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中央農業試験場

3)施肥法

年次春まき小麦秋まき小麦
大9 …一般に耕鋤前、よく腐熟せる厩肥又は堆肥を反當三百貫内外撒布鋤込み、播種前、過燐酸石灰反當五、六貫乃至七、八貫を施すべく、尚下肥百貫内外を之に加用するときは、更に収量の増加を期待し得べし。而して追肥として下肥を用ふる場合は、その時期遅るれば甚しく登熟を害すを以て、成可く早く行ふべし。秋蒔の場合に、速効肥料過分なるときは、年内に旺盛なる繁茂をなし、往々積雪下に於て鬱蒸腐敗するの例あれば注意すべし。(「小麥」彙報24)
昭8 …一般には耕鋤前克く腐熟せる堆肥を反當三○○貫匁乃至四○○貫匁撒布して鋤込み、播種前過燐酸石灰反當三貫匁乃至八貫匁、魚肥四、五貫匁若は大豆粕五、六貫匁を施し、尚加里を必要とする場合は、硫酸加里又は鹽化加里反當一、二貫を施すべし。尚下肥を反當一○○貫匁内外又は硫酸アンモニア二貫五○○匁内外を、春蒔の場合には基肥として、秋蒔の場合には追肥として施用するときはさらに収量の増加を期待し得べし。而して追肥は翌春、小麦の起生期に施すべく、追肥の時期遅るれば甚しく登熟を害す。又秋蒔の場合基肥として速効性肥料を過分に施用するときは、既述せるがごとく年内に旺盛なる繁茂をなし、往々積雪下に於て鬱蒸腐敗することあるを以て注意すべきなり。(「小麥」彙報55)
昭27  …燐酸の肥効最も顕著にして、窒素加里之に順次するを示し、火山性土に於ては燐酸の天然供給量、他二要素比も著るしく少なく、燐酸の充分なる施用により稚苗の発育を健全にし、耐寒性耐病性を増し、冬損を軽減するを以て小麦の収量ならびに冬損に関連して施肥上特に燐酸の施用重要なりとす。(品種「赤銹不知1号」「ドーソン1号」、女満別麦類試験地「秋播小麦対三要素試験」指導奨励上参考に資すべき事項)
 …燐酸の用量を或程度増すに伴い、収量を増し且つ冬損歩合を漸減するを示し、供試品種により燐酸用量の限度を多少異にするも増施限度は反当燐酸1.5貫を適言とするを示し、秋播小麦の収量並びに冬損軽減上適量の燐酸施用の効果あるを示せり。(品種「赤銹不知1号」「ドーソン1号」、女満別麦類試験地「秋播小麦対燐酸用量試験」指導奨励上参考に資すべき事項)
昭33  …北見支場の成績によると、冬枯防除の点並びに越冬前の分げつが有効化し、春季の分げつが無効化しやすい点からも越冬前の生育を旺盛にしておくことが必要で、これがためには窒素は反当り1.2~1.5貫、燐酸は反当り1.5~2.0貫を基肥に施用しておくことが効果的であることが認められた。…
 また(窒素)追肥の量については越冬後の作物の状態、気象状態等により、多少増減することは当然であるが少なめにすることがよく、反当0.3~0.5貫が適当でその時期は幼穂形成期以前であることが望ましい。
 燐酸については…分施の効果は全く認められない。(品種「北栄」、道立農試北見支場「秋播小麦に対する窒素、燐酸の施用について」普及奨励すべき事項)
昭39  適期の多条播で、多肥(N,P5割増)の効果は密植(4倍量)に優る。(品種主に「ホクエイ」、北農試・道立農試各場「秋播小麦の晩播対策に関する試験成績」指導奨励)
昭41  …子実収量において分施、基肥間に有意差が認められなかった。(品種「ホクエイ」、北農試「十勝北見地方における秋小麦の施肥法」普及奨励)
昭44  伸長期のN、P2O5含有率は、多条播き6-10-6と散播の10-18-10が一致した。しかし、倒伏を考慮すると、N量は北見農試で8~10kg/10aが限界となり、十勝農試ではこれより多く10~12kg/10aとなろう。P2O5およびK2Oは施肥標準よりおおくすべきだろう。(品種「ホクエイ」「ムカコムギ」、北見・十勝農試「秋播小麦の散播栽培における播種量に関する試験成績」指導参考)
