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道南農業試験場

Q&A「土づくり」について

No 質問項目 回答要旨
1.  高品質トマトを生産している農家の方はどのような土で栽培していますか?  トマトは、葉が3枚生長する毎に花房が出来るきわめて高い生産性を有しており、また、その分、養分吸収力も旺盛です。
栄養生長を最小限に抑え果実肥大を優先させうる栽培法が高品質トマトを作るコツで、土壌管理とともに肥料管理が重要です。具体的な土壌管理法について以下に述べます。
化学性(養分)として、主に重要なのはpH、EC、有効態リン酸です。
pHは6.0~6.5が理想で、尻腐れ果を出さないコツです。ECは施肥前に高ければ、その分だけ窒素肥料成分を減らす必要があります。これを怠るとスジ腐れ果が発生します。窒素肥料を減らす量は個々のハウスによって違います。
有効態リン酸については、過去に野菜畑であったりハウス栽培で数年経ていれば、リン酸施肥量を少なくする必要があります。
また、土壌診断によって、カリ・苦土・石灰同士のバランスを良好にすることも必要です。
物理性として、排水条件や作土の硬さ・柔らかさが重要です。水田転換畑で硬盤層が残っている畑では、トマトの根が十分に伸びることが出来ません。
2.  塩類集積とはなんのことでしょうか?  全ての生物にとって塩は必要不可欠のものですが、塩を摂りすぎると害になることもまた、全ての生物に共通しています。塩類の集積した土壌では、植物は健全に生育出来ません。これが塩類集積です。
日本では主にビニ-ルハウスで起こる現象です。化学肥料は全て「塩」であり、土に施されると土壌中の水(土壌溶液)に溶けて、作物に吸収されたり、土壌に吸着されたりしますが、かなりの部分が溶けたままでいます。また、土壌から溶出するものもあります。
ビニ-ルハウスでは余分な肥料が雨で流れないため、肥料をやりすぎると、作物が吸収し残した肥料分が残存します。
また、ハウスでの水の移動は、かん水量よりも蒸発散量のほうが多いため、水は下から上に向かって上昇します。このとき水に溶けやすい塩類も一緒に上昇し、作土層に塩類が集積するのです。
かつては、ハウスに塩類が集積するとビニ-ルを剥がして除塩したものでした。しかし、現在、世界中の多くの分野の産業が「自分たちの技術が、いかに地球に優しいか」をアピ-ルしています。農業も産業のひとつである以上、その例外ではいられません。
除塩して流れ去った塩類は、地下水に入って飲み水を汚し、私たちの生活を脅かすことになるのです。副成分の少ない肥料を、作物に吸収される量だけ施用する技術開発が求められています。
3.  堆肥の効果と注意点を教えてください。  堆肥の土壌への効果は大きく3つあります。それは物理性、化学性、生物性です。
適量の有機物を施用することで土の団粒形成が促進され軟かくなって、作物の根が伸びやすくなります。これが物理性の改善です。また、堆肥には窒素、リン酸、カリなどの成分が含まれています。このうち特に窒素は作物にとって重要な養分です。
堆肥の中に含まれる窒素は、堆肥が土に施用されてから少しずつゆっくりと肥料と同じ効果を現します。しかも、冷害などで作物生育が遅いときには、堆肥中の窒素の効きも遅くなるという特徴を持っています。これが化学性の効果です。
さらに、堆肥は土中の微生物にとってのエサの役割を果たします。このため、堆肥を施用すると微生物活動が活発になることで、土壌養分の供給がスム-ズになり、土壌病害もある程度起こりづらくなります。
このように、土壌にとって堆肥(有機物)は必要不可欠な資材ではありますが、ハウスへの有機物の多投入は、「過ぎたるは及ばざるより悪い」こと、つまり土壌の塩類集積を起こします。
このため、有機物が分解する際に土壌中に放出される肥料成分(窒素、カリなど)を正確に見積もって、その分の肥料を減らす必要があります。また、未熟堆肥は作物に害作用を持つ場合もあり、大量に施用する際は、注意が必要です。
