農業研究本部

水稲新品種「彩」の育成について

丹野 久、國廣 泰史、江部 康成、菊地 治己、新橋 登、菅原 圭一

北海道立農試集報.72,37-53 (1997)

 「彩」は,1984年に北海道立上川農業試験場で交配した「永系84271(道北43号) × キタアケ」の雑種第一代(F1)を葯培養して育成された。1991年3月北海道の奨励品種として採用され(系統名:道北52号),同年6月農林水産省に新品種「水稲農林309号」として登録された。本品種は出穂期,成熟期とも「ユーカラ」よりわずかに早い中生の晩である。稈長は「ユーカラ」とほぼ同じで,穂長は「ユーカラ」より短い。草型は穂数型である。・先は黄白色で中程度に短芒を有する。穂孕期の障害型耐冷性は「ユーカラ」並かやや強い中~やや強で,いもち病抵抗性は「ユーカラ」とほぼ同じ弱である。耐倒伏性は中程度で「ユーカラ」に劣る。収量性も「ユーカラ」に比べやや低い。玄米品質は「ユーカラ」にやや劣る。低アミロース遺伝子を有する日本で最初の実用品種であり,アミロース含有率は「ゆきひかり」の50~80%で,それは高温登熟条件下で低下の程度が大きく,ほぼ13%以下になると玄米は白濁する。食味は粘りが極めて強く,柔らかさに優れ,総合評価では新潟県産「コシヒカリ」に近い。いもち病に弱く,耐冷性が不十分なため北海道空知北部の気象条件の良好な地帯に限定して推奨できる。


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