農業研究本部

来歴の異なる草地表層の生産力的特徴

三木 直倫、奥村 純一

北海道立農試集報.46,1-11 (1981)

 草地表層(0~3cm)のもつ生産カ的特徴を肥培・利用管理など草地の履歴の観点から,ポット試験で検討した。その結果,燐酸蓄積量の少ない表層は収量,燐酸吸収量とも劣った。しかし蓄積量が多い表層でも酸性化した場合には低収を示し,石灰施用によって収量,吸収量とも増大した。つまり草地表層の燐酸生産カの発現は前歴による蓄積量とpHの影響が大きかった。窒素生産カは酸性化した表層で低収傾向を示すものの肥培前歴の影響は小さかった。しかし利用方式では明らかに異なり,放牧地>採草地の関係を示した。放牧地の表層に集積した有機物は,採草地のそれに比較して分解率が高く,易分解性有機物が多かった。一方,表層の生産カは下層土混入率の増加に伴って減少した。以上のことから,前歴の窒素施肥で高収を示していた草地の表層がかならずしも高い生産性を示すとはかぎらず,この原因は表層の酸性化による蓄積燐酸の肥効低下が関与していると考えられた。


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