水産研究本部

試験研究は今 No.579「 利尻島エゾバフンウニの成熟状況調査について」(2006年11月1日)

はじめに

  利尻町では、2004年6月のウニ漁解禁直後、漁獲したエゾバフンウニの身(生殖巣)が十分に成熟していて、身が流れ出る現象が見られました(写真1)。さらに2005年6月には、利尻島や礼文島の広い範囲で、同様の現象が見られました。これまで、利尻島、礼文島のエゾバフンウニの生殖巣は秋に成熟するのが一般的でした。十分に成熟した生殖巣は、海水で洗うと小さくなり、商品価値が低下してしまいます。稚内水産試験場では、早く成熟するウニがどんなウニなのか、どうして早く成熟するのかを明らかにするため、調査を実施しています。
    • 写真1

調査方法

  2005年9月~2006年7月にかけて、利尻町、利尻地区水産技術普及指導所とともに、利尻町栄浜地先と泉町地先(図1)で調査を行いました。両調査地点からエゾバフンウニを各20個体ずつ採集して、殻径、体重、生殖巣重量を測定し、生殖巣の外観を観察しました。さらに生殖巣の成熟状況を詳しく調べるため、生殖巣をブアン氏液で固定し、パラフィン法で組織切片を作りました。組織切片は、ヘマトキシリン・エオシン2重染色法で染色した後、顕微鏡で観察し、Fuji(1960)に従い「回復期」、「成長期」、「成熟前期」、「成熟後期」、「放出期」の5つの成熟段階に分けました。
    • 図1

結果

  生殖巣組織の観察結果を、図2に示しました。栄浜、泉町とも、雌は4月~7月に成熟後期~放出期の個体が見られました。雄は3月~7月に成熟前期~成熟後期の個体が多数見られ、7月には放出期の個体も見られました。外観で生殖巣が十分成熟していたウニは、9月~12月と5月~7月に多数見られました。5月~7月に成熟したウニが、近年見られた早期成熟のウニとみられ、それらの成熟段階は、雌が成熟後期~放出期、雄が成熟前期~放出期の個体であると考えられました。
    • 図2
  早期に成熟したウニの特徴を知るために、5月~7月に採集したウニについて殻径、体重と生殖巣の状態(外観から生殖巣が十分成熟している個体と成熟が進行中の個体に分けた)を比較すると、殻径と体重が大きいウニほど十分に成熟しているウニが多く、小さいほど少ないことが分かりました(図3)。また、高齢なウニほど十分に成熟しているウニの出現頻度が高いことが分かりました(図4)。

おわりに

この調査によって、早期に成熟したウニがどんなウニなのかが少しずつ分かってきましたが、どうして近年になってこのような現象が見られるようになったのかは未だ明らかではありません。今後は、春~夏の成熟状況の調査や、飼育実験などにより、利尻島のエゾバフンウニが早期に成熟する要因をつきとめていく必要があると考えています。
(稚内水産試験場 合田 浩朗)
    • 図3、4

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