農業研究本部

下水汚泥の塩基特性と土壌中の挙動

鎌田 賢一、野村 琥

北海道立農試集報.47,39-46 (1982)

 下水汚泥の塩基組成は脱水工程で使用した凝集剤の種類によって異なり,高分子汚泥のCaO全含量が1.9%であるのに対して石灰汚泥は20.1%と極端に高い特徴を有し,他の塩基ではその含量に大差はない。置換性石灰含量も全含量と同じ傾向を示して石灰汚泥の方がはるかに高く,全含量に対する置換性比率は14%程度である。石灰汚泥の塩基バランスは著しく石灰に片寄っておっ,pHも平均9.9と高い。また,置換性塩基含量中に占める水溶性塩基の比率は両汚泥ともほぼ同じでNa2O≒K2O>MgO>CaOの順に高い。高分子汚泥施用土壌のpHはやや低下した程度であるが,石灰汚泥施用では土壌pH,CaO含量が高くなっている。汚泥施用土壌の置換性Ca溶脱量は両汚泥とも20%程度と推定された。また,石灰汚泥1t/10a(乾物)施用では作物体の塩基間の拮抗はみられないが,土壌のアルカリ化が顕在化するので当然,汚泥施用前後の土壌化学性のチェックが必要である。


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