風蓮湖

Lake Furen

所在地 (Location) 根室市・別海町 (Nemuro City / Betsukai Town)
成因 (Origin) 海跡湖 (lagoon lake)
湖面標高 (Elevation) 0 m
湖面積 (Surface area) 64.17 km2
最大水深 (Max. depth) 13.0 m
容積 (Volume) 56380 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 1042.63 km2

湖の西側から東方向を撮影。風蓮湖最大の流入河川である風蓮川が写真左側から流入する。風蓮川の流域には酪農地が広がるが、風蓮湖の周囲には森林が残されている。(2023年10月24日撮影)

風蓮湖(フウレンコ)は、根室市と別海町にまたがり、根室湾に面した海跡湖である。風蓮湖は、南東からのびた7.5 kmの砂州(春国岱)と、北西からのびた砂州(走古丹)で海と隔てられており、中央部と南東端の2か所の湖口がある。

「風蓮」の語源は、アイヌ語の「フレペッ(赤い・川)」とされている [1]。風蓮湖に流入する風蓮川の下流部は湿地帯に涵養されており、いわゆる褐色を呈した「谷地水」であることに由来すると思われる。

風蓮湖は湖面標高0 m、湖面積64.17 km2、最大水深13.0 m、集水域面積1042.63 km2の汽水湖である。道内天然湖沼のうち、湖面積は5番目(汽水湖としては2番目)、集水域面積は2番目(汽水湖としては1番目)に大きい。国土地理院の湖沼調査(1979・81年測量)によれば、湖の大部分は水深2 m未満と浅く、最深部は中央部の湖口付近にある [2]

最大流入河川は、南西から流入する風蓮川である。また、その他の主な流入河川として、風蓮川より北部に流入するヤウシュベツ川とポンヤウシュベツ川、それより南方からは、別当賀川、第二トウバイ川そして第一トウバイ川がある。

集水域の土地利用は、農用地が全体のおよそ半分を占めており、酪農が大規模に展開されている。風蓮湖流域の乳牛飼育頭数を調査した結果、2012年時点で約63000頭であった[3]。農用地に次ぎ、森林が全体のおよそ3割を占める。流入河川は蛇行して流れ、河畔域にヨシなどの湿原(土地利用図では「荒地」に分類)やハンノキなどの沼沢林が分布するのが特徴的である [4]

風蓮湖は類型指定湖沼であり、環境基準は海域のA類型が指定されている。

中央の湖口に近いSt-2では比較的塩分濃度が高く、風蓮川やヤウシュベツ川が流入する北部湖盆に位置するSt-1ではやや塩分濃度が低くなる傾向がある。風蓮湖ではさまざまな塩分濃度の環境が出現し、多種多様な魚介類が棲息している。風蓮湖では、ホッキ貝やアサリの他、ニシン、コマイ、ワカサギなどが漁獲されている。氷の下に小型の定置網を仕掛けてコマイなどを獲る氷下待ち網漁は別海町歴史文化遺産に指定されている[5]

St-2における栄養度は、2013~2014年の平均値として、TNで中栄養、TPでは富栄養レベルにあった。St-1とSt-2を比べると、風蓮川やヤウシュベツ川に近いSt-1の方が、高濃度の傾向があった[6]

このような、地点間の水質の違いはCODも同様であり、風蓮川やヤウシュベツ川に近いSt-1の方が、St-2に比べてCODが高い傾向にある[6]。風蓮湖のCODの水質環境基準は、海域A類型であるが、湿原などからの腐植物質による自然負荷も考慮されて、5 mg/L以下と設定されている。しかしながら、St-1では達成できていない現状にある。

当所(旧北海道環境科学研究センター)が1998~1999年度に行った風蓮湖の流域対策調査により、各流入河川の硝酸態窒素濃度は、集水域の乳牛密度に比例して高くなることがわかった [7]。一方、リンに関しては、風蓮湖の集水域では、飼育牛の密度とあまり関係なかった。リンは土壌に吸着されやすいため、降雨による懸濁物質の流出があったときに、顕著にリン濃度が上昇する傾向が見られていた。その後、2004年に「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」が施行され、以前より、降雨時において、家畜排せつ物に由来する成分が河川へ流出しにくい環境になってきていると思われる[3]。風蓮川下流における水質モニタリングデータから、CODやTP濃度で改善傾向が示唆されている[3]

この地域は、野付風蓮道立自然公園内にあり、また、湖面と春国岱はラムサール条約指定区域となっている。シギ・チドリ類やオオハクチョウなど多くの渡り鳥の飛来地、中継地として利用され、280種あまりの鳥類が確認されている [8]。春国岱の入り口にはネイチャーセンターがあり、観察路や展望塔などが整備されている。冬には、結氷した湖面にオオワシやオジロワシが多数飛来し、ワカサギ釣りの人々でにぎわう [9]

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1979-10-02 St-2 1.5 8.0 7.8 0.89
1985-10-01 St-2 3.7 8.4 15000 9.7 4.0 0.94 0.690
1991-08-21 St-2 4.0 >4.0 8.3 1.79 5.3 4.0 2.1 0.55 0.054 2.9
2013-06-12 [6] St-2 3.6 1.5 8.6 9.2 3.1 0.28 0.040 2.7
2013-08-21 [6] St-2 3.5 2.9 7.9 7.8 3.6 0.19 0.053 4.6
2013-10-23 [6] St-2 3.0 2.1 8.1 9.6 4.2 0.44 0.037 2.4
2014-06-10 [6] St-2 4.8 >4.8 8.2 10.2 2.2 0.16 0.024 2.2
2014-08-19 [6] St-2 3.6 >3.6 8.3 9.9 5.1 0.27 0.048 4.2
2014-10-30 [6] St-2 5.2 2.7 8.1 9.5 3.2 0.18 0.035 2.8
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質の経年変化

[1] 北海道環境生活部アイヌ政策推進局アイヌ政策課,2021.アイヌ語地名リスト.URL: https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/ass/new_timeilist.html(2024年11月29日時点)

[2] 国土地理院,2019.湖沼データ(風蓮湖).URL: https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/koshouchousa-list.html(2024年10月16日時点)

[3] 三上英敏・五十嵐聖貴,2014.家畜排せつ物法施行後における風蓮湖流域河川の水質環境変化について.環境科学研究センター所報,4:37-43.

[4] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)

[5] 別海町.別海町歴史文化遺産 風蓮湖の氷下待ち網漁.URL:https://betsukai.jp/kyoiku/culture/bunkazai/rekishi_isan/kourishita/(2025年5月12日時点)

[6] 北海道立総合研究機構 環境科学研究センター,2015.平成26年度風蓮湖環境基準未達成原因究明調査報告書.地方独立行政法人北海道立総合研究機構 環境・地質研究本部 環境科学研究センター,札幌,38p.

[7] 北海道,1999.平成11年度環境庁委託業務結果報告書,風蓮湖及びその周辺地域における特定流域水環境保全対策調査

[8] 環境省,2022.日本のラムサール条約湿地―豊かな自然・多様な湿地の保全と賢明な利用―.URL: https://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/pamph02/index.html(2024年11月29日時点)

[9] 北海道環境生活部自然環境局自然環境課公園保全係.野付風蓮道立自然公園.URL: https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/environ/parks/notsuke-prefecturali-nationalpark.html(2024年11月29日時点)