 m以上と比較的良好であった。この時は、まだ夏になっていないときであり、阿寒湖もアオコは発生しておらず、比較的透明度が高かったと思われる。2022年8月の透明度は5.0 mであった。
2022年のTNとTP濃度はそれぞれ0.13と0.013 mg/Lで、それぞれ貧栄養レベルと中栄養レベルにあった。これらの濃度は、2022年7月における阿寒湖の湖心表層水(TN 0.13 mg/L、TP 0.015 mg/L)とほぼ同じであった。太郎湖での水質測定データは少ないため過去からの変遷は不明であるが、阿寒湖の水質を反映してか、TN濃度は1990年代に比べて低下しているようである。2022年のChl-a濃度は1.3 μg/Lであった。
2022年8月の水質鉛直プロファイルでは、表層から底層にかけて水温が2℃程度の低下が見られたが、水温が急激に低下する水温躍層は確認されなかった。水温と同様に溶存酸素も深くなるにつれて低下していたが、最深部でも飽和度70%程度であった。また、表層の溶存酸素は80%弱と比較的低かった。
太郎湖の湖面とその集水域は阿寒摩周国立公園に含まれている。太郎湖の北側に敷設された登山道は、阿寒湖の流出口(滝口)から雄阿寒岳頂上を結ぶ雄阿寒岳登山コースの一部となっている [4]。
調査日 | 地点 | 全水深 [m] |
透明度 [m] |
pH | Cl- [mg/L] |
アルカリ度 [meq/L] |
DO [mg/L] |
COD [mg/L] |
TOC [mg/L] |
TN [mg/L] |
TP [mg/L] |
Chl-a [μg/L] |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1991-06-26 | St-2 | 6.0 | >6.0 | 7.6 | 12.3 | 0.939 | 1.4 | 0.9 | 0.22 | 0.016 | 1.2 | |
2022-08-23 | 湖心 | 7.0 | 5.0 | 7.7 | 26.3 | 0.928 | 7.1 | 1.8 | 0.13 | 0.013 | 1.3 |
[1] 和田恵治,2017.後カルデラ火山、雄阿寒岳と阿寒湖沼群の成り立ち.釧路叢書 第37巻 The Great Nature of Akan 阿寒の大自然誌,佐藤謙・日野修次・和田恵治・若菜勇[監修]:17–28.釧路市教育委員会,釧路.
[2] 元田茂,1950.北海道湖沼誌.水産孵化場試験報告,5:1–96.
[3] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)
[4] 環境省.国立公園に、行ってみよう!阿寒摩周国立公園 雄阿寒岳登山コース.URL: https://www.env.go.jp/nature/nationalparks/list/akan-mashu/course/02/(2024年10月28日時点)