昭52  …農試の基肥適量は8kg/10aで、清里では12kg/10aであった。…起生期の施用N適量は、基肥を8kg/10aとした場合、4~6kg/10aと判断された。出穂期以降のN施用は千粒重の増加となり、両試験地とも追肥効果が認められた。…出穂期の施用N適量は6kg/10aで、N質肥料としては硫安が最も良い結果を示した。…(品種「ムカコムギ」、北見農試「網走地域における秋播小麦に対する窒素施肥法改善試験」指導参考)
昭57  起生期以降のN分肥量は6kg/10aを上限とし、基肥NはN表面、作条施肥とも4~8kg/10aにする。
 やむをえず、N追肥法を採用する場合には、起生期の乾物重や土壌中の無機態N含量を調査し、慎重に実施すること。(品種「ホロシリコムギ」、北見農試「秋播小麦に対する効率的な窒素施肥法」指導参考)
 平坦な転換畑においては、雪上追肥法は起生期追肥法と同等の効果があり、農作業が競合したり、排水不良などのため起生期追肥作業の困難なところでは有効な追肥法といえる。(品種「ホロシリコムギ」、中央農試・農業改良課「転換畑における秋播小麦の雪上追肥について」指導参考)
昭58  …従来指導されている基肥60~70%の施用よりも基肥窒素の割合を少なくし、春起生期の窒素施肥に重点をおいた方が、冬損軽減、融雪後の生育回復に有利であることを認めた。…しかし過度の窒素春施肥は、倒伏を助長し、収量や品質低下に結びつく場合がみられるので、地力にあった施肥量の決定に注意しなければならない。(品種「ホロシリコムギ」、中央・上川・十勝農試「秋播小麦の冬損防止対策・小豆畑への秋播小麦間作試験」指導参考)
昭59 多収技術の要点は、病虫の適期防除と干湿害の防止を前提として、(1)短強稈で収穫指数が高く、初期生育の旺盛な品種を選択すること、(2)リン酸多施、密植および施肥播種精度の改善により初期生育を促進し、(3)その結果として基肥窒素適量を9kg/10a程度(施肥N吸収率60%以上)にまで高めることであった。
 作土の無機N含量は、幼穂形成期以降急速に減少し、出穂期頃には無窒素区並の水準にまで低下した。しかし、極多収の場合を除けば、N分施の必要性が認められなかった。…
 春まき小麦の多収に必要とする有効態リン酸の水準はトルオーグ法でP2O515mg/100g(火山性土では10mg/100g)以上であった。(北農試「春まき小麦における多収の可能性と窒素リン酸施肥」指導参考)
 
昭61  (大・小豆畑へのばらまき栽培の)施肥時期は、小麦の播種時、大豆収穫後の2時期について、また、表面施用、表層攪拌施用などについて検討したが、小麦の子実重に差が認められず、播種時の施肥が大豆の収量にも悪影響をもたらさなかった。(中央・上川農試「大・小豆畑へのばらまき栽培による秋まき小麦の導入」指導参考)
昭62 発芽期まで日数に要する積算平均気温は100±10℃であった。播種期が早いほど多収を示し、品質も向上した。窒素9kg/10a、播種量510粒/m2を組み合わせた多肥密植栽培が望ましい。(十勝農試「十勝地方における融凍促進による畑作物の早期栽培技術確立」指導参考) 越冬性を高くするため、施肥量は北海道施肥標準を守り、窒素の施用割合は基肥を少なめとし、春分施に重点をおく。(上川・中央農試「道央多雪地帯における『チホクコムギ』の安定栽培に関する試験-栽培適地の拡大-」普及奨励)
 「ハルユタカ」の目標収量は10aあたり350~450kgとし、その場合のN吸収量は10~18kg/10a程度である。したがって、施肥N量は10a当たり10kg程度が必要である。なお、N施用量はN肥沃度および気象条件によって影響を受けるので、N肥沃度と倒伏の危険性を考慮して、減肥あるいは増肥が必要である。…
