水産研究本部

試験研究は今 No.568「萱場研究員、日本水産学会の水産学奨励賞を受賞する。」(2006年5月10日)

萱場研究員、日本水産学会の水産学奨励賞を受賞する。

  今年3月29日から5日間に亘り高知大学で開催された平成18年度日本水産学会大会において、栽培漁業総合センター(現:栽培水産試験場)の萱場研究職員が、日本水産学会の若手研究者に贈られる「水産学奨励賞」を受賞しました。受賞業績の題目は、「マツカワの種苗生産技術に関する研究」です。

  北水試の職員が水産学会で賞を受賞したことは、これまでにありませんでした。皆様ご承知のとおり、日本水産学会は、水産関係では最も大きな規模の、大変権威のある学会です。これまでですと、大学の先生が受賞することが多かったのですが、このたびの萱場研究員の受賞は、現場の技術に直結した試験研究を業務としている水試の職員であったことにも、大きな意義があると思います。

  マツカワの人工種苗生産技術開発は、栽培漁業総合センターで平成2年度から始まりましたが、幻の魚と言われるくらいにマツカワの資源は減少しておりましたので、天然親魚を収集するのが困難な状況でした。親魚収集が難しかったため、なかなか思うように種苗生産の技術開発は進みませんでしたが、平成5年度には、人工受精により採卵し、万単位の生産に成功しました。しかし、種苗の質に関しては、形態異常や性比の偏りの問題があり、また当時はウイルス病の発生もあったため、「マツカワ」の技術開発は停滞しており、技術的にまだまだ未熟な段階でした。
    • 写真1
       (写真1)受賞記念の盾を手にする萱場研究員
  同研究員は、平成8年北海道立栽培漁業総合センター魚類部に配属され、当初マコガレイ、マダラ等の魚種の人工種苗生産技術開発を担当しました。平成9年度からマツカワの担当となり、それ以降持ち前の鋭い観察力と洞察力を発揮しながら、マツカワ親魚の性成熟と採卵技術の確立、仔稚魚の生残率のアップと人工種苗における形態異常(白化、両面有色等)及び性比の偏りの発生原因の解明等に粘り強く取り組みました。

  今年度からは、マツカワ拠点センターにおいて100万尾放流のための大量種苗生産事業が開始されました。栽培漁業総合センターにおいて3センチメートル種苗10万尾を安定して生産する技術を確立したことが、「マツカワの事業化」に大きく貢献しました。平成17年度に実施した栽培公社への「マツカワの技術移転」の際には、同氏の研究成果が大変役に立ちました。

  同氏の研究は、現場の技術的要請と深く結びついたものでありながら、しかも関係分野の基礎的な課題をも提起した研究成果として、北水試内でも高く評価されておりました。このたび水産学会においてもその真価が評価されたことで、北水試の研究員を大いに勇気づけるものになったかと思います。

  萱場研究員の研究成果が、こうして学会賞と云う形で現実のものになってみますと、あらためてこの研究を評価された水産学会および関係者の方々に敬意を表しますと共に、心から感謝したいと思います。北水試にとっても誠に名誉な事でありますし、同氏におかれましては本道水産業の発展のために益々ご活躍されることを期待します。今後同氏に続く北水試研究職員が次々と現れることを祈念してやみません。
(栽培水産試験場生産技術部 齊藤節雄)

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