農業研究本部

インゲンマメ新品種「かちどき」の育成

中川浩輔,齋藤優介,奥山昌隆,江部成彦,島田尚典,佐藤 仁

道総研農試集報.104,31-41 (2020)

 インゲンマメ「かちどき」は,地方独立行政法人北海道立総合研究機構十勝農業試験場によって育成された従来の早生金時品種に比べ多収で,成熟期の分散(熟期分散)が可能な中生金時品種である。「かちどき」は,金時育成系統「十育B71号」を母,「十系B352号」を父として人工交配を行い,以降選抜・固定を重ね育成した品種である.両親はいずれも既存の早生金時品種に比べてやや晩生で,多収,大粒良質である。「かちどき」の子実重は主要栽培品種の「福勝」比111%,「大正金時」比124%と優る。

 金時類の播種時期は5月下旬から6月上旬であり,早生金時品種「大正金時」および「福勝」の成熟期は同日に播種した場合,平年で3日程度の差と近接するため,両品種とも9月上旬頃の成熟期前後の降雨で同様の被害を受けるリスクがある。一部の産地では,この降雨被害を減らすために,晩播による熟期分散が図られているが,生育期の高温による子実の小粒化や徒長による倒伏が助長されることで,減収のリスクがある。「かちどき」は,同日に播種した場合,成熟期が「福勝」に比べ3日程度,「大正金時」に比べ7日程度遅いことから,これら品種の遅まきに拠らず成熟期の分散が可能となる。また,倒伏程度,葉落ち良否は「福勝」とほぼ同等である。「福勝」と比べ,煮熟後の皮切れと煮くずれの発生が少ないため,加工適性は同等以上であり,粒形,粒大及び粒色は「福勝」と同等である。2017年に北海道の優良品種に認定され,今後「福勝」に替えて普及することで,道産金時類の良質安定生産に寄与することが期待される。


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