 「ハルユタカ」のP2O5施用量は10a当たり15kg程度が必要である。なお、P肥沃度が低い土壌ではP2O5の増施が必要と思われる。…
 「ハルユタカ」に対するP2O5施用の効果を高めるためには、土壌の有効態リン酸(Troug-P)含量は現行基準値の高い側(20~30mg/100g)が適当と思われる。(北見農試「春まき小麦『ハルユタカ』の施肥改善試験」指導参考)
平3  後期重点窒素施肥を現行奨励品種に適用する場合は、10aあたりN施用量を基肥0~4kg、起生期4~6kg、止葉抽出期~出穂期6kg程度とする。(品種「月寒1号」「ホロシリコムギ」等、北農試「秋播小麦に対する後期重点窒素施肥の効果」指導参考)
平5 根雪前播種では播種期の施肥はほとんど効果が認められず、融雪期に十分な施肥をすることが必要であった。また、出穂期の追肥によって子実タンパクが高まる傾向が認められた。(品種「ハルユタカ」、北農試「輪換初年目畑における春まき小麦の根雪前播種とチゼル耕による多収技術」指導参考) 
平6  基肥窒素量を従来通りとした場合の起生期以降の窒素施用法は、収量性および倒伏の関係から耐倒伏性に優る「チホクコムギ」では、起生期6kg/10a施用で穂数等の生育量を確保し、止葉期~出穂期3kg/10a窒素施用で一穂粒数および千粒重を確保する窒素施用法が、一方耐倒伏性の劣る「ホロシリコムギ」では、起生期3kg/10a、止葉期~出穂期3kg/10a窒素施用が、それぞれ安定確収に結びつくものと考えられる。また、止葉期~出穂期の窒素施用は千粒重および子実重を高め、また原粒粗蛋白含量が増加してめん用の適正粗蛋白含量に近づいた。
 …(この窒素施用法は、)0.75倍播種でも効果が発揮されるものと考えられる。(中央・上川農試「道央多雪地帯における秋播小麦の高品質安定生産」指導参考)
 …播種期と起生期の窒素配分は、窒素利用効率を高める上から、起生期の窒素施肥配分割合を高めた起生期重点施肥が効率的である。…起生期までの総窒素量は、当面、現行施肥標準量程度とし、播種期施肥窒素はその3~4割で4kg/10aとする。
 …葉色診断は、出穂揃期に第2葉(止葉直下葉)の中央部を測定する。葉緑素計の測定値が38~40以下なら、…後期追肥が必要と判断できる。ただし、泥炭土のような後期窒素供給能が高い土壌は除外し、品種は「チホクコムギ」に限定する。…尿素の葉面散布の適期は乳熟期までで、その効果は出穂期追肥と同様であった。…量は、子実タンパク質含有率の上がりすぎや成熟期の遅れを考慮すると、多くても4kg/10aであり、生育が遅延している場合には2kg/10a程度とする。(十勝・北見農試「秋まき小麦の窒素施肥改善による収量向上および子実タンパク質含有率制御」指導参考)
平8 (初冬播の施肥について、)窒素:融雪後なるべく早くに春播栽培の標準量よりやや多めの9~10kg/10aを施用して生育を確保する。これだけでは子実の蛋白含有率が低くなるので、止葉期にさらにN6kg/10aを追肥することにより蛋白含有率を春播栽培並に近づける。
 リン酸およびカリ:播種時あるいは融雪後なるべく早くに春播栽培の標準量を施用する。(品種「ハルユタカ」、中央・上川農試「春播小麦の初冬播栽培-播種期、播種量と施肥法について-」指導参考)
 
平10  総窒素量は、当面現行施肥標準程度とし、「ホクシン」も「チホクコムギ」と同様に、基肥施用量は総窒素施用量の3~4割で、4kg/10a程度とする。(十勝・中央農試「道東における『ホクシン』の栽培法確立」指導参考)
平11 (雪上播種について、)窒素施肥法は倒伏の軽減を考慮すると融雪直後にN7kg/10a、出穂期にN6kg/10aが適当であった。
