農業研究本部

寒地水稲における移植後の気温と表層施肥効果の発現との関係

坂本 宣崇、古山 芳広、岩渕 晴郎

北海道立農試集報.53,51-60 (1985)

 寒地稲作において,基肥窒素の施与法は全層施肥と表層施肥との組合せが指導されており,耐冷安定技術として評価されているが,一部の透水性良好田で年次により表層施肥の効果に変動が見られる。この原因解明の一助として,移植後の気温と表層施肥の初期生育促進効果との関係を検討した。この結果,移植後の気温が高い場合は表層施肥により初期生育が促進され,低い場合はその効果が小さいことが判明した。この限界気温は移植後15目間の平均気温で表わすと,14℃付近であった。この原因は,表層(0~5cm深)の無機態窒素濃度,地温及び根の分布等から,水稲が表層に施用された窒素を有効に吸収しうる好適な期間は移植後15日間にほぼ限られているためであり,この期間の温度が高い場合,水稲は表層から養分を盛んに吸収し,生育が従進する。しかし,気温が低い場合,活着及び養分吸収が停滞し,この間に表層から施肥窒素が消失するために,表層施肥効果は発現しない。


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