茨散沼

Lake Barasanto

所在地 (Location) 別海町 (Betsukai Town)
成因 (Origin) その他 (others)
湖面標高 (Elevation) 6 m
湖面積 (Surface area) 0.30 km2
最大水深 (Max. depth) 10.0 m
容積 (Volume) 1500 ×103 m3
集水域面積 (Watershed area) 11.97 km2

湖南部から北西方向を撮影。沼の周囲には湿原が広がっている。写真右側の河川が流出河川の西丸別川で、蛇行しながら根室湾に伸びている。写真左手には樹林の間に牧草地が広がっている(2022年10月20日撮影)

茨散沼(バラサントウ)は、別海町市街地から東に約10 kmで、根室湾沿岸の別海町床丹付近のバラサン岬から林道を西に入ったところに位置する。

「茨散」の地名は、アイヌ語の「パラサン(平棚の意)」に由来し、当地の納屋に函館より取り寄せた米・酒・味噌などを保管したことによる(北海道蝦夷語地名解)[1]

茨散沼は湖面標高6 m、湖面積0.30 km2、最大水深10.0 mの小さな淡水湖である。沼中央よりやや南東側に最深部がある。

この沼は西別原野にあり、沼の南側を除き、標高10 m程度の別海台地と呼ばれるローム台地に囲まれている [2]。主な流入河川は北東の西丸別(ニシマルベツ)川で、流出水は南東の同じく西丸別川を経て、根室湾に注ぐ。

集水域の土地利用は、森林が全体の約5割を占め、主にシラカンバ-ミズナラ群落の落葉広葉樹二次林で、一部に、アカエゾマツやカラマツの植林地が見られる [3]。森林の次に、農地が約33%と比較的多く、集水域の西側を中心に牧草地が広がっている [3]。また、荒地が約15%と比較的多いのが特徴的で、沼の周囲や流入河川沿いにヨシクラスの湿原とハンノキ群落の沼沢林、一部に、ツルコケモモ-ミズゴケクラスの湿原植生が分布する [3]

過去に実施された水質調査のうちSt-1の結果と、2022年10月に実施した最深部の調査結果を表に示す。透明度は、1980年代に1.5 m超(全透)の記録があるが、2022年の調査では0.8 mであった。CODは10 mg/L前後と比較的高く、また、湖水は淡褐色を呈することから、腐植物質の影響を受けていると思われる。

2022年のTNとTP濃度はそれぞれ0.54 mg/Lと0.054 mg/Lであり、富栄養レベルにあった。調査回数が少ないため経年変化は明確ではないが、1980年代に比べて、とくにTP濃度の上昇が見られる。2022年のChl-a濃度は33 μg/Lと、これまでで最も高い値であった。今後、富栄養化が進まないか、注意深く見ていく必要がある。

茨散沼にはジュンサイやネムロコウホネが多く、夏にはジュンサイとりが行われている [4]。また、タンチョウや水鳥の生息地で、国設鳥獣保護区になっている。

水質データ(表層)
調査日 地点 全水深
[m]
透明度
[m]
pH Cl-
[mg/L]
アルカリ度
[meq/L]
DO
[mg/L]
COD
[mg/L]
TOC
[mg/L]
TN
[mg/L]
TP
[mg/L]
Chl-a
[μg/L]
1979-07-04 St-1 1.3 6.9 9.0 0.90 0.69
1984-05-29 St-1 1.5 >1.5 6.9 10.9 9.1 9.1 0.41 0.006 3.2
1985-10-01 St-1 1.3 6.9 21.6 8.2 19
1991-08-27 St-1 1.0 >1.0 7.0 7.8 0.384 6.2 15.7 7.9 0.69 0.047 10
2022-10-20 最深部 1.0 0.8 7.4 10.9 0.608 10.0 11.5 0.54 0.054 33
調査地点図
集水域の土地利用
栄養度の推移(表層)
水質鉛直プロファイル

[1] 「角川日本地名大辞典」編纂委員会(編),1987.角川日本地名大辞典 1 北海道 上巻.角川書店,東京.

[2] 国土交通省.国土数値情報(20万分の1土地分類基本調査「地形分類図」).URL: https://nlftp.mlit.go.jp/kokjo/inspect/landclassification/land/l_national_map_20-1.html(2024年10月8日取得)

[3] 環境省生物多様性センター.自然環境調査Web-GIS(第6-7回自然環境保全基礎調査,1/25,000植生図).URL: http://gis.biodic.go.jp/webgis/(2022年6月2日取得)

[4] 辻井達一・橘ヒサ子(編著),2003.北海道の湿原と植物.北海道大学図書刊行会,札幌.