4.  ボカシ肥料の作り方と効果を教えてください。  油かす、魚かす、骨粉などの有機質肥料に、山土や粘土を混合し「発酵」させて作ります。
十分に「発酵」させると有機物がアンモニア、硝酸など、作物に吸収されやすい形態に変化して、これらが山土や粘土に吸着し保持されます。また、この発酵過程においては、多くの土壌微生物も増殖します。
このようなボカシ肥料を施用すると、それに含まれる養分を作物は直ちに吸収し利用します。
 さらに、未熟な有機物を施用した時に問題となりがちな、ガス障害やフェノ-ル類、有機酸類による根の障害、並びに病原菌による攻撃などが回避されます。
5.  肥料の功罪にはどんなものがありますか?  農業の生産技術にとって、肥料は欠かせない生産資材であり、肥料なくして地球上に60億人の人間が生きることは出来ません。
ところで、化学肥料はすべて塩類です。肥料には植物に必要な成分(窒素、リン酸、カリなど)とともに、植物があまり必要としない成分も含まれています。作物に吸収されなかった成分(塩)は、次第に土壌に集積して植物に害作用を及ぼし始めます。
肥料を施用する際には、副成分の少ない肥料を用い、余計な施用量を出来る限り減らすことが、土壌を健康に保ち、加えて作物(特に野菜)を健全に生育させるために必要です。
肥料を大量に施用すると、野菜(主に葉菜類)には硝酸という有害物質が蓄積したり日持ちが悪くなったり、また、米のタンパク含有率が増加して食味が下がるなどと、農産物の品質が低下します。また、作物の根が不健全になり土壌病害に罹りやすくなったり、特定の肥料成分が過剰蓄積して生理障害(過剰症)が起こりやすくなったりします。
6.  野菜ハウスの土づくりのポイントはなんでしょうか?  肥料成分の量とバランスです。土壌診断によって、土の中の肥料成分を、少なすぎず多すぎない適正な範囲にすることです。
その際、各肥料成分同士のバランスが重要になります。例えば、石灰は十分に土の中にあっても、カリやリン酸が過剰にあってバランスを崩すと、作物は石灰を吸収できなくなります。
また、畑の排水性も重要です。「地力」は、化学性(土壌診断値)と物理性(排水性)の両方が改善されて、初めて発揮されるものです。転換畑などで、排水の悪い畑では、高畝にするなどの工夫が必要です。
7.  土壌分析をするとどんな利益がありますか?  肥料代金の節減と、作物の健全化による生理障害・病害の未然防止、品質の向上です。さらに、施肥量を減らして私たちが暮らす地域の環境への負荷を減らす効果も見逃せません。
診断によって肥料成分の過不足を知ることで、必要な肥料を必要なだけ施用することが可能になります。また、診断値を適正に保つことで、作物を健全に生育させ、各種生理障害を未然に防止することが可能です。
トマトの尻腐れ果やハクサイのアンコ症など、土壌診断値を適正範囲に保つことで予防できる障害は多くあります。
また、米の食味など、産地全体の土壌診断への取り組みで「売れる商品づくり」を目指している例もあります。
土壌病害は養分のバランスを崩した土壌で発生しやすいものです。これらの障害・病害は、一度発生すると経済的な損失が大きいものですが、土壌診断は、これらを未然に防止するものです。
8.  軟白ねぎの品質はなにで決まりますか?  現在の日本の流通形態・消費者の要望では、まず外観品質が重要視されています。主に軟白部分の長さ・太さ・真っ直ぐ具合などです。
外観品質を良くするためには、肥培管理技術が重要ですが、特に作型に合わせた品種の選定や、軟白部分を作るための土寄せまたはフィルム張りのタイミングと丁寧さが重要です。
なお、肥料の与えすぎは、ねぎの根が弱まって軟白部分を太くすることが難しくなります。
9.  アスパラガス栽培(露地グリーン)のポイントを教えてください。  アスパラは一度植えると10年以上収穫できる永年作物で、根に貯蔵された養分により春の若芽を生産します。したがって、根の発育を促進させることが重要なポイントです。

