水産研究本部

試験研究は今 No.583「釧路西部海域のけがに資源に明るい兆し!~」(2006年12月22日)

試験研究は今 No.583「釧路西部海域のけがに資源に明るい兆し!?」(2006年12月22日)

1 はじめに

  ケガニは北海道の贈答品や観光の目玉としての人気が非常に高いことは,言うまでもありません。しかしながら,北海道のケガニの漁獲量は,1950年代に乱獲によって急激に減少し,北海道では,資源を回復させるために,ケガニの漁獲量を制限する許容漁獲量制度や,雌ならびに甲長(甲らの長さ)が8センチメートル未満の雄の採捕を禁止するなど,様々な対策が講じられてきました。

  なかでも,釧路西部海域(釧路市から白糠町の沖合で行われているけがにかご漁業の操業海域)では,その一環として,1968年より,許容漁獲量制度が導入され,資源の維持増大を図ってきました。しかし,1990年に入り,急激に資源が減少したことから,自主休漁となり,その後,試験操業が継続されてきましたが,2004年には,更なる資源状態の悪化が見込まれたことから,試験操業も中止となり,当海域は2004~5年まで全面休漁となっていました。その後,2005年の資源調査により,資源増加の兆しがみられ,2006年は試験操業のみ再開されることとなりました。

  このように,釧路水産試験場では,長期にわたる資源のモニタリングにより,資源評価を行い,その結果に基づいて,けがにかご漁業者および行政とともに,資源に対する許容漁獲量の設定に携わってきました。

  今回の報告では,2006年9~10月に釧路西部海域において行った資源調査の概要ならびに結果について紹介します。

2 資源調査の概要

  現在,この海域では,ケガニは,主に,けがにかご漁業で漁獲されています。調査についても,けがにかご当業船の協力を得て実施しています。調査は,当海域のケガニの分布および資源状態を把握することを目的に,9月と10月に,釧路市周辺の水深20~120メートルの範囲内に定点を設け,実施しています(図1)。ケガニの採集には,けがにかごを使用し,各調査点につき100かごを,等深線に沿うように敷設し,約24時間後にかごを上げ,ケガニを採集します。採集されたケガニは,調査点ごとに,全個体について,性別,甲長,甲殻硬度(甲らのかたさ)など(雌の場合は,さらに交尾栓,卵の有無および色)について調べています。
    • 図1

3 2006年資源調査の結果

  2006年度,秋季の当海域における雌雄それぞれの分布状況をCPUE(けがにかご1かご当りの漁獲尾数)にて図示しました(図2,3)。40メートル以浅では,雌雄ともにCPUEは低く,ほとんど分布が見られませんでした。一方,40メートルより水深が深くなるにつれ,雄のCPUEは徐々に高くなり,その傾向は60メートルを過ぎると顕著となり,80~90メートル付近に分布の中心が見られます。さらに,釧路の前浜沖のCPUEが最も高く,白糠から音別方面に向かって低くなっていることがわかります。雌についても,40メートルを過ぎたあたりから,100メートル付近にかけて分布していますが,雄の場合と比較して,その分布域は狭く,限定されていることがわかります。このように,秋季には比較的沖合に分布する傾向が見られましたが,一般に北海道周辺のケガニは,春季から夏季,秋季にかけては沖合へ,冬季には沿岸の浅海へと深浅移動することが知られています。

  雄のケガニの甲長別CPUE(各調査点の平均)を図示してみると(図4),2004年に65-80ミリメートル未満に組成の中心がみられたものが,2005年には80-85ミリメートル付近へ,2006年には90-95ミリメートル付近へと変化しており,全面休漁となった2004年から2006年にかけて,この海域に分布するケガニのサイズが大型化していることがわかります。さらに2005年から2006年にかけては,CPUEの数値も2倍以上に高まっています。このような結果をもたらした資源はどこからやってきたのでしょうか。

  過去に釧路・十勝海域において実施された標識放流試験からは,十勝海域から釧路西部海域へ多くの個体が移動していることが明らかにされており,当海域の資源は隣接する十勝海域と同一資源ということで,これまで資源管理が行われております。今回,当海域で増加した資源の一部は,2005年の十勝海域の調査結果との比較からも,十勝海域の資源が,脱皮成長しながら移動してきたのではないかということが,推測されます(図5)。

  このように,釧路西部海域の資源は,昨年と比較して,増加傾向にあり,ケガニのサイズが大型化していることがわかりました。今後行われる十勝海域の調査結果にも留意しながら,釧路西部・十勝海域のケガニ資源の動向に注目していきたいと思います。
(釧路水産試験場 資源管理部 安永倫明)
    • 図2
    • 図3
    • 図3、4

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