 春播栽培と同等の窒素施肥量では蛋白含有率が低くなりやすい初冬播栽培では、窒素の後期施肥(止葉期~出穂期)により蛋白含有率との向上とグルテンの質の強化が両立でき、春播栽培並の品質が確保できるものと推察された。ただし、過剰な施肥は倒伏を助長し、また蛋白組成のバランスを崩す可能性があることから、6kg/10aを上限とした適切な量にとどめるべきである。また、「春のあけぼの」は「ハルユタカ」に比べて窒素施肥の蛋白向上に対する効果が鈍い事例がみられた。(品種「ハルユタカ」「春のあけぼの」、中央・上川農試「春まき小麦の初冬播栽培-雪上播種、ムギキモグリバエ防除、窒素施肥と品質、品種間差-」指導参考)
 基肥の窒素施肥量を4kg/10aとした場合、起生期の窒素施肥量は6kg/10aで穂数が多く確保され多収が得られた。泥炭土では4.5kg/10aでもっとも多収となった。
 止葉期の窒素追肥(3kg/10a)によって、千粒重、一穂粒数の増加がみられ「ホクシン」の増収効果は「チホクコムギ」と同様に高かった。
 従来の「チホクコムギ」の施肥技術である6-0-3(起生期-幼形期-止葉期、以下同様)と比べて3-3-3は同様の増収効果がみられ、倒伏の発生を軽減した。
 止葉期の茎数が800~900本/m2以上では、倒伏の発生が助長されることがあるので止葉期の追肥は行なわない。
 前作が野菜の場合や、泥炭土などでは、止葉期追肥によりめんの適性粗蛋白含有率を越える試験例がみられた。(中央・上川農試「道央・道北地域における『ホクシン』の栽培法」指導参考)
 土壌診断(土壌区分)と目標収量に基づく秋播小麦の窒素施肥量を設定した(注:詳細省略)。基肥窒素量は、4kg/10aとし、土壌診断から算出された総窒素施肥量から、基肥量を差し引いた残分を起生期に施肥する。ただし、起生期の施肥量が多い場合には、幼穂形成期までの分肥が考えられるが、その場合でも起生期重点分肥とする。
 出穂揃期に止葉直下葉(第2葉)の葉色を測定することで、タンパクの測定が可能である。…(十勝・北見・中央農試「土壌診断による秋まき小麦の窒素施肥量の設定」指導参考)
平14 「春よ恋」は「ハルユタカ」に比べ少ない窒素吸収量で倒伏が発生しやすい。このため、「春よ恋」の倒伏を軽減し、なおかつ収量と品質を維持する窒素吸収量は15kgN/10a程度であった。
 「春よ恋」の窒素吸収量が15kgN/10aに達する場合の窒素施用量は、洪積土と火山性土でN9、沖積土でN6、泥炭土でN3kg/10aであった。
 「春よ恋」の倒伏を「ハルユタカ」の慣行栽培と同程度に抑えて蛋白含有率を低下させないためには、窒素施用量を25%程度減肥する必要がある。この適応は「ハルユタカ」の倒伏程度が0~1程度の圃場に限定する。(上川・北見・中央農試、ホクレン「春まき小麦『春よ恋』、『はるひので』の品種特性に応じた栽培技術」普及推進)
 (道央の「きたもえ」において)秋期の天候不良などにより越冬前茎数が900本/m2に達せず、かつ越冬が良好な場合、起生期の窒素量を3kg/10a程度まで増肥することが収量確保に有効であり、原粒タンパクの上昇幅も0.6ポイント程度に留まった。
 原粒タンパクが9.5%以下の場合は、止葉期の窒素3kg/10a追肥によってもめん用の適正タンパクの上限を超えず、粉色を悪化させることもなかった。
 「ホクシン」の倒伏軽減のために採用した窒素の分肥体系(起生期3+幼穂形成期3+止葉期3kg/10a)は、「きたもえ」では高タンパク化の危険性を回避するため適用しない。
