農業研究本部

酒造好適米新品種「きたしずく」の育成

尾﨑洋人,木下雅文,其田達也,田中一生,平山裕治,菅原 彰

道総研農試集報.104,1-15 (2020)

 酒造好適米新品種「きたしずく」は,2002年に北海道立道南農業試験場(現北海道立総合研究機構道南農業試験場)で交配した「雄町/ほしのゆめ//吟風」の雑種後代から育成された。2012年に品種登録(第21518号)され,「きたしずく」と命名された。2014年2月に北海道の優良品種に認定された。出穂期と成熟期は「吟風」と同じ“中生の早”に属するがやや早い。稈長は「吟風」より長く,穂長もやや長く,穂数はやや多い。草型は「吟風」の“中間型”に対し“偏穂数型”に属する。障害型耐冷性は,穂ばらみ期と開花期ともに「吟風」より強い。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pii,Pik”と推定され,葉いもち圃場抵抗性と穂いもち圃場抵抗性はともに「吟風」よりやや劣る。耐倒伏性は「吟風」よりやや弱い。玄米の千粒重は「吟風」より重く,玄米収量は多い。心白発現率は「吟風」よりわずかに高くその形状はやや大きい。玄米品質は「吟風」並で,蛋白質含有率はやや低い。酒造適性は「吟風」並で,醸造経過も概ね同程度であり良好である。「きたしずく」の製成酒は現在主要な酒造好適米品種「吟風」,「彗星」を使用した道産清酒とは酒質が異なり,官能試験では“柔らかい味わい”と評価される。以上の特性から,需要が堅調な「吟風」,「彗星」とは異なる新たな需要が見込まれ,道産清酒の消費拡大や安定生産が可能となり,道産酒造好適米の販路拡大に寄与することが期待される。


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