農業研究本部

タマネギ軟腐病細菌のテンペレートファージの諸性質

田中 民夫、斎藤 泉

北海道立農試集報.70,9-16 (1996)

 罹病タマネギから分離た軟腐病細菌60菌株から一つの溶原菌E816を検出した。本細菌の溶原性は遺伝的に安定した性質であり、この溶原菌が生産したテンペレートファージは感受性菌を溶原化した。E816菌ファージの溶菌斑は15、20および25℃の各温度条件下で形成されたが、30℃では形成されなかった。また、本ファージの溶菌斑は小型てあり、その直径は上層寒天に添加する感受性菌の密度により変化した。一方、E816ファージは80℃、10分間の熱処理で不活化されたが、クロロホルム耐性であった。一段増殖実験の結果、感染菌体内におけるファージの潜伏期は110~120分、感染菌の平均ファージ放出量は16~18であった。E816菌ファージは73×77nmの多面体頭部と29×108nmの収縮性尾部をもち、尾部で感受性菌の細胞表面に吸着した。アクリジンオレンジ染色およりび後処理したE816菌ファージ核酸の紫外線照射下における蛍光色およびDNase分解性から本ファージは2本鎖DNAを含有すると考えられた。


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