1.深くまで根が伸長できる有効土層が厚い土地。
2.肥沃な土壌:
  普通畑は深さ40cm~50cmまでの土壌改良が必要。
3.紙筒(直径3cm高さ10cm)を用い45日程度の育苗が無難。
4.本圃の施肥量は、1年目10a当たり窒素10kg、リン酸20kg、カリ10kgが標準。
5,斑点病と茎枯れ病が主な病気です。9月いっぱい防除が必要。

1.アスパラの栽培圃場は、深くまで根が伸長できる有効土層が厚い土地が良く,重粘質や地下水位が高い土地、水はけが悪い土地は適しません。なお、開墾後の年数が浅い圃場は紫紋羽病が発生する恐れがあるので避けたほうが無難です。

2.アスパラの根は50cm以上伸長し、長年にわたり多量の養分を吸収するため、極めて肥沃な土壌を必要とします。普通に作物を栽培している畑土壌では、作土層は肥沃ですが、その下層の養分量は少ないのでアスパラを栽培するときは、40cm~50cmまでの土壌改良が必要です。
具体的な改良目標は、深さ50cmの土壌にたいしてpH6.5、有効態りん酸40mg/100gです。これに対応する量の石灰資材とリン酸資材を施用しロータリを一度かけてから、さらに堆肥を10a当たり10t散布し、深耕ロ-タリで50cmまで深耕します。

3.育苗は最近セル成形ポットを使う人がいますが、紙筒(直径3cm高さ10cm)を用い45日程度育苗するのが無難です。苗数は(栽植密度150cm×30cm)、10a当たり2,222本必要です。

4.本圃の施肥量は、1年目10a当たり窒素10kg、リン酸20kg、カリ10kgが標準です。1mの幅に散布しロ-タリをかけて、135cmの黒かグリーンのマルチをかけて苗の紙筒を取り茎を2cm程度埋めるように定植します。
2年目以降は、融雪直後窒素5、リン酸15kg/10a、 収穫後窒素15、カリ15kg/10aを畝間に散布して浅くロ-タリをかけます。
収穫期間は60日をめどとしますが、細い物が多くなってきたら収穫を中止して来年にむけて株の養成につとめます。

5.斑点病と茎枯れ病が主な病気です、草丈が150cm位になった時に1回目の防除を行います。以降2週間程度に1回の間隔で9月いっぱいまで防除が必要です。
現在、カリフオルア500W、ウエルカム、バイトル、ガインリム(HLA7)等有望な品種が出回っています。普及センターに行って相談されるとよいでしょう。
10.  品質の良いホウレンソウ栽培のポイントはなんですか?  夏まき雨よけハウス・ホウレンソウ栽培のポイント。

1.連作をさける。
2.水はけ・水持ちが良くて、肥沃な土作り。
3.窒素施肥量は極力少なく。
4.ハウス内温度の上昇を防ぐ。
5.播種量は多めに間引きする。

春まきや秋まきのホウレンソウは良く出来ますが、夏まきホウレンソウはなかなかうまくは作れません。理由は2つあります。
1つは、ホウレンソウは生育適温が10℃~20℃で冷涼な気候を好み気温が25℃をこえると発芽や根の発育が阻害されます。
2つ目は、ピシウム菌(立枯病)、フザリウム菌(萎凋病)、アファノミセス菌(根腐病)等の土壌病菌の活性が高温で高まります。このうちフザリウム菌とアファノミセス菌は連作によって発病しますが、ピシウム菌は寄生範囲が広くどこにでも居ます。
根の活性が弱い状態で土壌病菌の活性が高いため、発病株率が高まることがうまく作れない最大の原因です。従って、暑さの克服と土壌病害の回避がポイントです。

1.連作をさける。同じハウスに5作~6作連続して栽培するのが一般的ですが、夏まきだけは異なる圃場、例えば促成トマトの跡などを利用します。

2.水はけが良くて、さらに水持ちも良く、加えてホウレンソウの栽培に適した肥沃な土作りが必要です。

土壌水分の蒸散によって地温の上昇を防ぎ初期生育を促進させる事によって正常な生育をさせます。方法は耕起前に下層まで十分滲みわたる量のかん水(40mm程度)をします。2~3日後の耕起に適した水分条件で施肥、耕起して播種します。播種後は鎮圧し10~20mm表面に滞水しないように細い噴水で時間をかけてかん水します。なお、栽培期間中のかん水は極力少なくします。かん水はビタミンCを減少させます。水持ちが良い圃場ではいりません。乾燥し易い圃場では播種後15日目以降収穫5日前まで2回ほど5~10mm天気がよい日の夕方にかん水します。

3.下層の窒素が蒸散によって作土層に上がって来ます。さらに温度が高まると有機物からのNの放出もあるのでので窒素施肥量は極力少なく(0~5kg/10a程度)します。窒素が多いと体内の硝酸態窒素が増加し、EC値が高くなると萎凋病の発生率が高まります。EC値は0.6以下が理想です。