 道東地域では、「ホクシン」で提示された土壌診断に基づく窒素施肥量を適用できる。出穂揃い期の第2葉葉色値による葉色診断の基準値は、「ホクシン」の38~40に対し、「きたもえ」では45とする。(中央・十勝農試「秋まき小麦『きたもえ』の高品質安定栽培法」普及推進)
 (道東における大豆畦間への秋まき小麦栽培法の)施肥法は標準栽培に準ずる。施肥は播種と同時に行う。播種同時の施用が大豆の生育及び茎水分の低下を遅らせることはない。(十勝・北見農試「大豆畦間への秋まき小麦栽培技術とその経営経済評価」普及推進)
平16  (道央における「キタノカオリ」の)窒素施肥法では穂数確保のため起生期~幼穂形成期に3kgN/10a程度窒素の増肥を行うことにより子実重を確保できる。さらに止葉期以降6kgN/10aの追肥を行うことにより20%程度の増収が見込まれる。追肥法としては止葉期6kgN/10a(子実タンパク上昇1.0ポイント)、もしくは止葉期3kgN/10aに加え開花期以降尿素2%溶液の葉面散布3回(同1.5ポイント)をおこなう。
 道東地域においては熱水抽出性窒素を指標として窒素施肥量を設定した。子実タンパクの基準値11.5%以上を達成するためには「ホクシン」よりおよそ5~6kg/10a増肥となる(葉面散布を含む)。基肥窒素は4kg/10a、起生期における窒素施肥量は8kg/10a程度までとし、残分を幼穂形成期以降、止葉期頃までに施肥するが、幼穂形成期の施肥で増収効果が高く(10%程度)、子実タンパクも高まる(子実タンパク上昇1.0ポイント)。高タンパク化のためには開花期以降尿素2%溶液の葉面散布3回(同0.8ポイント)をおこなう。
(中央・十勝農試、北農研「パン用秋まき小麦『キタノカオリ』の良質安定多収栽培法」普及推進)
平17 「春よ恋」の初冬まき栽培に当たっては、以下の点を遵守する。…(3)窒素施肥は、春まき栽培の標準量を融雪直後と出穂期以降に分施する体系とする。すなわち、融雪直後に春まき栽培の標準量より3kgN/10a少ない量を施肥し、開花期以降に尿素葉面散布(2%尿素100L/10aを1週間おきに3回、窒素量で3kgN/10a)、または出穂期に3kgN/10aの追肥を行う。ただし、泥炭土では分施を行わず、春まき栽培の窒素施用に準ずる量を融雪直後に施用する。
 リン酸施肥時期と生育・収量の関係および初冬まき栽培における生産物の内部品質に関して、試験の範囲内では従来の知見と異なる点はみられなかった。(中央農試、ホクレン「春まき小麦『春よ恋』の初冬まき栽培適性」指導参考)
 十勝・網走地方における小麦の根長密度や有効土層深、硝酸態窒素の利用率から判断して、硝酸態窒素評価のための土層深は概ね60cmと判断された。窒素供給量と窒素吸収量の関係において年次間差異、土壌間差異は小さく、有意な相関関係(r = 0.59**)が認められたことから、これをもとに目標タンパクを10.0%とした場合の収量水準に対応した起生期以降の窒素追肥量を設定した。計算式は以下の通りである。起生期以降の窒素追肥量[kg/10a]=(目標窒素吸収量-7.73)/0.51-(0~60cmの硝酸態窒素量)
 想定窒素吸収量と実窒素吸収量の差の程度をもとに、適合性を検証するとともに不適合要因を検討した結果、7割以上が±2kgN/10aの範囲におさまっていて、不適合地点としては多量に有機物を施用した圃場や起生期生育量の大きく劣る圃場などが認められた。(十勝・北見農試「秋まき小麦の起生期無機態窒素診断による窒素追肥量」普及推進)
 キタノカオリの子実タンパク質12%を目標とした葉色診断において、穂揃期の葉色が52以上の時はそれ以上の追肥は行わず、50~52の時は穂揃期に3 kg / 10a、50未満の時は6 kg / 10a程度の追肥を行う。。(北農研「パン用秋まき小麦『キタノカオリ』に対する葉色診断と施肥対応」普及推進)