農業研究本部

根釧地方の草地に対する窒素質肥料の施用法に関する研究
1.早春の牧草に対する硝酸態窒素施用についての一考察

袴田 共之、平島 利昭

北海道立農試集報.39,66-74 (1978)

 根釧地方における早春萌芽後の牧草に対する硝酸態窒素(NO3-N)の肥効を、水耕 および土耕のポット試験ならびに各種混播草地でのほ場試験により、アンモニア態窒 素(NH4-N)と比べつつ検討し、次のような結果を得た。  チモシーはNO3-N、NH4-Nともに吸収したが、3~6℃ではNH4-Nの吸収割合が多 く、11℃ではNO3-NとNH4-Nがほぱ同量ずつ吸収された。牧草が急激に伸長する5月中 旬の土壌中の無機態窒素は少なく、この時期のNO3-N配合区では窒素含有率の向上が みられた。しかし、この時期およびそれ以降のチモシーの生育には、NO3-N配合割合 による顕著なちがいはうかがえなかった。  混播牧草の収量について、NO3-NをNH4-Nと併用した場合に、より高収が得られるこ とが比較的多く、一方、NH4-NまたはNO3-Nを単用して最高収量が得られることは少な かった。NO3-Nの割合を高くして施用した場合には、多量の降雨による溶脱が推測さ れた。したがって、NO3-Nの効果は一般に期待されるほどには大きくなく、早春の施 肥窒素としてNO3-Nを重視するよりも早春の土壌中のNH4-Nの増大および硝酸化成の増進をはかることが重要であろう。


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