4.ハウスは肩より10cm位下は解放にします。ハウスビニ-ルの上に寒冷沙をかけて温度の上昇を防ぎますが、完全に遮光するとビタミンCや糖分が少なくなるので朝日が入るように東側を70パーセント程度空けて寒冷紗を張ります。

5.播種量は多めにし、間引きは本葉4葉頃に荒目(80株/m2)します。長さ22~25cm、重さ20gが目標です。なお品種は、7月蒔きは晩抽性~やや晩抽性、8月蒔きはやや早抽性(8月20日以降は早抽性可)の品種を選定します。

11. ニラ栽培のポイントを教えてください。  ニラ栽培(露地、トンネル)のポイント。
ニラの栽培は通常、1年目は育苗と本圃での株養成を行い、2年目と3年目は年に2~3回、春から夏に収穫してその後、株養成を行います。4年目は秋収穫を主に、年に3~4回収穫して株を更新します。
生理生態は、(1)春、気温の上昇とともに主に根に蓄えた養分によって茎葉が伸長します。これを25cm~30cmに刈り取り収穫します。(2)7月下旬~8月上旬抽苔開花し、(3)9月に入ると養分蓄積期に入り、(4)11月上旬から休眠にはいります。このような生理生態から、
(1) 肥沃で根が十分に張る事ができる土作り。
(2) 根張りの良い苗作り。
(3) 養分を十分蓄積させる栽培管理(株養成)。
がポイントです。

1.土作り
ニラは比較的浅根性で土壌の適応性も広く水田転換畑でも栽培出来ますが、作土層の過湿には弱いので排水が良い土地をえらびます。
土壌の改良深は20cmでpH6.5、 有効リン酸40mg/100gを目標に土壌改良資材を施用して、一度ロータリをかけてから堆肥を6~8t/10a散布して良く混合します。施用時期は、苗床が前年秋、本圃は融雪直後土が乾いてから行います。

2.育苗
9月からの養分蓄積が十分行える生育量を確保するためには、大苗を7月上旬~中旬に定植する必要があります。このため、播種期は3月中~下旬にハウスで行います。発芽温度は最適温度は20℃、最低温度は10℃、最高温度は25℃と適正範囲が狭いので注意が必要です。
施肥量は10ア-ル当たり窒素10kg、リン酸20kg、カリ10kg、土壌中の残存窒素量によって窒素肥料を減肥します。なお、EC値は0.6以下が目安で、播種10日くらい前に適水分の時に行い、全面マルチして地温の上昇をはかります。
播種方法は、1cm程度覆土が出来る植え溝を10cm間隔に引き条播します。発芽後1cm間隔に間引きますので、薄播きにします。
播種後は覆土して軽く鎮圧し、10~20mmを弱い噴霧状で表面に滞水しないよう時間をかけてかん水します。その後、発芽するまで保温と地表面の乾燥を防ぐため不織布をかけます。
2本程度分けつしている苗が目標です。育苗期間は100日~110日が必要です。

3.栽培管理
1)1年目
定植10日ほど前に基肥を10a当たり窒素10kg、リン酸20kg、カリ10kg、全面全層施用します。定植時に再びロータリをかけて、深さ12cmの畝を35cm間隔で4本引き60cmの通路をあけます。深さ6cm、株間20cm、一株6本寄せ植え(10,000株/10a)します。9月上旬に窒素、カリを各10a当たり5kgを畝間に追肥して土寄せをします。11月中旬以降、倒伏した茎葉を刈り取り搬出します。
2)2、3年目
融雪直後、基肥を10a当たり窒素5kg、リン酸10kg、カリ5kg、追肥は1回目収穫後と2回目収穫後の2回と、8月上旬の抽苔茎の捨て刈り後の計3回、窒素とカリを10a当たり各5kgを表面に散布します。(7月中旬より抽苔開花するので放置すると株養成に悪影響を及ぼすため、抽苔茎がそろった時点で捨て刈りをおこなう。)
3)4年目
4年目は2、3年目に準じて栽培管理を行いますが、株養成の必要が無いので、8月上旬に抽苔茎を捨て刈りした後、窒素とカリを各5kg追肥して9月中旬に秋収穫をします。

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