農業研究本部

イネ葉鞘褐変病の発生におよぼす気象要因

宮島 邦之、秋田 忠彦

北海道立農試集報.31,67-76 (1975)

 本病は、冷害年に多発生の傾向があって、イネの出穂期前後の生育時期にあたる7 月下旬から8月上旬の期間に低温多出の気象条件に遭遇したとき顕著である。  本病原細菌の生育適温は26℃~28℃であるが、14℃でも旺盛に増殖する。し、 かしイネ体内での増殖は培養基上とは極めて異なり、高温(23℃~29℃)では抑制 され、低温(11℃~17℃)では旺盛に増殖を持続する。  発病におよぼす温度の影響はイネ体内における本菌の増殖と密接な関係があって、 低温では病斑進展は助長され、同時に病原菌も増殖が盛んである。しかし、高温では 病斑および病原菌の増殖は抑制される。低温の発病におよぼす影響は、出穂前5日間 の気温と発病が高い負の相関関係にあり、また穂孕期の低温処理前接種が処理後接種 より激しく発病することから、イネの出穂が遅れ、最も罹病しやすい穂孕期間が長く なることによって、発病が助長されると考えられる。  本病多発生年の低温は、最低気温のみならず最高気温が低下している場合が多く、 人工感染では昼間の低温条件で発病が激しいこと、また最高気温と発病が負の相関関 係にあることから、最高気温の低下が発病に大きな影響をおよぼしている。湿度と発 病の関係は多湿でしかも長時間経過するほど発病が助長される。


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