水産研究本部

試験研究は今 No.573「「平成18年豪雪」と余市町の積雪」(2006年8月21日)

「平成18年豪雪」と余市町の積雪

  平成17年(2005年)12月から平成18年(2006年)2月にかけて、日本各地で記録的な大雪に見舞われました。気象庁ではこの大雪について「平成18年豪雪」と命名、気象庁による豪雪の命名は、「昭和38年1月豪雪」以来2度目となります。北海道立中央水産試験場では、前身となる高島水産試験所時代以来(明治30年/1897年)、水温観測と同時に気象観測も行っています。 古いデータは未整理のものも多く、また観測時間帯が異なるものもあり、共通のデータベースとして現在まで利用できるのは、昭和17年(1942年)以降からになります。積雪に関しては、雪尺による積雪の深さの旬毎の最大値を記録したデータが昭和11年(1936年)から69年間分あります。この長期にわたって観測されたデータから「平成18年豪雪」の状況は、余市では過去と比べてどのようなものだったのか調べました。

  図と表をご覧下さい。平成17年(2005年)12月上旬まではあまり雪も降らず、気象庁の当初の発表通り暖冬かと思われました。しかし12月11日から12日にかけて、1日で78センチメートルもの積雪があり、12月中旬において112センチメートルと、これまでの積雪の最大値85センチメートル(昭和17年/1942年)を27センチメートルも超え63年ぶりに記録更新しました。なお、平年値(1971-2000年の30年間の平均値)からは75センチメートルも上回り、これは平年値の3.0倍もの積雪になります。 この12月中旬の積雪の影響によって、その後も表のように平年値の2~3倍の積雪となり、12月上旬から1月中旬、2月上旬と次々に積雪の最大記録を更新しました。
    • 図
      図:余市における積雪の変化(2005-2006年)

表:余市における積雪の状況(2005-2006年)
積雪(cm) 平年値(cm) 平年差(cm) 平年値からの比率 1936-2004年の最大積雪(cm) 最大値
更新
2005年 12月 上旬 13 24 -11 0.5 82  
中旬 112 37 75 3.0 85 更新
下旬 116 44 72 2.6 114 更新
2006年 1月 上旬 146 61 85 2.4 128 更新
中旬 148 72 76 2.0 140 更新
下旬 148 87 61 1.7 172  
2月 上旬 185 99 86 1.9 180 更新
中旬 167 103 64 1.6 180  
下旬 128 105 23 1.2 180  
3月 上旬 127 101 26 1.3 178  
中旬 98 91 7 1.1 187  
下旬 78 69 9 1.1 150  

  気象庁による全国のデータでは、積雪を観測している339地点のうち23地点で最大記録を更新し、また12月としての最大記録を106地点で、1月としての最大記録を54地点で、2月としての最大記録を18地点で更新しました(気象庁報道発表資料)。この最大記録を更新した中には余市町内に1981年より設置されているアメダスデータも含まれています。

  このような大雪になったのは、12月から1月上旬にかけて非常に強い寒気が日本付近に南下し強い冬型の気圧配置が断続的に現れたのが原因と考えられています。また1月中旬以降は気温の変動が大きくなり、一時的な大雪と雪崩・融雪が繰り返される状況が続きました(気象庁報道発表資料)。この「平成18年豪雪」では、余市町のみならず、名古屋や鹿児島、八丈島でも積雪の記録を更新するなど、全国的規模の大雪となりました。特に新潟県、長野県では災害救助法が適用される地域もあり、大雪による交通事故、落雪事故、雪下ろし中の事故など全国で合計149人の死者が出るなど人的被害も甚大となり(消防庁資料)、今冬は非常に厳しい冬であったと言えます。

参考
気象庁報道発表資料: 平成18年3月1日 冬(12~2月)の天候
消防庁資料: 今冬(平成17年12月以降)の雪による被害状況等(第61報)

(中央水産試験場海洋環境部 澤田真由美 中多章文)



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